筍が次々に生えだしている明るい竹林です。ここは、最近まで筍栽培用とされていた所との事ですので、竹のウラ(先端部分)が切り飛ばされちょります。実際には切るのではなく、ある程度大きくなった時に揺さぶり折るのですが、こうする事により、枝が少なくなった竹林には、太陽の光が多く差し込み、土中を温めてくれますし、強い風が吹いても竹の揺れが小さく、竹根を傷めないとの事なのです。筍収穫用の竹林はすぐに分かりますぞね。竹の先端がポキリと折れたような竹が並んでいます。今度竹林を見る機会があれば、是非注意深く見てもらいたいがぞね。
満足いく角竹ができる確率が半分とも話しされちょりましたが、筍に対して木枠が大きすぎると、綺麗な角竹にはなりませんし、反対に木枠が小さいと、竹中心部にへこみができたりするがです。木枠は大きすぎても、小さすぎてもダメ。ちょうど筍の成長ぶりを見越してピッタリの木枠を取り付ける、この角竹作りの大事な部分は竹林での竹と職人との対話に尽きるのです。
筍の成長は、まっこと早いがですぞね。見る見るうちに伸びるというのも大袈裟ではないほど、一日に1メートルを超えて大きくなる驚くべき成長力なのです。前にはめ込んだ木枠から頭を出して伸びている筍を見つけましたぜよ。さて、これからどうするかと言うと...。
「ヨイショ!」と声を揃えて二人がかりで木枠を下から持ち上げます。下の部分は既に木枠で四角形に固まっているので、筍の成長にあわせて木枠を上へ上へとズラしていくのです。清水銘竹店の職人さんが、人の合わせるのではなく、竹に合わせる、という自分達の仕事の事を話してくれましたが、意味が少しづつ分かってきましたぜよ。
木枠が外された竹を触ってみると見事に四角形の形になっちょります。なるほど、これが角竹になった瞬間か...。しっとりと湿気を含んだ竹皮の下に角張った形を確認して嬉しくなります。竹皮の表皮には細かな毛が生えています。この短い毛のお陰で滑りやすくなり木枠をズラしていくときに役立っているようです。竹虎では竹皮草履や包材としても利用する竹皮ですが、やっぱり、なかなかスグレモノなのです。
見上げるような、ずっと上の方にまで木枠が上げられました。こうして木枠を使う工程は5月一杯くらいまで続くそうです。木枠の先端から筍が更に伸び枝がでる頃になると木枠を外します。この頃になったら梅雨がそこまで来ちょりますが、木枠をしたままの長雨は箱の中が蒸れて竹が傷むので、それまではに作業を終わらせねばなりません。角竹作りは、自然そのものが相手ながです。その年の筍の成育、気象条件、その時々の天候など、複雑な要素のからまる中で、毎年変わらない品質の竹を仕上げつづけるのは、長年の伝統の技術と、竹への愛情ではないかと思うちょります。
角竹で意外に知られていない事は、角竹は全て一年竹なのです。木枠を外してそのまま竹林で成育させておき、11月には伐採するというのは自分達の虎竹からすれば、ちっくと考えにくい事ではありますけんど、職人技により創られる角竹は慎重の運ばれて油抜きして、このような見事な、まさに京銘竹と呼ぶにふさわしい、威風堂々とした竹になっていくのです。
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