試作の青竹ひしぎ籠

青竹籠


竹籠を編み込む場合に大切な事を職人さんに訪ねると、竹ヒゴ取りやと言われるがです。どんなに腕の良い熟練の職人でも籠の元となる竹ヒゴが良くないと、形も美しく、丈夫な籠を作る事はできませんぞね。だから竹職人の腕の良さと言うのは、竹ヒゴ取りの巧さと言いかえてもエイかも知れませんちや。


そんな熟練の職人が一本一本の幅、厚さが全て同じの細く繊細な竹籤で編む竹籠や竹ザルはため息が出る程美しいですが、同じ竹ヒゴの幅で編むのではなく少し竹幅に変化をさせても面白いのではないろうか?そんな思いで試作された青物と呼ばれる、青竹(真竹)の自然な色合いをそのまま活かして編まれた籠。


ひしぎ籠


何ちゃあ竹幅を変えて編まれた竹細工もあるにはありましたけんど、ここまで大胆な作りというのは、あまりなかったですろう。ポイントとなっちゃある幅広の帯のように見える編み込み部分、細かい筋が入っちゅうのがご覧いただけますが、丸みのある竹を平たく割りのばすヒシギを連想されるがです。


おっと、ヒシギ言うても、ご存じない方も多いですろう。丸い竹を細かい割目を入れて平たくするがですが、内装の腰張りに使われたりする事も多かったですし、自分達は昔から袖垣にずっと使いよります。


竹虎に入社した頃には大きな銀杏の木の下に、竹が一杯積み込まれた会社の分所工場がありましたぞね。そこには10名近くのおばちゃん達が仕事に通うて来てくれよって、毎日タンタン...、タンタン...と叩いていた竹ヒシギ。籠を手にしたら賑やかな笑い声と一緒にあの懐かしい音。風にのって聞こえて来たような気がして、春霞の焼坂の山を振り返ってみるがぜよ。


コメントする