竹細工と火は切っても切れない関係ながです。虎竹の里の製竹作業では竹の油抜きという加工時に、ガスバーナーのゴーゴーと音をたてるほどの強い火力で竹を熱し、余計な油分を拭き取るという事をしゆうがです。
その一方で、とても小さく弱い炎で作業される竹細工もありますぞね。野菜籠を編む熟練職人の工房でもボヤ炭と呼ぶ。風呂焚きの後にできる炭を隣近所の民家からもらってきて使いよります。野菜籠には極太の力竹が縦横に使われちょりますが、この力竹を直角に曲げる際にボヤ炭のやさしい火力が欠かせんがです。
「一人でボツボツと仕事するには、ちょうどの炎だよ」
職人さんは笑って教えてくれるがです。
箱形をした野菜籠は、かっては品物の運搬用として、全国各地で作られよった竹製品のひとつぜよ。今でも自転車の荷台に、このような角籠をくくりつけて走りゆうのを、ごくごくたまに見かける事がありますけんど、ご存じありませんろうか?実は普通の暮らしの中にあった籠ながですぞね。
底編みは角い形をしよりますが、立ち上げて編んでいく過程では角が出来ちゅうわけではありません。丸みをおびた楕円形の竹籠のような形ながです。それが、このボヤ炭の炎でL字型にしつらえたガッチリした竹枠をはめると、見事に箱形の丈夫な野菜籠ができあがるがぜよ。
おっと、ここには最近では見かける事のない、大きなサイズの籠がありますぞね。これには一体何を入れるがやろうか?普通のご家庭ではあまり使われることのない大きさですけんど、実はプロ仕様としてあまり目立つことはないものの、
各地で使われたりしゆうがです。これだけ新しい素材や便利なものが色々ある中でも、ずっと愛用されるにはそれなりの深い理由があるがですろう。
そう言うたら、いつの事やったろうか?竹籠を編むときの切れっ端や不要な竹を、桁違いに大きな角籠に放りいれゆう職人さんに会うた事があるがです。何本も何本も、しつこいほど入れられちゅう力竹。それも、そのはず、大人が四人がかりで四隅を持って運ぶようなサイズ。ボロボロになって穴だらけになっても、愛着があるのかずっと使いつづけられよりました。今の時代で言うたらコンテナのような物やったろうかにゃあ...。
ああ、又そんな強者達が活躍しよった。古い時代に帰りたくなってきたぜよ。
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