寸胴(寸筒)の油抜き

寸胴(寸筒)


竹は、ご存じのように中が空洞になっていて、一定間隔に節がありますので自然の竹そのままを切って筒にすれば立派な花入れが出来上がりますぞね。日本の華道というのは色々な流派があり、四季のある風土や日本人の感性で磨かれ今に至っちょりますが、想像するに一番最初の生け花の起源というのは、ただ切っただけの竹筒に花を入れたものだったように思います。


生け花は、それから時代を経るごとに進化を続けていますが、一番シンプルで簡素な形の竹筒は、寸胴などと呼ばれて現在でもお花の世界で広く使われているのです。自分の学生の頃などは華道人口も多かった事もあったのか、竹虎の店舗でもこの寸胴(寸筒)や二重切と言う花入れが二段になったものなど、大小様々なものが所狭しと並べられちょったのを覚えちゅうのです。


竹そのままを使う製品だけに大きく変化を付けられるのは竹素材です。そこで、真竹、胡麻竹、図面竹、煤竹と主だった竹は全員集合でしたぞね。中でも孟宗竹で作られたものが一番多かったです。節の間隔が狭く、末広がりになった根っ子に近い部分の意匠を活かし、特徴的で重厚な雰囲気を醸し出しちょりました。


虎竹の加工で、さんざん油抜きはするのですが、同じ火抜きにしても虎竹と孟宗竹は全く違うと感じる事がありましたぜよ。虎竹の場合はガスバーナーの火で一気に油抜きをしていきます。虎竹は身の薄い淡竹(はちく)なので、火が入りやすい事と表皮の虎模様の美しさを全面に出す事がほとんどで、身の部分を見せる竹細工にする事が、ほぼ無いのでそこまで気を使って油抜きをした事がなかったのです。


ところが身の厚い孟宗竹の寸胴の場合には、切り口の身の部分も製品の見せ所のひとつとなりますので、内側までじっくりと火力の弱い炭火で炙って油抜きしていくのです。この工程がかなり大事になってくる職人技の見せ所ぞね。どうしてかと言いますと、内側部分まで火がしっかり通っていないとこの大事な切り口部分に黒いラインとして残ってしまうからなのです。竹の身部分の乳白色のような綺麗な色に、うっすらとは言えども黒いシミのように見えてしまっては花活けは使いにいくのです。


火抜きの竹は、湯抜きの竹に比べて割れにくく、表皮の艶も全くちがい、光沢も素晴らしいものがあるのですが、炙りすぎてもこの竹表皮に焦げ目ができて製品として使えません。目で見ることのできない竹の内側まで火入れの状態を見極め、じっくり仕上げていく製竹の技術は隠れた職人芸ながです。


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