ストックホルム国際見本市から2ヶ月もの船旅を経て、巻き段で丁寧に梱包された竹家具が虎竹の里に帰ってきたがですぞね。寒い異国での展示会と長旅、まっことお疲れ様ぜよ、ありがとう!梱包を解くと、久しぶりに見る孟宗竹には想像通り、いっぱいのカビです、竹表皮の変色などもあって、見本市での美しい立ち姿とは随分と違うて見えるのです。
製作した者からしたら、こんな形で返送されて来るのは辛い事です。一緒に竹を見る専務が弱音をポツリ...。けんど、それは日本全国の竹屋のつぶやきですろう。竹は青竹そのまま使うこともありますが、その季節だけの、本当に短い、はかない命を愛でるものながです。青竹の杯が宴席に出される事がありますけんど、使った後は、よろしければ持ち帰ってくださいと言われます。その日だけの、もっと言えば、その方だけのために作る専用の酒器ぞね。それくらい生竹の使用期間は限定されたものなのです。
たまに見かける青竹の花器も、その時だけのものですし、新春を迎えるために設える青竹の垣や枝折り戸、竹の井戸蓋など、庭園に使う青竹は造形が大きく迫力があって辺りの雰囲気を一変させる力を持っていますが、やはり、目に鮮やかで清々しい期間は本当に一時のもの、見る見る色褪せていくのです。けんど、それが竹であり、その色合いの落ち着きや、季節の移ろいの中で枯れていく風情そのものを楽しめるのが竹ながです。ただ、青竹(真竹)もそうですし今回の孟宗竹もそうですが、油抜きしない竹は、水分を多く含み耐久性がありません。長い輸送でも極端な品質の劣化は避けられないがです。
それでなくとも竹にはカビ、割れる、虫が食うなど、宿命的なマイナスを背負っている素材とも言えるのは事実ぜよ。だから竹を使うての家具と言えば集成材にして、形や強度をコントロールしやすくした上でのモノ作りになるのです。一本づつ太さも形も性質も異なるのが竹なのです。同じ規格のものを複数作る方法としては最適のやり方です。
自然な竹の形をそのまま活かしての家具づくり、最初のスタートはこんな形になりましたけんど、けんど、だからやめるのか?ドイツ人デザイナー、ステファンさんの斬新な発想と技術は、今まで自分達が考えた事もないもので心から感服したし、竹の可能性の種とヒントを残してくれちゅうと思わんろうか?1を2や3や10に、あるいは100にするのは簡単ではないですが割合出来る事ではないろうか?なかなか出来ない、本当に難しい事はゼロを1にすること。頭で思うだけで行動しなかったら決して到達できない領域がある。竹虎は「1」に少しだけ近づいちゅうがです。自分にはカビと変色で疲れ果てた「竹」が英雄に見えちょります。
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