自分達では当たり前と思うて、ついつい何も言わず過ごしてしまう事があるがです。言わなくても見れば分かってくれると思いよった事もありました。けんど、違うがぜよ、言わんと誰も知ってくれませんちや。知らないという事は、その価値が伝わらないという事ですろう。
「こんなにエイものやのに、どうして誰も買わんがやろうか?」
デパートに売り出しに行き始めた頃に都会の方が虎竹を見て、何の反応も示さないので不思議でしょうがなかったがです。イギリスのBBC放送が取材にくるような竹が他にもあるがやろうか?都会では竹はありふれちゅうきに別に関心がないがかにゃあ?東京や大阪には何でも売りよりますし本気でそう思うた事もあったがです。けんど違うちょった、今の日本人は竹を知らんだけやった。知らんというより、ちっくと忘れちゅうがぜよ。
竹に枝がある事くらいは誰でも知っちょりますけんど、その枝をナタではらうと竹表皮も取れてしまいますぞね。虎竹は表皮の独特の虎模様が命やきに、ナタではなく、鋸で枝の付け根に切り込みを入れて丁寧に取っていきます。これを目払いと言うけんど、こんな自分が小さい頃からずっとやりゆう。いやいや、恐らく日本のあちこちに竹屋さんがあった昔なら結構普通の事でも今は誰もご存じではないがですぞね。袖垣にしても実は細く細く割った竹を孟宗竹の芯に巻き付けて作っちょります。竹の節を少しづつズラして模様にしてあるのですが、そこまで詳しくご覧になられる方はおられないがです。一本の竹を使うて製造されちゅうと思われる方がほとんどちや。
どうして一本の竹ではダメなのか、わざわざ手間のかかる工程が必要か、だから使う方にとって何のメリットがあるのか、山の職人さん含めてひとつの竹製品に関わっちゅう沢山の人の手の事をお話させてもろうたら「なるほど、この価格というのが分かる」と、少しづつお分かりいただけるようになり、もしかしたら竹の事をちっくとでも好きになってもらえるがではないかと思うちゅうがです。
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