ドイツから虎竹の里へ

虎竹林、竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)


ドイツから来られたカールハインツさん虎竹の里にお越しになられた日は、太陽の日差しが淡く見える程度の薄曇りやった。カンカン照りの高知は既に真夏の日差しのようですきに、それほど暑くもない、ぼっちり(ちょうど)の天気の日やったかです。けんど、それでも蒸し蒸しと汗ばむような空気の中を、急で細い山道を息を上げながら登っていきますぞね。


「こりゃあ、気持ちがエイが違うぜよ~!」


思わず声を上げたくなるような竹林を吹き抜けてくる風、山の登り口までとは全く違う心地よい涼しさに包まれて終始にこやかな表情のカールハインツさんが更にニコニコしよります。カールハインツさんは、お仕事で観葉植物としての竹を扱いよって、その関係で、この日本唯一の虎竹の山に来られたがですぞね。ヨーロッパやアメリカでは竹が少なく、竹を植栽として使うたり、観葉植物として鉢植えしたりする事は日本よりも盛んに行われているようながです。そういえば前にシアトルからも、竹の観葉植物専門の会社の方々が見学に来られた事もあったがです。


竹虎工場


けんど海外の方と言うても、さすがに竹を扱うお仕事をされよります。質問の内容をお聞きさせてもらうだけでも、竹への愛情や、竹の知識の深さほ感じるがです。まっこと日本の方でも、あまり気にしないような細かい質問にちっくと驚きながら、嬉しくもあるがぜよ。いつも近くで見ていて身近に感じる事のできる日本より、欧米の方が竹に対する関心は高く、また評価もしてくれちゅうようですにゃあ。


虎竹矯め直し


淡竹(はちく)の仲間の虎竹が、どうやって独特の虎模様を出すのか、曲がった竹が矯正されるのか、竹をガスバーナーで熱して真っ直ぐにしていく矯め直しの工程を説明させていただきます。


虎竹


ご自分で四ツ目垣など簡単な庭垣を作る事もあるというカールハインツさんに、日本の本格的な袖垣の工程もお話しようと竹を細かく割っていく巻き竹の説明もさせていただいたがです。けんど、やっぱり言葉というのは大事ですちや。通訳の方のお陰で、大体の事はお伝えできたように思いますけんど、専門的な事になってきますと大変な部分もあったかも知れません。まっこと難しい通訳をありがとうございました。


竹皮草履


ちょうど竹林では筍が生えている最中でしたので、こじゃんと良かったと思うがです。と言いますのも、種類は多少違うたりしちょりますが、筍が成長する過程で落ちる竹皮を見ていただきましたので、その竹皮を使うて作られる竹皮草履や竹皮スリッパをより深く理解してもらえたと思うがです。


竹は、根から稈から枝、葉、そして竹皮まですべてを利用しつくして、色々な手を加え生活の中に取り込んできちょります。けんど、現代ではもしかしたら竹皮ひとつ取っても、キッチリとイメージできる方は少ないかも知れませんちや。だから、ちょうど竹林で竹皮が剥がれそうな所を実際にご覧いただけたのは、タイミングもよかったにゃあと思うがです。


竹皮草履28センチという特大サイズはもともと作っていませんでした。海外への友人にプレゼントしたいから少し大きなモノができないか?実は、そんなお客様のお声で誕生した製品ながです。カールハインツさんにもドイツに帰ってご自宅でお使いいただけたいと竹皮草履をお持ち帰りいただきました。今頃は、もう使いゆう頃やろうか?足を入れる度に、あの日本唯一の虎竹の風を思い出してもらえたらこじゃんと嬉しいにゃあと思いゆうがです。


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