渡邊政俊先生のご講演

渡邊政俊先生


農学博士であられる渡邊政俊先生のご講演は、まっこと面白いのです。時間を忘れるような楽しいお話ばかりで終わるのが惜しいくらいでした。そもそも竹とは、どうして「タケ」と呼ばれているのか?あまり考えた事もない名前の由来から始まりましたが、


竹=高き木=たかきき=タケ


だそうですぞね。そしたら笹はどうして「ササ」かと言うと、


笹=些細な=ささいな=ササ


だそうですぞね。笹が些細とは思いませんけんど名前の由来は興味深いものです。竹と笹の区別は実はハッキリしていない部分もあるのですが、言葉の由来からして背丈の高いものが竹で低いものが笹という大まかな分類ができるのです。そしたら竹は木でしょうか?草でしょうか?答えは簡単、竹は竹ながです。木は毎年成長して太くもなり、伸びもしますが竹は成長期を過ぎると太くもなりませんし伸びる事もありません。また、草は木質部がありませんが竹は木質部があるのです。だから竹は木でも草でもなく、竹は竹ながですぞね。


渡邊政俊先生


世界の竹博士、ドクターバンブーと言われた上田弘一郎先生と出会い、最初は面白くなかったという竹の世界に足を踏み入れられたのが20歳の時と言われちょりました。以来上田先生とは38年のお付き合い。その中で竹のスペシャリストとして様々な国に赴き、竹の研究に邁進されてきた渡邊政俊先生のお話は驚きに満ちちょりますが、ひとつビックリしたのが孟宗竹の寿命なのです。


基本的に大きな竹ほど寿命は長く、小さい竹は短いとされていて国内最大級の孟宗竹は寿命が長いのが普通ですが、2013年の森林総合研究所さんの調べではなんと寿命30年のものがあったそうです。自分などは、せいぜい15年程度だと考えちょりましたので、自然界のものは人知の及ばない事があるなあと思うのと、やはり竹の研究というのは、まだまだ未開な部分が多いと改めて感じます。そして、この竹の寿命という事にも実は考え方が二つあるがぜよ。その一つが竹そのもの個体の寿命であり、もう一つが、竹林全体がひとつの家族として地下茎で繋がる竹の地下茎全体を含めた寿命という事ながぞね。


世界には1300種類くらいの竹があると言われちょりますが、この地下茎含めた寿命というのが分かっているのは、日本の真竹とインド原産のメロカンナのたった2種類だけながです。真竹は120年、メロカンナは47年、それぞれ時期がくれば花が咲き、一斉に枯れてしまうのですが真竹は残った地下茎から芽吹き、メロカンナは種が落ちて発芽するそうですので、まっこと竹の生態というのは不思議な事、分からない事だらけながです。


花が咲き竹が一斉に枯れるなどと聞きますと、どうしても気になるのは日本唯一虎竹の里の竹たちの事。虎竹は淡竹(はちく)の仲間なので実は確かな開花スパンは分かっちょりません。山によっては花が咲いた事があると古老から聞いた事がありますが、それでも同じ在来種の真竹と同等と考えると人の寿命を越えて100年単位で見ていかねばなりません。竹虎が今年で創業121年、一応長い社歴はありますものの、大自然の雄大な流れの中ではほんの一瞬のような気がするのです。


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