30年近くに渡ってニューヨークでバックデザイナーとしてご活躍されよります、中野和代先生が虎竹の里にお越し頂いたがです。年に数回、日本に帰って来られる機会を使うてのご来高ですけんど、先月にニューヨークで初めてお会いさせてもろうて、こんなに早く虎竹をご覧いただけるようになるとは考えちょりませんでした。まっこと、田舎者の自分などとは違うて、トップランナーの方の行動力を垣間見る思いながでぞね。
お洒落なハイヒールは歩きやすいとの事でしたが、虎竹の林に向かう山道は細く、こじゃんと急勾配なので、女性用にと用意してある長靴に履き替えて竹林まで登って頂きます。単身海外に行かれて流行の激しいファッションの世界で成功されちゅう方です。お仕事は自分などが想像できないような厳しいものがあったろうと思うがですが、中野先生の竹に対する眼差しは、まっこと優しく穏やかですぞね。
ちょうど虎竹の伐採の最中でもあります。細い山道から運び出された虎竹は一ヶ所に集められて積み上げられ、今度はトラック一台分づつ広い土場に運び込まれます。この日も山出しされた竹を土場で選別されよりましたぜよ。虎竹の里で伐り出される竹は、もちろん全てが虎竹ではありますが、全部が全部に色付きがあるという事ではないがです。そもそも虎竹の虎模様がどうして出来るかは今だ解明されちょりません。命名の父、世界的植物学者の牧野富太郎博士の調べられた高知県の土質地図では、この里の谷間だけ色が違うちょりますので、土質の違いがあるのは間違いないかと思うちゅうがです。
また、京都大学からは2回ほど虎竹の調査にも来られちょりました。この時には土中にいる特殊な細菌の作用ではないかとの事でした。けんど山の職人さんは土佐湾からの潮風や霜が降りないと色が来ないと言うて寒さが大事などと、実は色々な事が言われちゅうがです。恐らくは、そんな様々作用が複雑にからみあい、この土地特有の天然の意匠は生まれるがではないかと思うちょります。
そんな虎竹を色付き別、また太さ別に一本づつ選り分けて、色付きの良い美しい虎竹だけを製品にしていくがですぞね。竹虎では祖父の代からずっと製造し続けてきた袖垣をご覧いただきました。何と言う事のない竹製品に見えますけんど、孟宗竹の芯を細く割った虎竹で巻いて仕上げていく伝統の技法が活かされちょります。そして、それぞれ細かく分業化されています。孟宗竹を伐る方、虎竹を細く割る方、ヒシギを打つ方、黒穂やカズラを集める方、沢山の方々の力が集まって、ようやく一つの虎竹袖垣が完成するがぜよ。
中野先生に「竹虎四代目君」と一緒に写真をお願いしましたぞね。竹虎四代目の顔が3つも並んで、ちっくと気持ち悪いろうか?なに?3つ...確か一つは顔抜きのはず、そう思うて良く見たら、以前中野先生のご講演を聴かれた事のある、平岡宝石さんが来られて顔を出しちょりましたぜよ。はるばると高知県須崎市にまで来ていただいた中野和代先生を大歓迎する満面の笑みは素晴らしいがです。
コメントする