所ジョージさんが出て来られた時にはまっこと夢かと思うたぜよ。そりゃあ、そうちや、約束も何ちゃあせずに突然押しかけて行ったがです。東京は世田谷区の閑静な住宅街。まさか居られるとは思いもせんかったけんど、いやいや、日頃の行いやろうか?お会い出来て、まっこと幸運やったぞね。
そもそも3月に「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」というテレビ番組に取り上げていただいた事がキッカケやったがです。ああ、そう言うたらあの時も、たまたま放送局まで送り忘れちょった虎竹茶を届けに行って、そしたらせっかく来たのだったら他の出演者の皆様と一緒にスタジオ収録していきやと言われて、そこで所さんとお話させていただいたのが始まりぜよ。
番組の中では、いろいろとご紹介いだたきましたけんど、わざわざ高知まで2日間も取材にお越しいただいてメインで取り上げてもろうたのが空気清浄機「竹風」やったがです。その時はテレビのお陰もあって売り切れになってしもうちょりました。ちょうど竹製品の製造は春先からアレコレと忙しくなりますきに、大急ぎで製造して2ヶ月程度かかって、ようやく完成したがぞね。
まあ何ちゃあ、お届けする言うたち、宅急便さんにお願いしたらエイものながですが待ちに待って、ようやっと出来上がった竹の空気清浄機やし、こんな機会はもう二度とないろうき、何とか自分の手でお届けしたいにゃあと思うたがです。届け先の場所を確認してみたら、テレビで拝見した事がある、あの世田谷ベース言うところのようやったがです。所ジョージさんの趣味の車や遊び道具を詰め込んだオモチャ箱みたいで、おまけに畑まであって野菜を栽培されゆう面白そうな所ながですぜよ。
けんど、自分のような田舎ものにしたら全くの別世界です。所さんは普通から言うたら考えられないような忙しさですろう、恐らくご不在のハズやし、のこのこお届けに行ってもエイものやろうか?実際に持っていく段になって、そんな考えもよぎりましたちや。あれこれ考えだしたら、まっことキリがないがぜよ。そこで、考えても答えが出ん事は、やるしかない。いつものやり方と言うたら、いつもの自分のやり方やにゃあ。とにかく、持っていく事にしたがです。
ところが、はじめて行く所やし、道路事情も分かりませんので朝早めにスタートしたのはエイけんど、そしたら、休日のせいか思うたより渋滞もなく、迷うかもと思いよった心配をよそに意外に分かりやすく早く到着したがですちや。日曜日の朝、このあたりの街並はきれいで、静かやにゃあ。ピンポーンの音だけが聞こえては消える、聞こえては消える。何度かやっても何の応答もないきに、あきらめようと思うて空気清浄機を車に積み込んだ、その時...、
「ププッ!」車のクラクション、もしや!?
慌てて振り返ったら、そこにっ...いやいや、ただ車が鳴らして通りすぎただけやったぞね。あきらめて帰るか...。来る途中にクロネコヤマト便さんのトラックが停まっちょりました。あのドライバーさんに近くの営業所を聞いて荷物を預けたらどうやろうか?今回、車の運転をお願いした友人とそんな事も話しながら、ひとまず早めの食事に向かう事にしましたぞね。そもそも最初から所さんにお会いできるとは思うちょりませんので、箱の上には手紙を貼り付けちゅう。このまま伝票貼って送ることもできるろう、そう思いよったがです。
さて、帰りの飛行機の時間もありますきに後一回だけ立ち寄らせてもろうて、ご不在やったら残念やけんど宅急便さんにお願いしようかにゃあ。そう思いながら世田谷ベースまで来たら思わず笑みがこぼれましたぜよ。まっことラッキーじゃあ!!!!!朝来た時には閉まっちょった窓が開いちゅうぞね。これは、誰か居られるにゃあ。
小走りに行ってピンポーン鳴らします。けんど何度やっても、やっぱり反応がないがです。おかしいにゃあと思うて耳をすましたら、興奮しちょって気がつかんかったけんど何やら音楽がガンガンかかっちゅう。開いた窓から漏れ聞こえよりますが建物の中は結構な音量のようやったがです。こりゃあ、ピンポンが聞こえちょらんにゃあ。
そこで、音が途切れた瞬間にピンポン鳴らす作戦に切り換え、けんど、一体何の音楽聴かれているのか?全然音が途切れないがです。何度か音が弱まった時に鳴らして、弱まった時に鳴らして、そうしよりましたら、ようやく中の方が気がついてくれました。
「門のとこに、誰かいるなあ!?」
門が高いので手だけ中の方に見えるように振って、
「おります!おります!怪しいものではないですきに、竹虎やきに!」
キュルキュルキュル......と電動門が開いたら、なんと、そこには所さん。
こうして無事と言うか、運良く空気清浄機をお届けできたがです。ラジオか何かの音かと思っていたのは所さんが作曲されよった音でした。歌声も聞こえていましたけんど、ご自身が歌われていたので、ドアホンの音が聞こえなかったそうながです。作曲いうたら神経を集中させてやる仕事ですろう。途中に邪魔が入ったらイヤなものですろうに、そんな素振りは微塵も見せる事もなく、まるで待っていてくれたかのような歓待に感動したがです。そうそう、「車を中に入れろよ」と声をかけてくれた時など、自分が行くのがを知っちょったかと思うた程ながです。
まっこと所さんはテレビの画面からも伝わってくる印象そのまま、気さくで自然体の方やちや。自分のような田舎者が気軽にお話できる方ではないと思いながらも、気兼ねなくお話させていただける不思議な雰囲気を持たれちょります。
所さんが「ちょっと待ってろ」と言うて何とコーヒーを入れてくれたがぜよ。このコーヒーは旨かった、忘れられない味になった。何をやっても中途半端な自分がインターネットに取り組み、やっぱりダメな男は何をやってもダメやと周りの皆に馬鹿にされ、相手にされない中で何とか目標額を達成した十数年前の朝、父親が黙って入れてくれたコーヒーと同じ最高の一杯やったです。
ゴールデーンウィークの真っ最中に、世田谷ベースの温かい陽射しの中、椅子に座って過ごせるとは、なんと贅沢な時間やろうか、感謝しかないぜよ。
「これ、竹虎で買って使ってるよ」持ってこられたのは市場かご。プロの料理人の方にも人気の軽くて丈夫な竹手提げ籠ぞね。使うほどに飴色になり風合いの深まるこの籠を、所さんは機能性が気に入って仕事に行く時などに使われゆうそうながです。さすが、本質を見られちゅうがぜよ。そして、いっつもジーンズにアメリカの車とかバイクとか、海外のものをセンスよくライフスタイルに取り入れられる印象のある方やのに、こうやって質の高い日本の竹編みを選ばれる事にやっぱり日本人には竹のDNAが入っちゅう事を改めて感じて、またまた親近感が湧いて、こじゃんと嬉しくなったがです。
けんど、せっくの籠に文字入れしちゃあるのは、どうしてですろうか?しかも「97」とは?まさか、97個目と言う事?いやいや、スズ竹市場籠は一生モノそんなに使えるハズはないきに。そう思うて聞いたらなんでも数字をアルファベットに当て字にされちゅうそうぜよ。「9=G」「7=T」つまり「G.T」でご自分のお名前を書かれちゅうとの事。この籠ですら自分色にしてしまうのが所さんながですろう。素晴らしく幸運な日曜日やったです、ありがとうございました。