飯塚琅かん斎さんは竹を語る上で必ずお名前の出てくる偉大な竹工芸家ぜよ。亡くなられて既に50数年も経つというのに作品には一目見て圧倒される迫力と、他の誰にもない何処にもない、この方だけの世界に引き込まれるてしまう独自性があるがです。今でも初めて出会うた時の興奮が蘇ってドキドキして来ますちや。
あの竹に会えると思うて、ずっと前から楽しみにしちょりましたのは、栃木県立美術館で開催されよります「竹のめざめ」と言う企画展。まっこと、これだけの多くの逸品の作品達がよくぞ集まっているにゃあと、日本一ではないかと思える充実した内容に感激する事しきりながです。開会式とギャラリートークでの美術館の研究員の方のお話からも、こじゃんと(とても)作家の方と作品に愛情を持たれちゅうのが伝わってくる。栃木県というのは勝城蒼鳳(そうほう)さん、藤沼昇さんという竹工芸の人間国宝の方がお二人もおられるような他には例のない土地柄でもあり、竹への思いの深さを感じる企画展に、まっこと嬉しゅうになるがです。これほど飯塚琅かん斎さん、その人に迫る展示会は、そうそうありませんろう。気がついたら閉館時間やった、時間があればもっとここに居たい、まっことそんな気持ちにさせる展示会やったがぜよ。
「竹のめざめ」という題名は一本の竹が竹芸家の手により創作され、ひとつの作品になっていく、竹のめざめという事もあるかと思いますが、この展示会を拝見された方が忘れられつつある日本の竹にめざめる、そんな機会になればとも思うたがです。
さて、そんな会場で思いがけずお会いさせていただいたお二人がおられます。お一人が飯塚万里さん、そして、もうお一人が生野徳三さん、それぞれお名前は、ずっと昔から存知上げちょりましたが、なかなかお会いさせて頂く事がなかったのです。今回は偶然にもお目にかかる機会を得て、まっこと光栄やったです。
飯塚万里さんは琅かん斎さんのお孫さんにあたり、生野徳三さんはご自身も竹工芸家としてご高名な方ではありますが、竹の世界で初めて人間国宝となられた生野祥雲斎さんを父に持ちます。飯塚琅かん斎さん、生野祥雲斎さんとも竹の世界を変えたいと強く願った挑戦者であり、変革者でもありますろう。このお二人は竹を芸術の域にまで昇華させたという大きな功績と、その後の竹芸界への働きは計り知れないものがありますぞね。竹の作家として認められる事は、竹そのものを認めて頂く事であり、日本全国で竹に関わる名も無き多くの職人や作り手に勇気と希望を与えたがです。この「一隅を照らす」生き様こそが自分が素晴らしいと感じるところであり、それぞれの子孫の方にお目にかかれた事は本当に有り難い事ぜよ。
いつも竹の神様に好かれているような気が、勝手にしよります。今回も、ちょうど上手い具合に導いていただいた、そんな目に見えない大いなる力に、まっこと感謝しよります。
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