掘りごたつのようになっちょりますが、もちろんそうではないがです。青々とした竹が向こうにみえちゅうがですが、ここは青物細工と呼ばれる真竹を使う職人の仕事場ながですぞね。全国的に見ても、このような掘りごたつ式の工房はほとんどありません。ご自分の師匠のように教わった名人の職人さんのやり方に影響を受けて、それを真似られちゅうとの事やったがです。そう言うたら一箇所だけ、別の職人さんの所にお伺いした時に、同じような構造をされたちょったのを思い出しましたぞね。そこで、聞いてみたら実は同じ作業場を見られて学ばれたとの事でしたので、まっこと限られた職人さんだけの工夫のようながです。
竹細工の場合、長い竹ヒゴを扱いますので、イスに座ったりして自分が床から高い位置になるのは、どうも仕事がしづらいのです。そこで全国どこを訪ね歩いてみても、土間やったり、コンクリートであったり、または板張り、畳であったりと色々な場所ではありますが、基本的には床に腰をおろして仕事されるのが普通のスタイルぞね。この掘りごたつ式の穴に板を一枚はめこんで、座布団敷いて仕事されるのが、ここのやり方やと言われよりました。けんど、これなら胡座がくめなかったり、足の具合が良くない職人さんでも長時間仕事に打ち込めます。
竹細工は長い歴史があって竹伐りや竹編みの方法から始まり、様々な面において先人の方が色々な試行錯誤をされてきて今に致っちょります。その長い時間の蓄積の中でもっと広く色々な土地の、色々な仕事場で採用されちょっても良さそうなものやのにゃあ、ちっくと不思議に思うてもみるがですぞね。
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