竹籠の筍

筍と竹籠


毎年この季節になると山の職人さんや近所の方から美味しそうな筍をいただく事が多かったのです。そこで、小さい頃から大好物やったのが筍と豚肉の甘辛煮ぜよ。大鍋に一杯煮込んでもらい、温めなおしながら毎日のように食べよりました。この時期には連日続く事もあったがですが、少しもイヤではなかったのです。最後の方には煮詰まって味が濃ゆくなりますが、これを卵とじすると、最高の丼ができ上がるのです。玉子の柔らかさの中に、シャキシャキした筍の食感が何とも言えず、豚肉にも、こじゃんと(とても)味が染みこんで何とも言えず旨い!一番好きな丼を選べと言われたら迷う事無くこの筍丼と言うくらい好きやったちや。


こうやって季節には沢山頂く機会がある筍ですが、虎竹の里の竹は筍で食することはないのです。料理に使うのは、孟宗竹と決まっちょります。たまに「日本唯一の虎竹も食べるのですか?」と聞かれる事がありますが、虎竹は3年くらい経たないと、どんな色づきになるか分りません。美しい虎模様が出る事が、この竹の一番の価値です。だから、もったいなくて誰も虎竹の筍は食べないのです。


孟宗竹は皆様が一番目にされる機会の多い竹かも知れません。全国各地どこにでも普通にある国内最大級の竹ですので、お近くに竹林があれば少しご覧になって頂きたいがです。背の高い竹の足元に真っ黒い竹皮に包まれた筍が、まさに今頭を出して伸びゆう所ではないですろうか?筍の季節は地方により異なりますが、「筍」と言う字は「竹」の「旬」と書きます。それぞれの土地の「今」しか楽しめない竹の滋味ぞね。四季を大事にする日本人には、たまらない味なのです。


けんど、筍が顔をだしてからの「今」というのは実は本当に短く、昨日まで筍かと思いよったのに、今日見たら、すでに竹になっている、それほどの凄い成長力とパワーを秘めています。特に太い孟宗竹が天を目指して真っ直ぐに伸びていく迫力は尚更なのです。竹虎本社前の石碑に刻まれている言葉があります。


「竹の子の、また竹の子の、竹の子の子の子の末も茂る、めでたさ」


残念ながら現代の日本の孟宗竹は十分有効に活用されているとは少し言い難いのか現状なのです。筍が大量に輸入されるようになってからは有名な産地を除けば、昔のように筍掘りをして収穫する竹林も減っちょります。けんど、次から次と育つ若竹の逞しさは、やはり嬉しいものです。その姿には元気と勇気をいただくのです。


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