チンチク特大ざる

チンチク竹ざる


真竹でもない、淡竹でもない、孟宗竹でもない、チンチクという株立ちの竹で自分が編んだ特大のざるを持つ職人さん。まっこと目を見張るのはその大きさもありますけんど、作りも独特ぜよ、両端に使われちゅうのは桜皮と誇らしげに話されるがです。実際に長年使われてきた年期の入った歪みまでも、これこそ実際に使われゆう竹細工だけの持つ力強さ、たくましさ、これは何と格好のエイ竹ざるやろうか!?


そう言うたら、この辺りには株立ちの竹が多かったにゃあ。正式な名称を鳳来竹(ほうらいちく)と言うチンチクは土用竹とも呼ばれよります。これは普通は春にでる筍が夏に生えるからやそうですぞね。株立ちの竹は南方系と言われるだけあって温かく水の豊富な場所が好きながやろうか?そんな風に思うてしまうほど高知でも見かける事があれば、決まって日当たりのエイ川縁などが多かったように思うがです。これは、他の竹のように地下茎が伸びていかないので、堤防の浸食防止にも多く植えられた事があるようですぞね。家の周りの防風林としても株立ちの竹は多用されちょりました。隣の土地に茎が伸びないので境界の役割にもなってきたようながです。


カズラの縁巻


そんな、ちっくと変わった竹を使うた竹細工を拝見できるチャンスは自分でもそうそうありませんぜよ。詳しく見せてもらう事にしたがです。縁はカズラで縛って留めちょりますが、かなり傷みもある。けんど無骨な魅力にあふれた仕事熱心な竹ざるです。あれこれ見せてもらいゆう内に時間を忘れてしまいそうちや。


気持ちのエイ、風の吹き抜ける木陰で、職人さんのモノ作りの面白い話しが止まりませんぞね。だいたい職人さんには二種類の方がおられるがぜよ。自分の仕事に向き合い続け他の人をあまり寄せ付けないタイプと、自分の仕事を人に開けっぴろげに話してくれるタイプ。この竹職人さんは、どうやら後者のタイプぜよ。


チンチク(蓬莱竹)竹ざる


とうとう西日が傾きかけて名残惜しく振り返ると竹ざるが黄金色に輝きよった。豊かな実りを連想させてくれて思わず笑みがこぼれるぜよ。ずっと農作業を助けてきた竹ざるは今日も畑で一緒に働きゆうろうか、明日も明後日も、今までそうやったようにずっと使われ続けていくがですろう。


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