竹筒の伝票立て

竹レシート立て


あれはもう、十数年も前の事になるかと思うのです。東京品川の大きなホテルで数人の仲間と一緒に喫茶店に入ったがです。ウェィトレスさんがオーダーを取りに来た後に、レシートを丸めて入れたの筒を見てビックリ仰天しましたぜよ!なんと、その筒は日本唯一の虎竹やったがです!東京のど真ん中、初めて入った喫茶店にあった小さな竹、何年も会えずにいた故郷の友にバッタリ鉢合わせした気分ぜよ。ええっ!?と思わず手にとって


「これが自分らあの虎竹ぜよ!日本にそこにしか無い竹ぜよ!」


と周りの皆さんに説明させてもらったのです。今にして思えば、あの時に近くにおった方々は、さぞ驚いた事ですろう。突然立ち上がって聞いた事もないような竹の話し始めるがです。けんど、当然の事かも知れませんが同じテーブルに座っていた方で、虎竹の事など知っちゅう方は一人もおられなかったし、そこで働かれている方や、もしかしたら店長さんでも、各テーブルに一つ置かれてる竹の事はご存じなかったのではないか?そう思うちゅうのです。日本全国どこで見かけても一目で虎竹の里の竹と分かる竹。気づき始めちょった「自分達の竹と分かる事の幸せ」を、ますます、これから加速させて、徹底的に伝えねばならない。唖然とする周りの顔がそんな気持ちを強くさせてくれたがぞね。


深夜になった懇親会の帰りに一人になっても静かに興奮が高まってきましたちや。全く知らない所で虎竹は、あんなにして活躍している、あれぞ、曾じいさんが命がけで探し求めた竹であり、100年にかけて守ってきた竹。だとしたら、自分は何ができるろうか?会社はボロボロの時でした。先行きも見えず真っ暗闇でどうしようもなかったですけんど、この伝統の灯を消したくないと心に誓った夜やったのです。あれから随分経つけんど入ったお店で、こんな竹のレシート立てを見る度に鮮明にあの日を思い出すがです。


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