その竹細工の名人の工房の横には大きな大きな柿の木があるのです。太い幹から見上げる樹齢は何と350年といいますので、この竹細工発祥の地にあって、ずっと見守り続けてきてくれた大木なのです。柿の木を庭や自宅近くに植えられている方は意外に多くて、虎竹の里にも沢山ありますし、日本の田舎ではこの柿の木のある景色が故郷を連想させて懐かしく思えるほど、よく見かける木のひとつですろう。けんど、この堂々とした圧倒的な風格はどうやろうか、これほど覇気の満ちあふれた、力強い柿の木は他に見たことがありませんぞね。きっと、この里の守り神なのかも知れないにゃあ...訪れる度に思うがです。
太い幹の横で竹編みを続けてこられた職人さんは、もちろん、この柿の木が大の自慢。同じように父も祖父も曾じいさんも、またその父も竹を編んできた、まさに、ご自身の誇りであり、唯一の帰る場所でもあるがですろう。虎竹の里の竹林で目を閉じる時、自分が一人でないと感じられるように、この熟練職人さんも一人ではない、大いなる温もりの中にあられると思うのです。
ニコニコしながら職人さんが工房から出てきました。手には何やら小枝を持たれています。
「この柿の木の、風蘭(ふうらん)だよ」
柿の木の大木の枝には苔や自然に風蘭がついているそうですが、台風などの強風時には、それが枝が折れて落ちてくるそうなのです。風蘭は確か可憐な花を咲かせますので、その枝を集められていたのです。
「こんな貴重なモノを頂戴してエイがですか...?」
この地の竹工芸の歴史は200数十年といわれています。その長きに渡って、ずっと竹を見守り続けてきた、いわば竹の守り神のような柿の木。その小枝についた風蘭とあれば自分にとっては本当に特別なもの。どんな花を咲かせてくれるがやろうか?ブログを読んでいただく皆様にも是非ご覧いただきたいにゃあ...。美しい花が咲くのが今から楽しみなのです。
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