古い背負い籠「かるい」

背負い籠(かるい)


宮崎県の日之影町は深い渓谷と高い山の連なる自然豊かな場所にあります。目の前で霧が強い風にあおられて流れて行きよります。そう思うたら、いきなり険しく真っ黒い山が姿を現す様に、まっこと近くに神話の古里、高千穂があるのも頷ける。何か神秘的なものを感じる土地でもあるように思うがです。


平地が少なく、急斜面の続く中での仕事や暮らしの中で、背負い籠も他の地域とは違う独特の形が生み出されちょります。この地方で「かるい」と呼ばれゆうがですが、側面から見ると逆三角形のような形をしていて、平地では自立しないものの、急斜面には置きやすく又、背負いやすい形ぞね。まっこと始めて見た時には、その独特な編み目と形にビックリしましたけんど、狭いようで広い日本です、同じ背中に担ぐという用途でも地域性に合わせて長い時間が籠を進化させてきたとも思いますので、それぞれ各地方の竹細工があって面白いがぜよ。


以前、熟練の職人さんの仕事をずっと拝見させて頂いた事がありました。手際よく見る見るうちに編み上げられていく、かるい。この横幅は、かっては全部違うちょったそうです。口の幅を背負う方の肩幅にあわせて作りよったからたど言われます。まっこと、それなら道が狭くとも、山深い場所でも歩きやすいろう。竹細工をその人、その人ように合わせて編みよったゆう事なのです。こじゃんと感動した覚えがあるがですが、おそらく、この話しは日之影だけでなく昔は日本のどこでも全く同じような事があったと思うかです。農家に竹職人さんが回ってきては泊まり込みで竹編みをしたり、壊れたザルや籠を修理をしたりする事は普通の事やったと聞きますので、その人や、その家庭、その仕事や生産する作物に合わせたそれぞれの要望に応じた竹細工を作りよったはずながぞね。


そうそう、そう言うたら前にもお話させていただいた事がありますが、自分の小さい頃には虎竹の里にも木工細工の職人さんが竹伐り職人さんの自宅の納屋に通うてきては、キンマと呼ばれる竹を運ぶためのソリを作りよりましたぞね。今ではそんな光景に出会う事もありませんので、小さい頃とは言うても、あんなモノ作りの文化を目にできた事、そして、現在でもそんな昔ながらの職人さんに自分がお会いできた事が幸せながです。


この背負いかごは、かって小学校のランドセル代わりにそれぞれの子供が背負って通学されていたと言います。こんな格好のエイ、かるいを背負い、沢山のチビッ子達が歩く姿を一度見たかったものながです。逆三角形になっちゃある、かるいの形は学校でも重宝されちょりました。ランドセルの中の教科書やノートを机に出した後は、教室の隅に重ねて置かれて場所をとることもなかったそうながです。


いやいやけんど、皆が同じ形のかるいやったら間違えそうやにゃあ。そんな思いよったら、実はお母さんがそれぞれ違う生地を使い、かるいの背負い紐を作ってくれちょったきに、自分の籠と、友達の籠を間違えることはなかったそうぞね。お母さんの愛情のこもった手作り紐と伝統の竹籠を毎日背負うて行けよった子供たち。まっこと、どれほど幸せな時代やったろうか?壁に掛かった古いかるいは何ちゃあ言うてくれませんれんど、優しく笑いかけてくれゆう気がしましたぜよ。


虎竹イヤリングたち

虎竹イヤリング(巻)


虎竹のイヤリングが出来ちょりますぞね。竹は軽いし、虎竹など面白い模様があるので個性的なアクセサリーとして、お使いいただけるがではないかと思うがです。さて、そこで今回は3種類の形を並べて見よりましたが、ううん...どんなネーミングにしたらエイろうか?あれこれ考えよりましたけんど、コレというものを思いつかないので、今回は初めての試みとして社内で名前の公募をしてみたがです。


そしたら、いやいや、やって良かったですちや。竹虎は社歴だけは長いですきに30年以上も勤めてくれゆう方もおるがです。自分達では気が付かんかったですけんど考えたら、毎日のように竹に触れゆう竹のプロがゴロゴロしゆうがです。なぜ早く気がつかなかったろうか?と思うくらいですちや。商品の名付けを考えんとイカン社員は大変やったと言いますけんど、まっことそれぞれ人の見方の違いがあって面白い。自分も発想の転換になりましたし。


結局、「巻」に名前の決まった虎竹イヤリングですけんど、普通に見たら特徴的な部分はグルグル巻かれたところかにゃあ。けんど人によったら小鳥にたとえたり、ハイヒールのように見たり、扇や筍に見えたり、また、虎竹の里や高知の自然や人から名前をとったり、沢山の意見を出してもろうたがです。


虎竹イヤリング(鞠)


丸い手鞠から「鞠」と呼ぶことにしたものも、和み、凛、雫、雪、舞、やちゃらくす玉、こんぺい糖、つぼみ...まっこと書ききれないくらい色々と名前のアイデアを出してもろうた物もあるがぞね。


虎竹イヤリング(結)


見た目そのままの「結」にしたイヤリングは形からか一番ユニークで、お菓子のプレッシェルや洋梨、オイスター、銀杏、ムール貝、しずく、せせらぎ、陽だまり、ともし火、尾長、クレオパトラなどなど、同じ虎竹細工を見てもこれだけ豊かな発想があるがです。まっこと今回は勉強させてもらいましたちや。社員の皆さん、本当にありがとうございます!


雑誌「Realitas(レアリタス)」さんの取材

雑誌「Realitas(レアリタス)」さんの取材


「Realitas(レアリタス)」は日立製作所さんが発行されゆう雑誌で、取材のご依頼をいただいた時に見本誌を数冊いただきましたけんど、日立さんというイメージから最新のIT器機や経済の話しばかりかと思いきや、音楽やファッションなど、その道の達人に着目した記事があって、自分のような者にも読みやすく、こじゃんと面白いがです。


アルティザンの仕事場という特集で日本伝統の手作りを紹介されちょります。確かフランス語で職人という意味の言葉やったと思いますが、今回その特集コーナーで竹虎をご紹介いただけるとの事でしたので、取材をずっと心待ちにしよったかです。カメラマンや文章を書かれる方、日立広報部の方など4名の方が2日間の日程で遠く東京からお越しになられちょりました。自分達のような田舎の小さな竹屋を取り上げていただける事は、いっつも感謝しても感謝しきれないほど有り難い事やと思うちゅうがです。


虎竹油抜き


ガスバーナーの油抜きの加工をしゆうと、糖分の多い竹から甘い香りが工場中に漂います。自分達は当たり前と思って育ってきた、こんな事から始まり、日本唯一の虎竹の模様の事、矯め作業の事、そして、竹の枝の付け根の部分を丁寧に取り除く目打ちの事なども色々とお話させていただいたがです。


虎竹縁台


一番嬉しかった事は雑誌取材を取りまとめられる方が、前々から竹虎の商品をご購入いただいた事のあるお客様であり、竹細工を大好きな方やったと言う事ながです。竹のある生活が普通やった時代を知るご年配の方だったり、何かのキッカケで竹を知るようになられた今回のような方もおられるのですが少数派ですろう。多くの方は竹には関心は薄いし、竹製品を使う事もないかと思います。


虎竹林


けんど、竹虎に来ていただく若い社員でも、虎竹の里に来て始めて竹林に入り、その気持ち良さを知り、竹細工に触れ、竹製品の囲まれる中で竹を好きになって毎日のように使う一人になる事は多いがぞね。同じように、製造工程をご覧いただいた虎竹の縁台も、今度の取材に来られてはじめて知るようになって、個人的にも、こじゃんとお気に召して頂いた事に自分も感激しましたが、竹ほど身近で、成長が早く、様々な加工に便利な素材はないですきに、日本人と竹というのは長い長いお付き合いがあって、こじゃんと深い関係が今も続いちゃあると思うがです。竹を「知る」ではなく「思い出す」ではないろうか?現代の生活の中で忘れちゅうだけではないですろうか?


雑誌「Realitas(レアリタス)」さんの取材


竹林への登り下りは細く急で滑りやすい山道ですちや。ハーハーと息を切らせて登るのも大変やけんど、慣れていない方には帰りが更に大変。膝に負担もかかりますし、おそるおそるで時間もかかるぜよ。手ぶらでもキツイというようなこの道を、生しくてズッシリと重たい竹の束を肩に担いで、竹の職人さんは下りていくがです。その苦労が、ここを歩くと少し分かって頂けるかと思うがです。


百年竹の切り口

煤竹


煤竹(すすだけ)の事はもしかしたら、たまに聞く事もありますろうか?囲炉裏が暮らしの中心にあった昔だからこそ生まれた竹ながです。茅葺きの民家の屋根裏には竹が多用されちょりましたけんど、そんな中、百年というような長い時間、煙に燻されて自然にできた風合いの竹ぞね。だからガスや電気の行き渡った現代では減る一方ちや。煤竹箸や茶華道竹器に使われる銘竹として扱われてちょりますが、普通の生活では、あまり見る事も出来なくなっちゅう竹でもあるがです。


これからは希少価値は高まるばっかりの煤竹です。竹虎でも古民家からいただいて来たままの状態で保管しちゅうがですが、職人さんの工房に行って拝見させてもろうても、皆さん、すぐに何かに使う予定がなくともご自分の竹細工用として使うだけは大切に持たれちゅうようですぞね。


ところが煤竹は、ちくと厄介なところがありますちや。百年、百五十年前の竹も珍しくはないですので、長く経過する中で、本来の竹のもつ粘りや加工のしやすさが無くなってしもうて、いざ、使う段になって竹ヒゴに出来ず全く使えない事もあるがです。


さて、ここで拝見させて頂いた煤竹も、かなりの渋い色艶やにゃあ。これが一体どんな竹製品として新たな命を吹き込まれるのか。周りの作品を見回しながら考えたら、まっことワクワクしてくるがです。けんど、さらに感動を覚えるのはこの切り口ぞね。ナタで見事な程、勢いよく切られた切り口も煤で真っ黒やけんど、この竹が百年前としたらこの切り口を作った職人さんは百年前の方。美しい切り口を眺めながら百年前の仕事ぶりを想像しよったら、忙しく働く人達の荒々しい息づかいまで感じそうぜよ。


歩み寄る両者

虎竹と白竹


新しく作った虎竹白三本手提げ籠は虎模様の入った虎竹に、白竹の持ち手を組み合わせたツートンカラーの籠になっちょります。もちろん虎竹で全て仕上げたものも試作をしてみましたけんど、近年虎竹の太い竹というのが少なくなってきて持ち手にも小振りの竹を使うたがです。そしたら、やはりどうも持ち手の感触が良くないがです。三本手と言うても、真ん中に通るメインの竹は太いしっかりしたものを使いたい。白竹だけで仕上げられた籠と持ち比べたり、使うてみたりして、結局自分が使いたいと思う白竹持ち手に落ちついたがです。


白竹手提げ籠


虎竹に白竹というのは今まであまりなかった竹籠には間違いないがぞね。職人さんも編んではみたものの、あまりエイ顔はしちょりません。虎竹は虎竹で、白竹は白竹でと言うがです。まあ、けんど竹細工と言うものは、出来上がったばかりの時が一番美しいものではありません。あの清々しい香り立つような青竹細工でさえ色が段々白っぽくなり、時間の経過とともに深まってくる竹の風合いに味があり、本当の美しさがあるがです。


虎竹であっても白竹であっても、ずっと編みあがった時のままではないからこそ竹は価値がありと思います。虎竹の色合いが落ち着いていき、白竹は飴色になっていき、まるで、意見の正反対だった人たちが月日を重ねて歩み寄るかのような、そんな竹籠になるがではないかと思いゆうがです。もしかしたら、そうなった時に初めて虎竹と白竹が馴染んだ、ひとつの竹籠として出来上がるがやろうか?そんな日を想像しながら気長に待つとするがぜよ。


美しい竹林、NHKテレビ番組「美の壺」

若山農場


NHKのテレビで放映されよります「美の壺」という番組はご存じですろうか?あまりテレビを見る事は少ないがですが、スイッチを入れた瞬間に旬の美味しそうな筍が映っちょりましたので、あれれ...と思い拝見させてもろうたがです。


京都の竹林の美しさには目を見張るものがありますけんど、一つは竹の先端を切り飛ばして竹葉の量を少なくして、太陽の光が土に当たりやすくしている事。そして、更にその上に竹林の手入れでよく言われますように、傘を差したまま通れるくらいに竹を間引いちゅうこと。こうする事により、ますます日差しが入りやすく風の通りやすい竹林になります。


地面にワラを敷き詰め土をかぶせる手間なども柔らかい土壌をつくり、生えやすくするための産地ならではの技法の一つですぞね。さすがに、こうやって畑のように育てたら美味しい筍が生産されるはずぜよ。そして土入れされた地面に青い孟宗竹が、こじゃんと映えますちや。長い時間をかけて美味しい筍を作ろうと手入れされる事が、見た目にも美しく、心地よい竹林を産み出しちゅうと思うがです。目で美しい竹を眺め、耳で竹の葉音を聞き、手で竹の感触を確かめ、鼻で香りを、そして舌で味を感じる...映像を見ながら、竹は人の五感を全て使うて楽しむものやにゃあと改めて思うがです。


竹林


それにしても竹を研究されゆう先生から、筍を採りに行かれる職人さん。はたまた造園用に竹の品種改良に取り組まれる農場の方まで、思いがけず存知あげちゅう方ばっかりが登場されて面白かったです。けんど、その中でも栃木県にある若山農場さんは、竹の品種改良にお父様の代からずっと取り組まれゆう造園家ながです。品種改良と一口に言うても竹が花を咲かせ種をつけるのは60年に一度とも120年に一度とも言われる時間のかかるものなので、ずっと竹に取り組む若山さんの熱意には頭が下がる思いですぞね。


農場内に広がる美しい竹林は筍のシーズンには、沢山の方が来場されて賑わうそうながです。普段は竹に親しむことの少ない皆様もここの素晴らしい竹林にふれ、さぞ心癒される一日になる事ですろう。整備された道路伝いに歩くだけでも最高に気持ちのエイ、日頃は体験できないようなウォーキングを楽しむ事ができるがです。高知や九州など温かい地方やったら、二十数メートルにも成長する事のある孟宗竹もここでは背丈が低く都会の空間に適したサイズになっちょります。東京のビル群の中にゆれる竹林に出会うたびにまっこと、ここの竹達を思いだすがぜよ。


笠の骨

笠の骨


竹皮と言うのは筍の皮の事で、一日に1メートル以上も伸びる事もある。驚異的な筍の成長スピードの中で剥がれ落ちたものを集めて使うがです。この竹皮を使う竹虎で代表的な竹製品というたら竹皮の草履ですけんど、実は、昔やったら竹皮の抗菌性を利用して全国各地どこででも、オニギリなど食品の包材として使いよったものながです。今でもお肉屋さんで竹皮を使いゆうのを見かける事がありますぞね。


竹皮が、あまり使われなくなった現在では国産の竹皮いうたら、ほとんど見ることはできませんろう。人の手入れを必要とせず、毎年ドンドン生える竹ですきに、この竹皮が活用される事なく朽ちていく事はまっこともったいない話しなかぜよ。そう言うたら竹皮を使うた、まんじゅう笠と言われる丸いおまんじゅうの様な昔から高知で作られる笠がありましたぞね。その丸い形の笠は竹皮で形作られちょりますが、その形に沿って細く細くヒゴ取りした竹を、何周も何周もグルグルまわりながら留めていきます。坂本龍馬が被って脱藩したので脱藩笠とも言われる事もある笠ですけんど、ひとつ仕上げるのにも、こじゃんと手間暇のかかる細工ながです。


竹の笠などは作られる職人さんもご高齢になられてちょりますので、高知で見る他はないかと思いよりましたけんど、ありゃあ?この形は笠しかないみたいなけんど...。意外な職人さんの工房で見かけて聞いてみたら、おおの嬉しいちや、やっぱり笠でしたぞね。時代劇に使うなど、本当に特別な用途しか無くなったと言う笠ですが、たまには、製作される事などあるがですろうか?けんど、別に笠にならなくても既にこの笠の骨だけでも、立派に自分の主張をしゆう一人前の竹のように思えてくるがです。


青竹蕎麦ざるについて

青竹蕎麦ざる


高知はもうすでに暑いだけでなくて、「蒸し」暑い日があったりしますちや。初夏のような日差しや、梅雨時を思わせるような気候の時には、やはり、青竹のような清々しい竹の話がエイがではないですろうか?


まあ、そう言う事で昨日の青竹抱き枕に続いて今日は青竹の蕎麦ざるですぞね。青竹(真竹)は、熱湯で油抜きをする湯抜きという工程を経て、天日に当てて乾燥させたら白竹になる竹ながです。太陽の日差しに晒す事から晒し竹とも呼ばれますが、自分が小さい頃には京都や奈良など関西で訪問させていもらうお得意様の工場や、周りの田畑一面に、この白竹がズラリと並べられちょった事をまっこと昨日の事のように覚えちょりますぜよ、懐かしいにゃあ。


白竹のように油抜きをせずに山から伐り出したそのままを使う場合には、青々とした見た目にも気持ちのエイ竹細工になるがです。竹笊のように手のこんだ編み込みではなくとも、例えば、青竹を切っただけの青竹酒器や盛り器など、ああ、それから夏のイベントなどで大人気となります流し素麺竹。涼しさを誘いたい暑い日の食器としては、もって来いながぜよ。


ただし、青竹の器は切り口からどんどん退色していって、青々とした色合いは、まっこと一時のものながぞね。だからこそ、その自然の涼味を目一杯楽しまんとイカンがやけんど、青竹笊も同じ事、この色合いは段々と落ち着いてきて、使いゆう間に白っぽい感じに変わってきます。自然素材は、こういう経年変化に味わいを感じて愛でる事ができる。そんな楽しみ方をしていただきたい食器でもあるがです。


青竹抱き夫人(婦人)

青竹抱き婦人(夫人)


冷房のない昔から竹の抱き枕が使われてきたというお話は、何回かさせていただいた事があるかと思うがです。抱き夫人(婦人)などとも言われる筒状の細長い竹編みですけんど、竹のヒンヤリした特性、編み込みの中の空洞は風通しも良く、文字通り頭に使う枕にしてもエイですし、足をのせても気持ちエイ。いろいろ使うてみると、まっこと先人の知恵には感服してしまうがぜよ。


近年は温暖化とか言われちょります。実際、都会に暮らす皆様よりも田舎の自分達の方が、山や海や動植物の変化を身近に感じる事が多いかと思いますが、そんな環境への関心の高い方も本当に多くなり、エアコンは最低限にして出来るだけ自然な涼味を求める。そういう方が増えてきたのではないかと思うがです。数年前に比べますと、お陰様で少しづつながですが、竹の抱き枕の認知度も上がってきた言う事もありますろうか?本格的な夏が近づくにつれて抱き枕への問い合わせも多くなり、ボチボチと忙しくなりつつあるがですぞね。


けんど、先日ふと見かけた抱き枕がこじゃんと良かったちや。普通は白竹や竹表皮を薄く剥いだ磨きと呼ばれる竹で編み込まれるものが多いがですが、これは何と青々とした真竹でしたぞね。見た目にも涼しさを感じて、熱帯夜でもグッスリぜよ。ただひとつ、この清々しい色合いが長続きせんことが弱みというたらその通りながですけんど、インパクトあるぜよ、真夏の夜もドンと来いやにゃあ。


高知県立大学「"すごい"をつくる高知の企業」

高知県立大学「すごいをつくる高知の企業」


「"すごい"をつくる高知の企業」と言う小冊子が発刊されたがです。制作されたのは高知県立大学の「TEAM AERU」の皆様自分以外の誰か、そして新しい自分に「会える」と言う思いから活動をはじめられちゅうようながです。人と過去は変える事はできませんけんど、自分と未来はいくらでも変えられますきに素晴らしいと感激したがです。


ペラペラとめくっていきますと食品卸として全国的にも有名な旭食品さん、オーガニックで生姜栽培を手がける刈谷農園さん、四国主要10都市に展開される宮地電気さんなど、魅力的な高知の有力企業様が掲載されちゅうがです。そんな中に高知でも田舎の小さな竹屋である竹虎がどういうワケか特別企画講演会を開催させていただき、このような素晴らしい会社様と共に掲載してもろうちょります。


高知県立大学の講演では学生の皆様が中心でしたきに、日本唯一の虎竹の事はもちろんですが、竹は持続可能な地球にやさしい資源。高知にしかない不思議な虎竹珍しいだけでは売れない。自分のとんがり部分はなんだろうか?とんがればマイナスはプラスに変わる。すべては「一」から始まる。デパートで売れネットで売れるスゴイ竹―なぜか?究極のワンツーマンここにあり、情報発信力とは?―相手は「日本商店街」、「世に生を得るは事を成すにあり」―坂本龍馬。そらが自分にしかできないことか?「才能」とは、と言うような内容でお話をさせていただいたがです。


自分のような者が学生の皆さんにお役にたてる事があるろうか?前はそう考えもしよりましたが、社会人となってから回り道をし、迷いに迷って、こうやって今にたどり着いちょります。まだまだ、この先も大きな迷路が続いて行くがですが、少なくとも今までの紆余曲折については自分が体験したことなので、お伝えできるかと思うちゅうがです。


これから学生生活を経て社会に出て活躍される学生さん達ですけんど、在学中にこのような取り組みを企画され、仲間を集い行動されゆう事に心から共感して応援しよります。自分の学生の頃には、どこかの会社様に訪問に行くことすら、果たして出来たかどうか...。「"すごい"をつくる高知の企業」という題名ですけんど、まっこと凄いのは学生さん自身やにゃあ。本を手にして、つくづく思うがです。
 

魚籠の内蓋

魚籠の内蓋


これは流石に、こじゃんと目につくがですぞね。天井の梁にポツリと竹籠が飾られちゅう。不思議に思うて聞いてみたら梁にネジか何かが飛び出しちょって、その目隠しに被せちゅうとの事やったがです。


けんど、これはなかなか渋いぜよ。一体どれくらい前に作られた竹編みやろうか?口巻きの赤茶けた色合いなどをご覧いただいたなら、実はこれが出来上がったばかりの時には青々として、香りたつような竹やったと想像できますろうか?経年変化などと言われますけんど、使いやすく耐久性の高さを求めた生活の道具としての竹は、時間の経過が編み目に刻まれるようで、まっこと見れば見るほど魅力的な籠が多いがぜよ。


古い竹籠


日本唯一の虎竹にしろ、白竹や晒竹(さらしだけ)と呼ばれる白い竹などにしても、油抜きという製竹加工をしちょります。ところが昔から台所など生活の中使われてきたり、農作業や漁業用など仕事や作業に多用されてきた籠は、見た目の美しさより生産性や使い勝手や丈夫さを優先させてきたがです。そんな竹細工は、青竹をそのまま割って竹ヒゴにして編んでいきますので、青物細工と言われ、職人さんの事を青物職人と言うがぞね。


熟練の青物職人さんの工房の片隅に、長年連れ添われゆう奥様が石鹸入れに使いよったがやろうか?流しの所に置かれちょった竹籠が、これまた渋い味わいで何かこちらに話しかけてきゆうような気がして目にとまります。前に見た梁に使われちょった竹籠と、色の枯れた風合いのこの竹籠との共通点が分かりますろうか?両方とも、もともとは単体で使われるものではないがです。単なる竹笊のようにも見えますけんど実は魚籠の内蓋ながぞね。


長い間に本体が壊れたり、無くなったりしたそうで、それでも内蓋は十分使えるので、ずっと使いゆう。自分達が丹精込めて手をかけた竹編みです。こうやって大切に最後まで使い切るがも一流の竹職人ぜよ。


丸籠と祖父と

竹ざる


工房に足を踏み入れたら、これは嬉しい香りが漂いよります。青々とした編み上げられたばっかりの丸い深ざるが積み上げられちゅう。こんな力強い、迫力のある竹の仕事ぶりを今でも見られるとは...。けんど、ご縁やにゃあ、こんな遠くまで初めて来たけんど、まっこと、その甲斐がありましたちや。これは凄いですぞね、これほどとは思いもせんかったですちや。まっこと感激して、しばらく挨拶もできんかったぜよ。


年々少なくなる数少ない熟練の職人さん。手早く仕事をこなす本物の編み手の動きから目が離せませんちや。まったく無駄がなく心地よいリズムを刻みゆうかのようですぞね。はじめて寄せていただいた場所やのに不思議と馴染んでしもうて、思わずゆっくりしてしもうた竹細工の工房は、他の作業場と同じように結構広々としちゅうがです。


竹


今年に伐り出して来た竹は工房の脇に積まれちょります。竹は何と淡竹(はちく)ですぞね。全くいないという事ではありませんけんど、普通の青物細工と言うたら、真竹で作る事がほとんどですろう。恐らく昔からの用途の違いや、高知でもそうですが、身近にある素材が淡竹やったのかも知れません。


一般的には真竹の方が、粘りやしなりがあり節間も長いので、竹細工には使いやすいと言われますけんど、不思議なものですちや。ずっと淡竹を使うて来られた職人さんは、誰に聞いても淡竹の方が扱いやすいと言われますし、いくら良い真竹があると見せても、その竹を使う事はないがです。


十字割棒


広い工房は長い竹を運びこみ、割って、籤にして、そして籠やザルに編み込んでいくためのものぞね。まず十字割棒とも十文字とも言われる十字型の木をはめて、竹を四つ割りにしよりましたが、破竹の勢いとは良く言うたもので、パンパンッと勢いよく割っていきます。


十文字で竹割


この作業場に入った時から何とも懐かしい気分になっちょりましたが、なるほど、ちっくと合点がいきましたぜよ。もしかしたら、ここの竹の香りのせいやったかも知れません。実は虎竹も淡竹ながです、そして虎竹の里に育つ竹でも全てに独特の虎模様が付く訳ではなく「白」と呼ばれるいわゆる二等品があって、この竹は油抜きなど製竹加工されず、壁竹や柄竹用に使われよったがです。小さい頃から、そんな竹の端材で遊びよりましたので、いつも香っていた他では感じる機会のない淡竹の香りに。祖父がおって、50人も60人もの地下足袋姿のおんちゃんや、頬被りをしたおばちゃん達が忙しそうに行き交う昔の竹虎の工場に知らない間に帰っちょったようながぜよ。


青物職人


おっと、その長い竹ヒゴが宙を舞いゆうやいか。竹ヒゴをくねらしながら手早く仕上げていく竹ざる、やっぱりスピードは巧さやにゃあ。一日に何個編み上げるかを競いあい、磨かれた技は出来上がる籠そのものはもちろん職人さん自身が美しいぞね。出来るだけ大きな声で話しかけてみるけんど、自分の土佐弁が分かりづらいろうか?けんど何ちゃあない、ここでは言葉はいらんがぜよ。


竹職人


「いつも、そんな格好か?」自分の作務衣姿を見ながら、そう言う職人さんの作務衣はやっぱり流石ぜよ、身体にしっくりと馴染んじゃある。作務衣しか持ってないですきに毎日これやけんど年期が違うにゃあ。そこそこ着こなしちゅうつもりやったけんど、こういう方に出会うたら、自分がまだまだやと教えられるがぞね。


ひとつの竹籠を持ってみましたちや。ズッシリと手に感じるのは竹が生しいからだけではないがです。そう言うたら竹虎の工場には、ちょうどこんな手箕があったにゃあ。竹の切れ端やら切りくずやら一杯いれて、重たいものやきにお腹にあててリヤカーに運んだのはもう何十年前の事やろうか?祖父とおるみたいやにゃあ。まっこと、そんな気がしてきたがです。さっきまで差し込みよった西日はもう見えなくなっちゅう。


「それ一つ持って帰り...。」


手にした竹と向き合うたままポツリとひとこと。ずっと昔にも、こんな事があったように思うがです。帰ってからずっと考えよりました。


懐かしい竹の香


砂利道を息をきらして駆けていくと、古びた引き戸のガラス越しに着物姿でタバコをくゆらす祖父。裸電球の下のコタツの上には真っ赤な包装紙。その中を開けたら、欲しかった大きな大きなブリキの消防車。ああ、あれはクリスマスの夜の事やったか。


竹の道を登っていく

虎竹の里


竹の山出しも終わり静けさを取り戻しちゅう竹林には、ウグイスの楽しそうな歌声が遠くから聞こえてきよります。暑くもなく、寒くもなく初夏の陽射しが差し込んで今が一番最高の季節ながです。


けんど、こうやって山の仕事を続けさせて頂けるち、よくよく考えたら幸せな事やにゃあ。日本の山に価値がだんだんと少なくなって仕事もなくなって、人も少なくなる一方やったけんど、虎竹と言う不思議な竹のお陰で竹屋を続けられよります。山の幸を全国の皆様に届けられよります。都会と地方の溝が広がるばっかりやったのを、インターネットという光が自分たちを照らしてくれましたぜよ。虎竹の里に明かりを灯してくれましたぜよ。


いつもご愛顧いただく皆様、まっことありがとうございます!自分達は自然が相手の仕事でもありますきに、小さな人間の考えではどうにも成らん事があるがです。虎竹の里には課題も問題も山積みではありますけんど、曾じいさんから親子四代に渡って登ってきた竹の道を、これからも、ずっと登っていく。前しか見る事が出来んのは竹虎の血ですろうか。


竹工房の堀ごたつ

竹職人の堀ごたつ


掘りごたつのようになっちょりますが、もちろんそうではないがです。青々とした竹が向こうにみえちゅうがですが、ここは青物細工と呼ばれる真竹を使う職人の仕事場ながですぞね。全国的に見ても、このような掘りごたつ式の工房はほとんどありません。ご自分の師匠のように教わった名人の職人さんのやり方に影響を受けて、それを真似られちゅうとの事やったがです。そう言うたら一箇所だけ、別の職人さんの所にお伺いした時に、同じような構造をされたちょったのを思い出しましたぞね。そこで、聞いてみたら実は同じ作業場を見られて学ばれたとの事でしたので、まっこと限られた職人さんだけの工夫のようながです。


竹細工の場合、長い竹ヒゴを扱いますので、イスに座ったりして自分が床から高い位置になるのは、どうも仕事がしづらいのです。そこで全国どこを訪ね歩いてみても、土間やったり、コンクリートであったり、または板張り、畳であったりと色々な場所ではありますが、基本的には床に腰をおろして仕事されるのが普通のスタイルぞね。この掘りごたつ式の穴に板を一枚はめこんで、座布団敷いて仕事されるのが、ここのやり方やと言われよりました。けんど、これなら胡座がくめなかったり、足の具合が良くない職人さんでも長時間仕事に打ち込めます。


竹細工は長い歴史があって竹伐りや竹編みの方法から始まり、様々な面において先人の方が色々な試行錯誤をされてきて今に致っちょります。その長い時間の蓄積の中でもっと広く色々な土地の、色々な仕事場で採用されちょっても良さそうなものやのにゃあ、ちっくと不思議に思うてもみるがですぞね。


玉入れ籠の季節に

玉入れ籠


自分の世代やったら運動会の玉入れ競技と言うたら、竹の籠がすぐに頭に浮かんでくるがではないですろうか。近年ではネットなどを使うた新しい玉入れ用具があって、竹製の玉入れ籠は随分と忘れさられちょった時期があったがぜよ。


手業の仕事というものは、一度途切れたら次にやり始める事がこじゃんと難しいものですぞね。ほとんど不可能と言うてもエイくらいやちや。だから何とか、たとえ本当に小さな灯火であったとしても、玉入れ籠の伝統を続かしたいと思いながらきたがです。


竹と日本人はずっと長い間深い繋がりがあって、生活の中に、暮らしの中にいつも当たり前のように竹があったがです。昔の生活には逆戻りはできないと思いますけんど、竹を触った事もないような子供達や学生さんを知る度に、今の暮らしにも竹を感じていただくとしたらせめて運動会のような機会に竹籠と触れ合う事はエイ事ですろう。


玉入れ籠テレビ取材


運動会の玉入れ競技に使われる玉入れ籠などは、例えば背負い籠として、農作物の収穫や家の内外で毎日使われて来た、日本中のどこでも編まれていた代表的な竹編みの一つやろうけんど、昨年は東京からテレビニュースの取材が来らちょりましたので、全国的に見ても作る職人さんは少なくなってだんだんと知らぬ間に珍しい竹細工になってしもうたようですぞね。


元気な子供達に使うて頂けると思うたら、この玉入れ籠をお届けできるだけで自分たちは満足ながぜよ。運動会の季節だけのものではありますけんど、ご高齢の職人さんが多くなる中で少しづつ編み上げてもろうて、少しでも多くの小さな笑顔に出会える籠にしたいと思うちょります。竹職人の方が年齢にしたらビックリする程。若々しい方ばっかりなのは不思議でも何でもなくて、こうやって喜んで使うてくださる日本中の皆様のお陰ながですぞね。


ウケと鰻

ウケ


これは、こじゃんと美しいウケに出会うたがです。ウケとは「ころばし」とも呼ぶ事もありますし、地方によっては「うなぎぽっぽ」とも言う事もあるそうですけんど、鰻を捕るための筒状に竹編みされた道具の事ですぞね。けんど、自分達が子供の頃に使うて鰻を捕っていたウケと比べたら、竹ヒゴの緻密さ、形の華麗さ、まっことこれは芸術品の域ぜよ。これに餌のミミズを入れて、川に漬けて重い石をのせる...。ううん...考えるにゃあ、よう使うろうか...?


竹虎でご紹介しちょりますウケは地元の職人が編む、自分達が小さい頃にも実際に使うて鰻を捕りよったものと同じものぞね。当たり前に思いよりましたこの竹細工も、以前、大阪から研究者の方がビデオ撮影に来られちょりましたので、全国的にも編まれる方は少なくなっちゅうがですろう。まあ、そんな竹ヒゴも粗く、まさに鰻を捕るための漁具としてずっと昔から製作され続けてきたものですきに、ちっくと乱暴に扱われる事もありますし、真新しい竹の時にはどうも鰻の入りが悪いので、田植え前の田んぼの泥の中に沈めてわざと汚したりもしよった。


けんどそうやにゃあ、こうやってお話させて頂ながら遠い記憶を呼び覚ましよったら意外とあれですにゃあ。たとえこんな素晴らしい匠の技で編まれたウケであったとしても、自分達が鰻のシーズンには連日使いよったウケであったとしても川に入って仕掛けをしだしたら同じかも知れんぜよ。あの川のせせらぎと、川の香り、ちっくと冷たい水の感触。鰻の通り道を推し量りながら川底を探り、ウケを沈めちょってから少し滑りやすい川底の石を集めてウケにのせる。皆で川から上がって焼坂に沈みかける夕日を背に、明日の朝の釣果を思うてドキドキしだしたら、どうやろうか?


子供の頃のあの自然の中の大興奮は、今思い出しても素晴らしい経験やったですけんど、道具がこれほど違うたら鰻漁自体が変わっちょったかも知れん。もっとウケにふさわしい漁を追求したろうかにゃあ。いやいや、どうやったろうかにゃあ。朝靄の川に草をかきわけて行ったら、驚いた水鳥達が音を立てて飛び立っていくがぜよ。ウケを川底から引き上げてザザッーーーと水を抜く、上に下にウケを動かしてみた時に感じるズシリとくる感触。今でも手が覚えちゃある、あの鰻が捕れた時の嬉しい重みは、どんな道具でもきっと同じかも知れませんぞね。



アイス虎竹茶の感想

虎竹茶


虎竹茶は日本唯一の虎竹の葉をお茶にしちょります。竹葉を集めるのも冬ですし寒い季節に出来上がるものやきに、だいたいは熱いお茶としていただく事が多いがです。けんど、やっぱり南国土佐と言われるほど。暑い暑い高知の夏が近づいてきちょりますきに、お茶も冷たくアイスで飲んでほしいと思うちゅうがです。そこで先日は新虎竹茶をアイスにして、近くの女性スタッフに試飲してもろうたがです。やっぱり鋭い若い女の方の感性で見てもらおうと思うたがぞね。そしたら、思うたよりも色々な嬉しいお声をいただきましたちや。


お茶は少し熱すぎるかなと言うくらいの温度で飲むのが好きですが、やっぱり夏はごくごく飲めるようすっきり冷やしておくのが最適です。アイスで飲む虎竹茶は湯のみで飲む時よりもさわやかな味わいだと感じました。暑い夏は食欲がなくなってしまいがちですが、さっぱりとした虎竹茶と一緒ならご飯も美味しく食べられそうです。また、グラスに注いで綺麗な虎竹茶色を楽しめるのもアイスならではの醍醐味だと思います。


アイスの虎竹茶は香りや風味が更にキリッと引き締まって、一口飲むと口いっぱいに、竹林の涼しさが広がります。私は夏バテ対策にカレーや担担麺など辛いものを時々食べるのですが、味が濃くて辛いメニューは虎竹茶ときっと相性抜群、サッパリと美味しくいただけそう。暑い外から帰ってきた時やお風呂上りにこの一杯があったら、私は絶対嬉しいです♪


アイスで飲む場合、透明なガラスのコップに入れるということを絶対におすすめします。透き通った若葉のような色が透明なグラスにものすごく映えて、目だけでまず楽しめます。温かい虎竹茶とは違い、鼻をグラスに近づけても香りはありませんが、飲んでみるとしっかり竹の香りが鼻を通ります。虎竹茶だけで飲むと甘い味がしますが、後味はすっきりしているのでご飯を食べながらでも、甘いものをいただきながらでも、どんな時でも楽しめそうです。夏にはピッチャーに入れて冷蔵庫に常備しておき、ごくごくと飲みたい、そんなお茶です。


「口の中がさっぱりして気持ち良い、すっきりする!」という感覚です。温かいと濃厚だった虎竹茶の味は冷たくするだけで、さっぱり。ゆっくり味わって見ますと、だんだんと虎竹茶のほのかに甘い本来の味が出てくるのが分かります。飲みやすいのでゴクゴクっと一気に飲んでしまいました。今まで暑い日には、ミネラルウォーターを買って飲むことが多かったのですが、冷たい虎竹茶にすれば、涼しさとスッキリさで熱い体をうるおしてくれること間違いなし。今年の夏が待ち遠しいです。


自分達が生まれ育った懐かしい古里。そこにしかない不思議な竹、虎斑竹(とらふだけ)竹の葉がお茶になるとはご存じない方がほとんどですろう。キキリッと冷やして飲んでもらいたいにゃあと思うちょります。



雪餅草

竹林


おんちゃんよ、今日はあの時の竹林に行っちょった。あの頃は、まだまだ元気で、おばちゃんと一緒に仕事をしよった。急な傾斜の焼坂の山道で重たい竹の束を肩に担いで、若い学生さんたちにビックリされたのが昨日の事のようやちや。


ずっと、ずっと前の昔話ぜよ。自分が祖父の愛犬アトマと薄暗い竹虎の工場で遊びよって、なんかエイ、甘い匂いがするにゃあと思うて、引き寄せられるように行ったガスバーナーの所で、ランニング姿で汗をふきふき竹を矯めよった、川に突きだして作られた作業場にはラジオの音。子供心にも初夏の心地よい風が入ってきよったにゃあ。


雪餅草


おんちゃんよ、90歳までお疲れ様でした。ほんわかと包みこむような優しさと寡黙さと、山から帰ってきたら着物に着替えて新聞を読みゆうそんな姿が格好エイにゃあと思いよったがぜよ。


今日は竹が泣きよったで、腰にナタを提げて、ここに来ることはもうない、そう言うたら泣きよった。けんど、また助けてくれますろう。ボクがどうして生まれたか。ボクがこれからどうするか。皆と上から応援しよっとうせよ。


ひとり歩いて帰る山の中、色のない景色にポツリ。ふと目にとまったがは美しく咲いちゅう一輪の純白の花。おんちゃんが見せてくれたがやろう?雪餅草、花言葉は「苦難の中での力」。まっこと、自信も何ちゃあないけんど、言うしかないがやにゃあ。


「後は任せちょいてや。」


竹のある台所

竹のある台所


竹のある台所は、まっこと懐かしい感じがする。近所の人から頂いた大根をそのまま入れておく手提げ籠、お米を洗う米研ぎザル、野菜を洗っていれる野菜籠、味噌こしに使う味噌漉しざる、洗った茶碗をのせる茶碗籠。


ざるだけでも竹で編まれてきた物は色々ありますけんど、その他にも竹ヘラや麺すくい、鬼おろし、茶漉し、竹箸など、竹製をあげたらキリがない程あるがですちや。けんど、よくよく観察しよりましたら、実際に働きゆう竹製品を見ていたら面白い事に気がつくがです。


竹お玉


それは、それぞれが違う表情というか風合いに変わっていく事ぜよ。編みあがって工場やお店に置かれちゅう時には、これという個性も感じられる事のない竹籠たちやけんど、こうやって水回りに伏せられちゅう笊や籠は、まるで人にそれぞれの顔があり名前があるように、ひとつ、ひとつ別の竹に成長していくように感じるがぞね。


釘にぶら下げられちゅうお玉を手に取ってみたがです。竹節をそのまま使うて一本の道具に仕上げられちゅう自然感いっぱいのお玉も、店に並んじゃある時とはまるで別のお玉のような気さえしてきますちや。決して、美しいとか最新とか言うワケではない、普通の古くさいキッチンであったとしても、こんな竹のある台所で作られる料理はきっと温かい。そして、交わされる会話には笑顔があふれちょりますろう。


篠竹の魚籠

篠竹魚籠


孟宗竹や真竹など大きな竹は人里であっても山深い所であっても、どこにでも生えちょりますので、ついつい勘違いして日本の何処にでもあるように思ってしまいがちながです。けんど、北海道には孟宗竹はないと言われますし、東北でも自分の見た竹林の北限は山形県やったがです。そして、同じ孟宗竹でも四国や九州の竹に比べて小振りな感じでした。寒い地方では大きな竹は育ちにくいのかも知れませんぞね。


その代わり、東北などを中心に竹細工に使われる竹は、篠竹、スズ竹、根曲竹と言うボールペンほどの太さで、高さもせいぜい2メートル程度の細い竹ながです。実はこれらの竹が、しなり、粘り、堅牢さなど兼ね備えた、こじゃんと素晴らしい素材で、編みあがる竹製品は実用的ぜよ。毎日のように沢山の竹にふれ、竹細工に親しむ機会の多い竹虎の社員の中にもファンがいっぱいおるがやきに。


縦に長い日本列島の竹は、まっこと面白いぜよ。気候、風土が違うて、竹の種類が全然違うきに、同じ竹編みの魚籠でも、その土地ならではの個性が際立つがちや。この篠竹魚籠も西日本では見た事がないものながです。篠竹は真竹とも淡竹とも違う性質。当然、ヒゴ取りから違うて編みあがる形や籠の表情も違う。見よって飽きる事がないがです。


川釣りのお供にする篠竹魚籠ですが、籠表面が白っぽくご覧になられるのが分かりますろうか?さすが雪深い土地柄どおりや色白な竹やにゃあ...。などと言いよったら、ちっくと間違いですぞね。篠竹やち当然竹の青々とした表皮を持つ竹です。しかし、この魚籠は表と裏を正反対にして編まれちょります。どうしてかと言うたら竹表皮のツルツルした良い面を内側にして、釣り上げた魚をできるだけキズつけないように工夫されちゅうがです。前に見た同じような作りの魚籠も東北の方やった。西日本では見られない作り方の違いは竹材の違いによるものですろう、まっこと面白いがぜよ。


雑誌「シガ宅」に掲載頂きましたぞね

雑誌「シガ宅」


雑誌「シガ宅」と聞いても実はピンと来なかったがですが、出来上がってきた本を拝見させていただきますと、これがなかなかエイがですちや。「~住みたい家がここにある~」と言う副題の付いた、実際のご自宅の実例レポートも掲載された雑誌やったがですけんど、雨水タンク、グリーンカーテン、太陽光発電、薪・ペレットストーブ、HEMS(Home Energy Management System)蓄電システム、そして、コンポストなど最近自分も何となく気になっちょりました。自然を活かした住宅生活が満載されちゅうがです。


これは面白いと、ついつい時間を忘れてページをめくりよりましたが、簡潔に分かりやすく構成されちゅうので読みやすく「エコキュート」も言葉だけは知っちょりましたが、その実どんなものかハッキリ知る事ができましたし、断熱ドア、内窓、節水トイレなど省エネ対策も知らない間に、こじゃんと進んじゅうと感心しましたぞね。


さて、そしたら竹虎がどこに掲載されちゅうかと言いますと、住宅を「癒し、健康」という切り口で見たページでした。シックハウス症候群という言葉をご存じですろうか?家の中には、その原因と言われる化学塗料や接着剤が使われますけんど、そこから出るVOC(揮発性有機化合物)を吸着するような、いろいろな内装材に人気が高まっちゅう事を聞いた事があるがです。雑誌「シガ宅」にも漆喰や、近年良く耳にするうよになった珪藻土。それからエコカラットなどが紹介されちょりますが、そんな中に消臭、調湿の効果的な竹虎の竹炭を取り上げて頂いたがです。


このような本の発行される背景を思うても、やっぱり時代は環境を考えた自然との調和に向かいよりますろうか?思い出すのは先日お伺いさせて頂いた竹職人さんのご自宅ですちや。古い民家を改装されて工房も併設されちょりましたが、長年使われてきた床板の渋い色艶が何とも懐かしく心安らぎます。日当たりのよい縁側があり、薪ストーブの置かれた土間があり、開け放した引き戸から心地よい山の風が通りぬけよりました。もしかしたら自分たちの求める最高の暮らしは、ちっくと前の日本の家に既にあったがではないろうか?考えてみよったら、そんな風にも思えてくるがです。


竹の彼岸花?

竹の彼岸花


虎竹は表皮の虎模様が命ですきに、竹表皮を剥ぐ事はないがです。一番美しくもあり、一番丈夫な部分でもあるがですが、その一方で「磨き」と呼ばれる技法で編まれる竹細工の竹ヒゴは、竹表皮を薄く剥いで言わば竹の中身の部分を使われます。今回拝見した竹は、まさにその竹の身を、今まであまり無かったような形に上手く活かしたものやったがぞね。


机の上に目にとまったのは色鮮やかな飾り物。一体何やろうか?彼岸花をモチーフにされちょりますろうか?無造作に置かれている物に手をのばし持ってみたら、ありゃあ、軽いちや!そして、これは何と竹やいか!?遠目には竹とは思いもしなかったものが、実は身近にいつも見ている竹とは、まっことビックリぜよ。けんど、それにしても綺麗な曲線ですぞね。真っ直ぐに伸びる茎部分の剛の竹と、花びら部分の柔の竹。竹の魅力のひとつは、この両面性ながです。


よく見たら彼岸花の向こうにも、思いのまま曲げられたオブジェのような竹が置かれちゅうちや。自然素材は、おなじ材料でも性質が違いますし、使われる環境によって、変わるので難しい所もありますけんど、今まであまり見たことのない竹に触れよりましたら、新しいアイデアが湧いてきて、こじゃんと楽しいがです。


竹かご三兄弟

竹籠三兄弟


温かい陽射しに誘われるように田舎道に遊びに出てきた三兄弟。いつやったか「だんご三兄弟」と言う唄が流行った事がありましたけんど、だんごならぬ、竹かご三兄弟ながです。


だんご三兄弟では長男、次男、三男が、それぞれ性格が随分と違うちょったように覚えちゅうがですが、この竹かご三兄弟も、それぞれに容姿が微妙に違いますぞね。同じ職人さんが同じ山の同じ竹を使うちょりますが、持ち手の長さや口の開きや何やら小さな異なりがあるがです。だから長男、次男、三男と順番を入れ替えても、どれが、どれかピタリと分かりますきに...。と、思うてシャッフルしてみたら、ややっ...!?意外と分からん?もちろん、細かく見よったら分かりますろうけんど、初めての方にパッと見せたち、なかなか区別がつきませんちや。さすが熟練職人が編み上げた竹籠たちやにゃあ。


けんど、こうやって三兄弟が仲良く揃うておれるのは、一体いつまでやろうか?同じ形の兄弟達ですけんど、いつかはどこかに別れて行って、ある者は花籠として、ある者は小物入れとして、それぞれの場所で、それぞれの使われ方でお役に立つがやろう。離ればなれになるけんど、それは、こじゃんと楽しみな事。今はこうやって皆で揃うて春の風に吹かれゆうがぜよ。


試作の青竹ひしぎ籠

青竹籠


竹籠を編み込む場合に大切な事を職人さんに訪ねると、竹ヒゴ取りやと言われるがです。どんなに腕の良い熟練の職人でも籠の元となる竹ヒゴが良くないと、形も美しく、丈夫な籠を作る事はできませんぞね。だから竹職人の腕の良さと言うのは、竹ヒゴ取りの巧さと言いかえてもエイかも知れませんちや。


そんな熟練の職人が一本一本の幅、厚さが全て同じの細く繊細な竹籤で編む竹籠や竹ザルはため息が出る程美しいですが、同じ竹ヒゴの幅で編むのではなく少し竹幅に変化をさせても面白いのではないろうか?そんな思いで試作された青物と呼ばれる、青竹(真竹)の自然な色合いをそのまま活かして編まれた籠。


ひしぎ籠


何ちゃあ竹幅を変えて編まれた竹細工もあるにはありましたけんど、ここまで大胆な作りというのは、あまりなかったですろう。ポイントとなっちゃある幅広の帯のように見える編み込み部分、細かい筋が入っちゅうのがご覧いただけますが、丸みのある竹を平たく割りのばすヒシギを連想されるがです。


おっと、ヒシギ言うても、ご存じない方も多いですろう。丸い竹を細かい割目を入れて平たくするがですが、内装の腰張りに使われたりする事も多かったですし、自分達は昔から袖垣にずっと使いよります。


竹虎に入社した頃には大きな銀杏の木の下に、竹が一杯積み込まれた会社の分所工場がありましたぞね。そこには10名近くのおばちゃん達が仕事に通うて来てくれよって、毎日タンタン...、タンタン...と叩いていた竹ヒシギ。籠を手にしたら賑やかな笑い声と一緒にあの懐かしい音。風にのって聞こえて来たような気がして、春霞の焼坂の山を振り返ってみるがぜよ。


マタタビ笊で頂くお蕎麦

マタタビ蕎麦ざる


マタタビという素材は見た目の美しさもあるし、触ってみても優しいし、優しいだけでなく使ってみると本領発揮。その、しなやかさと同時に丈夫さを兼ね備えちょって、特に自然素材が苦手としがちな水気にも比較的強いと言うことで、マタダビ米とぎざるは、知る人ぞ知る籠のひとつぞね。米とぎや、水切り籠に適しちゅうので、当然、蕎麦ざるなどにも多用される素材ながですが、ザルにしても、なかなか使い勝手が良さそうぜよ。


ざる蕎麦


マタタビザルでお蕎麦をいただきましたちや。編み方の違うこちらの蕎麦笊も野趣を感じて一段と美味しく食せます。こうやって使うているうちにマタタビ細工も色合いが深まり、愛着がどんどんと深くなっていくがぜよ。


水気に強く、水切れの良いマタダビですけんど、使うて洗った後には手早く水気を拭き取って十二分に乾燥させてる事が長持ちさせるコツですぞね。だんだんと成長するような蕎麦笊一枚で、食卓に山の幸が届いたような気もして、ちっくと豊かな心持ちになってきたがです。


「所さん、猿と呼んでください!」

竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)、所ジョージ


4月1日やきに言うてエイプリルフールではないがぞね!先月はじめにテレビ東京さんのスタジオに行ったら、なんと一緒に収録する事になって所ジョージさんとテレビに出たがぜよ。ご存じない方は事の一部始終をコチラのページで紹介しちょります。「所さんのそこんトコロ!」タイガー・タケトラお詫び


さて、ところでこの30年ブログをご購読されゆう皆様は、それぞれ日本全国各地の方がおられるかと思いますけんど、毎日そんな事を気にするもなくご覧になられるテレビ番組が、実は都市部と地方では放映日時が違う場合がある事はご存じやったですろうか?まあ、地方に行かられた時にホテルでテレビ観たら、チャンネルが少ないので何となく知っちょりますかにゃあ。


なので、先月3月はじめにテレビ東京さんで放映いただいた「所さんのそこんトコロ!」では竹虎の工場や商品なども、こじゃんと取り上げて頂いて最初に言うたように、竹虎四代目もスタジオにまで登場させて頂いちょりますので、是非、地元高知の方にもご覧いただきたいと思うて高知放送での放映日をご案内しちょりました。なにせ日頃表に出ることの少ない竹虎の職人も映っちゅうし、今回は山の竹炭職人さんまで撮ってもろうちょりましたので、いつも以上に皆が楽しみにしてくれちょったがです。


ところが...


なんと、本番の放映はスペシャル番組で2時間やのに高知の放送では、ええっ!?1時間...!何かイヤな予感がしよりましたが、竹虎の放映は全部カットになっちょったがです。「こりゃあ、めった(困った)」ビデオを予約録画されちゅう方もおったのに、何とお詫びをしたらエイろうか?


そう思いよったら...


なんと高知放送での番組は全編、後編に分かれちょって、スペシャルの2時間分を2週に分けて放映する言うことながです。前回の放送は全編、そして竹虎の登場する後編は、本日4月1日(火)午後4時から高知放送でやって頂けるようぜよ。二転三転して、どうしようかとも思いましたけんど安心したぞね。何と言うたち今日は地元の職人さんに観ていただける事がやっぱり一番嬉しい事やにゃあ。


さて、その「所さんのそこんトコロ!」のスタジオ収録に話しを戻させてもらいますけんど、初めて所ジョージさんにお会いさせて頂いて、テレビで観るままの自然体やし人柄の良さそうな笑顔に、つい本番中にこんなアドリブをやってしもうたがです。


竹虎四代目「所さん、猿と呼んでください!」

所さん  「何でだよぉ?」

竹虎四代目「お願いします!」

所さん  「じゃあ......猿」

竹虎四代目「ははあ!懐で草履を暖めちょりました!」


そこで、待ってましたとばかりに、いつもの作務衣の懐に仕込んでおいた竹虎自慢の竹皮草履を取り出し、所ジョージさんに献上させていただいたがぜよ。


これは凄い見せ場のシーンやにゃあと、素人なりにう思いよりましたけんど全部カットやったがです(泣)。ところが、なんと、なんと、最後の最後番組エンドロールが流れる所で使うて頂いちゅうよと、早くにご覧になられたお客様から教えていただいて、改めて録画を見直してみたら......ああ、良かった!全部ではなく一部がチラリとではありますけんど映っちゃあるやいかっ!


自分は根っからの田舎者やき煌々と眩しいスタジオで舞い上がり、無我夢中で何をしたかもハッキリ覚えちょらんかったがぞね。なので、もしかしたら失礼をしちゃあせんかと心配しよったがです。けんど、こちらもまっこと安心したちや。教えていただいたお客様、ありがとうございました。


そんなこんなで高知の皆様。本日午後4時から高知放送で放映されますぞね。ご覧になられる方がおられましたら最後の最後にもご注目しとうせよ!