これは流石に、こじゃんと目につくがですぞね。天井の梁にポツリと竹籠が飾られちゅう。不思議に思うて聞いてみたら梁にネジか何かが飛び出しちょって、その目隠しに被せちゅうとの事やったがです。
けんど、これはなかなか渋いぜよ。一体どれくらい前に作られた竹編みやろうか?口巻きの赤茶けた色合いなどをご覧いただいたなら、実はこれが出来上がったばかりの時には青々として、香りたつような竹やったと想像できますろうか?経年変化などと言われますけんど、使いやすく耐久性の高さを求めた生活の道具としての竹は、時間の経過が編み目に刻まれるようで、まっこと見れば見るほど魅力的な籠が多いがぜよ。
日本唯一の虎竹にしろ、白竹や晒竹(さらしだけ)と呼ばれる白い竹などにしても、油抜きという製竹加工をしちょります。ところが昔から台所など生活の中使われてきたり、農作業や漁業用など仕事や作業に多用されてきた籠は、見た目の美しさより生産性や使い勝手や丈夫さを優先させてきたがです。そんな竹細工は、青竹をそのまま割って竹ヒゴにして編んでいきますので、青物細工と言われ、職人さんの事を青物職人と言うがぞね。
熟練の青物職人さんの工房の片隅に、長年連れ添われゆう奥様が石鹸入れに使いよったがやろうか?流しの所に置かれちょった竹籠が、これまた渋い味わいで何かこちらに話しかけてきゆうような気がして目にとまります。前に見た梁に使われちょった竹籠と、色の枯れた風合いのこの竹籠との共通点が分かりますろうか?両方とも、もともとは単体で使われるものではないがです。単なる竹笊のようにも見えますけんど実は魚籠の内蓋ながぞね。
長い間に本体が壊れたり、無くなったりしたそうで、それでも内蓋は十分使えるので、ずっと使いゆう。自分達が丹精込めて手をかけた竹編みです。こうやって大切に最後まで使い切るがも一流の竹職人ぜよ。
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