保坂紀夫さんに初めてお会いさせていただいたのは27年くらい前の事やろうか。もしかしたら30年近く前になるかも知れませんぞね。それくらい前にお会いさせて頂いちゅうのに、その竹の独特の造形が強烈な印象となって今だに心に焼き付き、ビックリして声も出なかった事を今でもハッキリ覚えちょります。保坂さんご自身の、スマートで鋭い感性を感じさせる風貌そのものもずっと忘れる事ができずにおりましたきに、まっこと暫くぶりにお会いしたのでお歳は召されちょりますが、あの数十年前の雰囲気そのままで全然違和感がないがです。
ずっと思いよりました。あのインパクトのある竹の世界が、いつか自分の中でもっと違う受け止め方ができるようになったら、もう一度、あの世界に飛び込んでみたい。保坂さんとはあの時から一回もお会いさせてもろうちょりませんが、
だから、ずっと心に留めちょりましたし、何年か前にいただいたダイレクトメールもホルダーに入れたままやったがぜよ。
遂に改めて作品を拝見させていただく機会を頂戴しましたぞね。保坂さんに八ヶ岳にある竹の造形美術館にご案内いただきましたけんど、よくよく考えて見たら山梨県は初めて来たかも知れんちや。富士山を太平洋側からしか見た事がなく、実は反対側から見た富士山の方が美しいそうながですが、今回初めて見たような...。
保坂さんの竹アートは、形の面白さやアイデアの斬新さも素晴らしいけんど、その真価は暗闇の中、灯りがはいると更に際立つがぜよ。壁にこぼれる竹灯りは無数の蝶が舞うようながです。凄い世界観に引きづりこまれますちや。さらに別の作品では、いつもの竹林に自分がいるかのような。そんな錯覚すら覚えそうになって、ついつい前のめりになった灯りもありますぞね。
周りに竹細工があまり無かった事が、独自の竹を展開できている最大の理由だとお話されよりましたが、竹のクラフト作家の方が作られるようなしっかりした竹編みの技術は、九州などにも出かけていって習得されたそうながです。大作の竹オブジェを手がけられるのは、このような確かな技術の下地があってこそですろう。
竹文化のあまりない土地柄におられながらも、こうやって竹に魅了され、今度は竹で人を魅了されちょります。竹の奥深さを感じずにおれんがですが、この数十年、国内外の竹を扱う職人や作家の方々には、意識する、しないに関係なく、こじゃんと影響を与え続けている保坂紀夫さん。30年近く前に出会った衝撃を今回も、そっくりそのまま感じたがです。
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