竹は細く割って編み込まれると、しなやかでもあり耐久性もあり、正倉院に所蔵されているような、ずっと古い時代のものが、そのままの形で今に残っていたりするのですが、丸竹のまま使うとなると、どうしても「割れる」という天然素材の竹ならではの重大な欠点があるがです。まあ、重大かどうかは使われる方の判断もあるかと思います。割りやすい特徴から様々な竹工芸が発展したとも言えるのですが、その特徴が反対に割れてほしくない場面でマイナスとなるのです。割れを景色として見ることのできる竹花入れなどもありますが、これは稀な事ですろう。竹と向き合う多くの竹人にとって「割れ」は永遠のテーマでもあったがです。
竹を割れないようにするためには、どうしたら良いか?多くの方が考えたと思うのです。割れの仕組みは、だいたい解明されちょります。竹の維管束と呼ばれる細かい組織が一本の竹を貫いちゅうがですが、この密度が竹表皮部分では密度が濃く、内側になるにつれ薄くなるのです。竹は伐採されたあとも「生きている」と、たまにお話しますが、呼吸もすれば、収縮もしています、密度の違いが収縮率の違いとなり、竹の強度の限界になった時、縦に割れが入るがです。
ただ、全ての竹が割れるというと、そうではなく、やはり自然の難しいところですが、古い竹でも何ともないものもあります。以前、竹虎と50年前までお付き合いさせて頂いていた京箒の職人さんの倉庫で、その当時の竹の在庫がまだ残っていたので、見せてもらいましたけんど、ほとんど割れも何もなく、まるで、つい先日お届けさせてもらったばかりのような当時のまま綺麗にあって、まっこと(本当に)感動した事があるがぜよ。
竹を割ったような性格等とも言う事もありますけんど、「パンッ」と知らない方だと驚くほどの大きな音をたてる事もある、そんな、竹を割れないようにするには?空洞の中に何か詰めて内側から割れを抑えこめば良いのではないかと考えた方は恐らく少なくないと思うのです。しかし、実際にやられた方は、あまり居なかったと思います。だから、この竹の事を知った時にはそのチャレンジ精神に感激したのです。長い歴史を誇る日本の竹の世界は、やはり凄いにゃあ。まだまだ、こんな方がおられるのだなあと心強く嬉しくなってきますぜよ。「割れ」をどうしたら良いのか、何とかならないのかと、本気で試行錯誤されてきた事が、ヒシヒシと伝わってくるがです。
近年の建物の中の環境は、エアコンなどの乾燥によって竹にとっては過酷そのもの。そんな中に果敢に挑むこの竹には、発砲ウレタン樹脂が詰めらちょります。室内装飾に多用する事を考えて、防火効果の高い難燃試験済みというのも素晴らしいがです。
発砲ウレタン樹脂で、すでに割れにくく加工された竹に、さらに銘木などに見られる背割りを入れて、一定間隔で竹釘留めされちゅう念の入れように、竹のプロとしての仕事ぶりを感じるがです。この特別な竹材が、竹虎でどんな風に活用できるかは、まだ未知数ですが炭火で油抜きした竹肌の白竹は、やはり美しいですちや。真竹本来の生命力にあふれた力強さと、たくましさを感じるがです。もし、うまく一つの形に出来た時には、今までとは違う重厚感や雰囲気を感じさせる、ひとつの竹製品にできるのではないかと思うて楽しみにしちゅうがです。
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