渡辺竹清先生の特別なひとつ

渡辺竹清作煤竹バック


本煤で編まれた渡辺竹清先生の渾身の網代竹バックは、今までの作品とは又ちっくと違う雰囲気を放たれよりますぞね。網代編みの巨匠と言われ、かってはニューヨークの超有名宝石へもご自身の作品を提供されよった渡辺先生の特別な一品ぜよ。


実は先生がお嬢様のためにと創られちょった作品の中の、最後に残った、ただ一つの竹籠バックながですちや。全ての作品に、ひとつひとつ情熱を込めて、素晴らしい竹編みを生み出してこられた先生ですけんど、やはり、そうお聞きしますと、いつもの作品以上に何やらただならぬ想いのようなものを感じずにはおれんがです。


波網代


竹バックを持って屋外の明るい所に出てみるがです。百数十年古民家でじっと時を待っていた竹が光を浴びる、あたかも憧れの舞台でスポットが当たったダンサーのように、嬉しくておれないように美しく踊りだしているような波網代の編み目、心奪われそうになる光沢は本物の竹ならではですちや。


渡辺竹清作


祖父の代から懇意にしていただいた渡辺竹清先生の最後のひとつ、両手に大切に持って、腰をおろして眺めよります。


以前、先生が言われちょりました。茅葺き屋根で百年の役目を終えた竹に新たな百年の命を与える。そんな言葉通りに生まれ変わった煤竹が人の中で輝けるように、輝き続けていけるように後の世代に伝えていかねばと思いゆうがです。


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