歯下駄と蛇の目傘

蛇の目傘


高知は昔から雨の多い土地柄でもあります。車のワイパーを一番早いスピードにしても追いつかないような、激しい雨にも慣れちゅうつもりではおりますけんど、最近、度々経験する豪雨は勘弁してもらいたいですぜよ。先日の大雨も台風の時の雨も、げに、まっこと恐ろしい程やったぞね。あちこちで被害も大変なもので自然の猛威の前では、やはり人の力など本当に小さいものながやと改めて思いしらされます。そんなもう二度と降って欲しくないような雨もあれば、恵みの雨という言葉等もあるように適度に降る嬉しい雨もありますろう。山に繁る緑、豊かな川の流れの源でもあり、農作物にとっても、社会生活を営む自分たちにとっても、嬉しく感謝するべきものやと思うたりもしよります。


さて、そんな雨、けんど、そんな雨ぜよ。雨の好きな方いうたら、そんなに多くはないろうか?だから雨を楽しむ工夫も少しは必要かも知れんと思うちゅうがですぞね。自分は工場や山に行く以外は鼻緒の履物で過ごす事が多いですが、雨の日に、ちょこっと歩くのには竹皮男下駄を履く事が多いがです。もともと自分が履きたくて作った下駄だけに、こじゃんと思い入れもありますけんど、やはり歯下駄ですので長距離を歩き回るのに適した履き物とは言えません。出張に履いていくと階段などが多いですし、ちっくと危ない思いをしたことも何度かあるがです。


そしたら、どんな時に使うのが一番エイがやろうか?考えた時に、雨の日が真っ先に思い浮かびましたちや。靴を履いてると、あまり気になりませんが、鼻緒の履き物をタビックスでも素足でも履いていますと雨が意外に多く足にかかっているのが分かります。だから、雨が降って足元の悪い時には高さのある歯下駄は、水たまりも平気、雨も多少かかりにくいと言う事で重宝しちゅうがです。


サッと足を入れて歩きだすと、いつもより少し高くなった視野、カランコロンと響く音。雨の日ならではのささやかな心地よさを感じる事ができるがです。そして、雨の日は何というたち蛇の目傘の出番ぜよ。機能的な折りたたみ傘のように持ち運びやすかったり軽いワケではありません。だから、男下駄同様に遠出せねばならない時や、重たい荷物を持った時や、仕事の時にはあまり使いません。けんど、両手の空いた少し時間にゆとりのあるお出かけの時なら、これだけ雨を楽しめる道具は他にありますろうか。頭の上に番傘が広がると、その下だけはまるで別世界。手に握るのは黒竹、360度ぐるりと見回しても視界に竹骨のある景色。いやいや、これは嫌いな雨が少しだけでも違って思えてきそうぜよ。


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