昨日は地元の筍をお話をさせてもらいましたので、今日は京都の筍料理の老舗「うお嘉」さんのお話をさせていただきます。こちらのお店は創業明治5年と言いますきに、何と竹虎より20年以上古い140年余の歴史を誇られちょります。手入れの行き届いた美しい孟宗竹の竹林が山全体を覆っているような、昔から竹の盛んな地域ですので当社の古いお取引先も何軒かあるのです。五代目当主の小松さんに虎竹の里にお越しいただいたご縁などもあり、一度は、本場の京都の筍を味わいたいと思い寄せていただくのです。
筍はクセのない食材で、いろいろな素材と合わせられたり、調理方法も様々に食することができるのですが、やはり、一番の味わい方は煮物にする事ですろう。うお嘉さんの名物、朝堀り筍鏡煮をいただきます。鏡煮とは、昔の女性の持つ手鏡のように丸く大きな形から、そう名付けられているとの事ですが、筍の中に、どうして?という程、お汁が染みこんでいて、お箸をいれると、そのお汁が溢れだしてきます。
何という幸せな味ですろうか?竹は素晴らしい素材だと、つくづく思いますぜよ。竹細工や竹工芸とて人々の生活や暮らしに役立ち、豊かにしてくれるだけではなく、こうやって命を繋ぐ食としても、こんなに美味しく楽しい時を演出してくれるがです。そこには竹職人と料理人という全く違う手仕事ながら、同じ竹に向き合う、誇りとこだわりを感じます。
うお嘉さんは、趣のある店内一歩入ると竹の装飾が使われ、いたる所に竹の意匠を感じて嬉しくなってくるのですが、紙のランチョンマットに描かれる絵や箸置きからはじまり、使われちょります品のよい器なども竹を取り入れたものがあり、長い歴史を感じさせてくれるのです。五代目小松さんは、これからこの長い歴史の伝統を引き継ぎ、京都の筍文化を守られていかれると思いますが、伝統は革新だと言われよりました。これは、うお嘉さんの精神でもあるのかも知れません。常に新しい試みに挑戦し続ける事により伝統が守られるのは、食でも工芸でも同じやと思うたがです。
小松さんの革新が最後の水物として出して頂きました「筍とうふ炭流し」でしたぜよ。豆腐と言いましてもクリームチーズを練り込んだ濃厚な味わいの豆腐に淡いシャキ感の筍が入れられちゅうのです。そして、そこに何と黒い縞模様のように見えるのは竹炭ぞね。
最近では竹炭パウダーを使う料理は日本だけでなくて、今や海外でも広く注目されてきています。元々は民間療法的に飲用されていたり、その昔は忍者が解毒剤として携帯したとも言われます。炭職人さんに胃腸の悪い人はいないと良く聞いちょりましたが、これはお腹の調子の悪い時には炭窯で炭をかじるからで、自分達には、そんなに特別珍しい事ではなかったのです。竹炭も竹から生まれるものです。今まで使った事のない新しい竹の素材を取り入れ、こうやってチャレンジを続け事こそが伝統に繋がると思います。最後のデザートはまさに伝統の味がしましたぜよ。
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