先日、とても綺麗に編み込まれた姿の美しい鰻ウケがあって惚れ惚れして見ていたら、そのウケを作られた職人さんが来られて良かったら持って帰ってエイと言うがぜよ。とんでもないと思うて遠慮しちょりましたけんどどうしてもと、譲ってくれないので有り難くいただいて来る事にしたのです。
自分が子供の頃に鰻捕りに使っていて、今でも竹虎で販売もしているウケは竹ヒゴの幅も広く簡素な作りであるものの、その機能性はバツグンやったぞね。機能性とは、つまり、どれだけ鰻を捕まえる事ができるか?これが凄くて、夕方仕掛けたウケを早朝に上げに行くのですが、多い時などはあの細いウケの中に大小十数何匹も入っていて、水中から取り出してジャーと水を抜いた後もズシリと重たい位の事もあったがやきに。
自分達の馴染みのものはウケと呼ばれる鰻の入り口部分が固定されていて、お尻の部分に布や丸竹を詰めて蓋をするようになっちょりますが、頂いた鰻ウケはお尻部分が丸く編まれて、ウケ部分をはめ込んだ後タコ糸で固定するようになっています。竹ヒゴの幅も細く、一本づつ丁寧に取られていて、編み込みも美しい、こりゃあ部屋の中で花入れにでも使えそうですにゃあ。
いつも車で通り過ぎるだけの川べりに、車を停めて細い道を下ってみる事にしましたぞね。川面スレスレに飛ぶ小鳥、懐かしい川の香り、心地良いせせらぎの音が聞こえてホッとするちや。
そう言えば、先月に雪のチラつくストックホルムの見本市に行った時、旧市街地であるガムラスタンで現地の漁で使う道具を見つけましたぜよ。長さは1メートルを少し超えるくらいやったろうか?カズラと木の皮で編まれた漁具でしたが思わず鰻ウケを思い出します。日本と北欧という、こじゃんと離れた土地なので大きさやデザイン、素材はもちろん違いますけんど、基本的な編み方は全く同じなのに驚いたのです。
スウェーデンの子供達も、このような道具で魚捕りをするのだろうか?それなら、ガラスケースに飾られたウケを見て懐かしく立ち止まり、川の香りなど思い浮かべるのやろうか?
作務衣の上に羽織る長半纏の襟元を閉め、白い息を吐いて歩きながら、そんな事を考えよったがです。
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