下駄は高さのある歯下駄か、右近下駄か形が比較的シンプルなものです。素材が桐だったり杉だったり、あるいは仕上げで白木とか焼き磨きとか、ある程度の違いはあるものの、それほどの違いがあるわけではありません。けんど、下駄の表、つまり足をのせる部分には、まっこと色々な加工がされ少しでも履きやすいようにと、職人さんが試行錯誤されてきた生活道具ながやにゃあと思うがです。
竹虎で言うたら、もちろん真っ先に日本唯一の虎竹を張り付けた虎竹下駄や、熟練の竹皮職人さんに台に合わせて編み込んでもらった竹皮下駄などが思いうかびます。また、八割(やつわれ)と呼ばれる底の台に切れ目が入っちょって、それぞれのパーツに別れた形でソフトな歩き心地の下駄など昔の逸品を復刻させて、より歩きやすくしたものもあるがです。下駄の台には別の素材を張り付けるという他に、彫りを入れた下駄なども見かけた事がありますし、もう随分前の事ですけんど青森の職人さんに東北弁で寒い地方の手仕事について色々教えてもらった時に、山葡萄のツルをしっかり編み込んであしらった下駄を履かれていて、ええっ!?と驚いた事がありますぜよ。
そして、またこれも珍しいものではないかと思いますが、アケビ蔓を使うた下駄を拝見させてもらいましたぞね。アケビ細工と言うたら手提げ籠をまず思い出される方が多いのではないろうか?手提げ籠に良く使われちゅう蔓よりも細く、編み込みは緻密です。女性用しかないものですき履き心地を想像してみるがですが、足裏に細やかな蔓の刺激があって特に夏は最高ですろう。山葡萄の下駄といい、アケビの下駄といい、こんな個性派の下駄は、好きな方にはたまらないモノながです。
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