五台山花絵巻【五ノ巻】伝統の美、和花の世界が、今日から高知市五台山にある牧野植物園で始まりましたぜよ。この植物園は高知県出身で世界的な植物学者であられた、牧野富太郎博士を記念して開園しちょります。牧野博士言うたら土佐虎斑竹の命名の父でもあられますきに、竹虎とは深い縁がある植物園ながぜよ。
県外からのお客様に高知の見所をたずねられたら、まず一番にオススメさせて頂くのが実はこの牧野植物園ちや。そもそも自分も正直いうたら、植物園にはあまり関心があった方ではないがです。けんど、十数年前のリニューアルオープンの時に、虎竹を移植させていただく事があったがです。
虎竹の里でしか色付かない不思議な虎竹は、今まで全国各地で育てられた経緯がありますぞね。牧野博士自身もご自宅に移植されたけれど、虎模様が出ず、思うような結果にならないと記録が残っこちょります。自分も話しには聞くものの実際に移植した虎竹は始めてです。その後の竹の成育状況が気になって、植物園には何度も何度も足を運ぶようにりました。そしたら、いく度に何とも心地のエイ風が吹きゆうのに気づきます。日頃、自然の中に暮らしゆう自分でもここの木々や草花には何とも心安らぎます。
モダンな曲線美の建物もあるろうけんど、やはり何より、この植物園を支える人。まっこと草や木や花が好きながやろうにゃあ。ここで働く方々を見よったら、そう思います。それは虎竹の里で竹を伐る山の職人さんに通じるものを感じるがです。
都会から来られたお客様から電話がかかってきます。「この前、教えてくれた牧野植物園が素晴らしかった!」飛行機の便を最終に変更してまで、少しでも長くここにいたい、そう言うて喜んでいただくと自分も、こじゃんと嬉しゅうなりますけんど、この植物園を維持、管理する裏方の皆さんの努力のたまものですろう。
今回の「伝統の美、和花の世界」は、日本の花の美しさを観ていただこうという趣向のようですぞね。そこで、和の雰囲気の演出に虎竹をふんだんに使うて頂いちょります。
椿の鉢の下に虎竹を使い、その背景には虎竹御簾垣をしつらえて、さらに、足元にも虎竹が使われちゅうがです。こうして拝見したら虎模様の渋さというのは、そのものだけでも光ますけんど、他の誰かに輝いてもらう引き立て役にもなりますにゃあ。
美しい植物たちに癒されながら一日のんびり、ゆったりと歩く。日常を忘れて気持ちよく過ごせる牧野植物園の休日。南国土佐には、こんなかけがえのない時間もありますぞね。
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