けんど、まっこと不思議な事が起こりましたぜよ。その日は朝からとにかく雨が降って部屋から外を見ても視界が悪いくらい、昼から竹林見学に行く予定でおったがですが、滝のような雨を見て、これは今日はどうしても無理やにゃあと思いよりました。実は今日のためだけに、わざわざ県外から来られた学生さんもおりましたので、こじゃんと残念に思いよったがです。
そしたら、そんな参加者の皆様の思いが通じたがですろう。いざ竹林に行くとなったらピタリと雨が止むのです。いやいや、これには驚きました。すっかり諦めちょったので嬉々として山に向こうたがです。
車ですぐの道のりですが、どうも後続の学生さんの車が遅いと思いよりましたら、そうか、最近の学生さん、いやいや学生さんでなくともですが、未舗装の道というのは乗り慣れていなかったがです。これは考えたら当然の事ですけんど、ここの竹林は近いところを選んでいますので、未舗装部分は、ほんの数百メートルしかありません。しかし、それでもアスファルトの道しかご存じない今の方々には、すでに、ここから虎竹の竹林は始まっているのやと教えられるがです。
まっこと若い皆様には、こちらが勉強させてもらう事ばっかりぜよ。そう思いながら山道に登る前にいつもの竹酢液タイムながです。夏場の山は藪蚊などが沢山おりますので、これは、絶対の必需品、竹酢液なしでは山に入れんがですぞね。
ニオイが独特の竹酢液です、初めての方ばかりですきに、かなり遠慮しながら掛けちょりますが、さすが同行する竹虎の社員は、もっと掛けて下さいと言うてきます。藪蚊の多さと竹酢液の効能が良く分かっちゅうがです。
<動画>よい子の皆様は真似してはいけない竹酢液大実験!
蛇嫌いの自分はいつも足元にも竹酢液を振りかけます。動物は火を怖がりますけんど、竹酢液は燻煙した香りが強く、火を連想させて嫌避効果があるがです。そんな話しをしますと、「私も掛けてください」と次々にリクエストがあるがです。
昔からの炭職人さんは地下足袋の上から、この竹酢液の原液をタップリかけて仕事をされよりました。だから炭職人さんには水虫の方はいない等とも言われますけんど、おそらく、もともとは害虫などの嫌避効果も期待しちょったと自分は思うちょります。
雨で滑りやすくなっちゅう細い山道を登りますぞね。人が一人づつしか歩けない急な坂道、歩きづらく、息をハーハー切らしながら竹林まで来てもらいます。100年前に初代宇三郎が歩いた道でもあり、祖父が、父が通った道でもある竹虎にとったら命の道。ただの山道とは違うがですぞね。そうして、こうやって山の職人さんたちが、ここから日本唯一の虎竹を運び出す苦労をちっくとでも知ってほしいと思いゆうがです。
さて竹林に入っての虎竹の説明ですが、雨の日は竹が濡れちょって、虎模様がハッキリ表れて、これは、これで分かりやすくなっちょってエイがです。まあ、若い皆様に色々お話したいと思うて、つい、しゃべり過ぎるがですけんど、竹林では話したり、考えたりするより、感じる事が大きいですろうか。本当に晴れても、曇っても、雨でもここは別天地ぜよ。
虎竹の林というのは平坦な場所にはないがです。急な斜面に竹林が広がっちょりますので、山道に戻るだけでも、結構恐る恐るになっちょります。これだけ足元の悪いところで、伐ったばかりで生しく重たい竹の束を担ぐ山の職人さんは。凄いにゃあ、やはりスペシャリストやにゃあ。こんな事に気づいてくれる学生さんはおりますろうか?
行きはヨイヨイ、帰りはコワイと唄がありますけんど、虎竹の竹林の山道も、まったくこの通りですぞね。濡れて滑りやすい道は特に帰りほど、ゆっくり、ゆっくり、一歩、また一歩と日本唯一の竹林の余韻を楽しみながら近くを流れる渓流の音を聞きながら(はじめてやと、そんな余裕はないかも知れませんが)、降りていって欲しいがです。
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