そのホテルのロビーに入っていくと美しい竹の設えに気付きますぞね。竹を縦に柾割りして、いつもの見慣れた竹とは違う竹の身部分の色合いや不規則に並ぶ竹節の面白さをデザインにしちゅうがです。そうそう、柾割りと言うても本当に割るとこんなに綺麗にできませんので、丁寧に竹を縦方向に切っていき、このような形にしちょります。
これを竹と気づかない人は、あまりいないと思いますが、もし、仮に竹と知らなくとも何となく心地のよい雰囲気であるとか、ゆったりとした和んだ空気感は感じていただけるのではないですろうか?まあ、自分などからしたらエアコンの年中効くロビー内で竹がどの程度ゆがみが出るとか、傷むのかとか、他の事が気になってチェックインで書き間違えたりもしたのですが...(笑)。
コレと言って違うところの無いような家並みが続く道沿いに、黒竹という細い竹を並べた垣根が作られちょります。先ほどのホテルのロビーと同じく馴染みの竹林を思い出させるようで、ホッと安堵するような落ち着いた気持ちにさせてくれるがです。
「馴染みの竹林」と言いましたけんど、現代人に決して竹林は馴染みではないようです。もちろん大都会の真ん中に生活される方でも植栽に竹は多くなりましたし、近くの山々に沢山の竹林がある事はご存知ではあろうかと思います。けんど、遠くから眺める事はあっても竹林に入った事がないという方は意外に多いようですので、むしろ遠い存在となっているのかも知れませんぞね。
けんど、それなのに竹の造形をご覧になられた時、あるいは、先ほどのホテルさんなどは気づかないような細やかな所にも色々と竹をあしらい、お客様をもてなす心を感じましたが、もし竹と分からず、気づかずにいる方がおられたとしても、視覚から入る竹の優しさは必ず日本人の方には伝わると思うちょります。それだけ竹と日本人の付き合いは長く深いのです。いつも身近にあって、寄り添うてきたのが竹やと思うちょります。「竹冠」の付く漢字を数えてみたら119もありました。この多さは、その証のひとつですろう。そして、竹と知らずとも何とも言いようのない気持ち良さを感じるのも、その証のひとつだと思うのです。
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