染網代衣装かご

染網代衣装かご


かつての日本のご家庭は畳文化でしたので、畳の部屋で使うのに機能的な生活道具が沢山あったと思います。それは今のフローリングの住宅でも使えるモノもあれば、現代の生活にはあまりそぐわないモノもあると思うがです。この竹編みの衣装籠などはどうですろうか?自分の小さい頃には、友達の家に遊びにいっても親類のおばちゃんの部屋に入っても、だいたいの部屋の片隅にはこのような衣装籠が置かれていたように覚えちょります。


ある夏の夕方、近くの友人の家で遊んでいると、地下足袋にダボダボのズボンを履いた父親が仕事から帰ってきます。すると土間からあがって、まず向かう先がこの衣装籠でした。ここには普段着の着物が畳んで置かれちょって、まず、着物に着替えてから縁側などに座りくつろいでいたのです。自分の子供の頃には、このようにリラックスする、在宅の時には着物姿という方はまだ結構おられましたぜよ。そして、着替えに必需品のように使われよったのがこのような竹網代編みの衣装籠だったワケです。


衣装籠


生活様式の違いか、段々とこのような籠は使われなくなり、今では旅館さんなどで一部見かける事があるくらいですかにゃあ。当時の衣装籠は大量生産されていましたので、少し下品なくらいのテカテカと輝くようなクリア塗装をかけられたりしてました。けんど、それが今では反対に古さを感じさせ、ノスタルジックな味わいとなっているので不思議です。このような衣装籠も、もう編まれる職人さんもいないので、今後新しい品を見ることはないですろう。そう思えば時代の最後の生き証人のような感じです。最後のひとつは、お客様にお分けすることはやめましたぜよ。ここに残しておきたいと思っているのです。


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