須崎市制施行60周年記念式典の日

竹虎四代目


その内職のおばちゃんは一人で仕事をしてくれよりました。朝でも昼でも夕方でも、いつ竹編みの材料を持って行ってもいつものモンペ姿に腕抜き、頭には手ぬぐいで頬かぶりをして一生懸命に手を動かしよりました。セミの声が鳴り響く夏は汗をふきながら、冷たい北風が吹く日には厚着して、毎日、毎日竹と向き合う真剣な表情を思いだすがです。考えたら、もう30年近くも前の話ぜよ。


玄関のチャイムが鳴って、「本日は、おめでとうございます」誰かと思うたら、あの内職さんの娘さんが笑顔で立っちゃある。高齢で来られないお母さんの代わりにお祝いを持って来てくれたがぞね。産業功労表彰を受賞させて頂く事になった須崎市制施行60周年記念式典で、今まさに会場の文化会館に出かけようとした所やったがです。


須崎市制施行60周年記念式典リハーサル


懐かしさと、嬉しさと、感謝で胸がいっぱいになりますぜよ。今回の式典は思うたより大掛かりで沢山の方が来られちょります。間違いがあったらイカンきにリハーサルも念入りにされゆうがですが、その間もずっと思いよりました。


竹虎はお陰様で今年120周年を迎えさせてもろうちゅうけんど、一体どれだけの方に支えられ、助けられ、今日という日を迎える事ができちゅうがやろうか?


須崎市制施行60周年記念式典舞台袖


いつも自分ばかりが明るいスポットライトを浴びゆうけんど、本当にあの舞台に立つべき人は他におるがやないろうか?


いやいや、あまりに多すぎてこのステージでは狭すぎるかも知れんにゃあ。だから自分が代表として行かせてもらうがですろう。


産業功労表彰を受賞


初代宇三郎が大阪天王寺から日本唯一の竹を求めて、はるばる須崎市安和の虎竹の里にやって来たのが100年前。よそ者と言われて相手にされなかった昔から、二代目、三代目、四代目とこの地に根をおろし、竹の商いを続けさせてもろうてきた。今日は、そんな竹虎の事を褒めて頂きゆう気がする、曾じいさんや祖父の苦労が報われゆう気がする。


竹虎四代目


「今日くらいは、ちゃんとした格好したらどうぞね?」


母はそう言うけんど、竹虎の前掛けには人に笑われるほど寝る間もないほど働いた祖父が作ったマークが入っちゅう。竹虎のタオルは、年末にはろくなボーナスも出せんけんど、そう言うて真っ黒うなって働いて帰る一人一人の社員に頭を下げて父が手渡しよったもの。


120年分とは言わんけんど、自分が知っちゅう志を同じくする人達と一緒に登壇するならこれ以上の正装は他にないがぜよ。


コメントする