庄内竿

庄内竿


庄内地方は何処にあるかは分かりますろうか?自分は高知県に住みよりますので実は遠い東北の地理には疎くて、山形県にある事は知っているものの実際どこの辺りかは恥ずかしいですけんど、ずっと長い間知らずにおったがぞね。


けんど実は先日、庄内の「みんなで集えば文殊の知恵」という勉強会に呼んでいただく機会があり、生まれて初めて庄内平野に降り立ち、雪に覆われているもののその雄大な平地美しい山並みに目を奪われたがです。以前、全国で活躍されよります有名なシェフ奥田政行さんのお話で、日本で野菜の美味しい土地が3箇所ある「それは、庄内、高知、熊本だ」そんな風に聞かせて頂いちょりましたので、以来ずっと長い間、庄内という名前が気になっちょったがぜよ。


お伺いさせて頂いて食べ物で一番気になったのが「孟宗汁」と呼ばれる筍料理ながですちや。庄内には湯田川という歴史のある素晴らしい温泉街があるがですけんど、この辺りは孟宗竹の北限という事で竹林が多く、多いだけではなくて竹を愛して活用する文化が根付いちょりました。けんど「孟宗」と言うたら食べ物の事を言うというのに驚きましたぞね。


自分達からしたら孟宗竹と言えば例えば竹ワインクーラーなど竹細工の素材、あるいは最近なら竹炭の原材料だったりしますけんど、孟宗を食べるとは言わんぞね、食べる事を言う場合には筍と言いますちや。「今日の孟宗どうだった?」筍掘りのシーズンにはこんな挨拶をされるという庄内、まっこと所変われば面白いものながです。


庄内竿を振る


竹は元々が南方系の植物ですので、実は寒い地方ではあまり大きな竹は少なくなります。こちら庄内では細い竹を使うた庄内竿という、それは素晴らしい竹竿を拝見させて頂く事ができたがです。


時代はさかのぼって庄内藩の当時より、磯釣りを武士のたしなみとして「釣道」とよび、釣れたか?釣れないか?現代のレジャーとしての釣りとは一線を画して「勝負」と言いよったそうですちや。そう言うたら自分の中学高校を過ごした明徳義塾でも、野球は「野球道」、テニスは「テニス道」と呼んでグランドやコートをそれぞれ野球道場、テニス道場と言いよりましたきに、もしかしたら、それに近い感覚やったのかも知れんと想像するがです。


けんど、素晴らしい竹竿と聞いて一度持ってみたくなり聞いてみましたら、運良く近くの釣り道具屋さんで庄内竿を販売されゆう所があって、少し持たせていただく幸運に恵まれたがです。持って驚きましたぜよ。その竿の手にしっくり馴染む感触と、振った時の先端の繊細なしなり、これが短い竿なら座敷で振って楽しむとも聞く庄内竿の凄さですろうか。時間が経つと、ちっくと手放したくなくなるような...イカンイカン、これ以上持っていたら持ち帰りたくなりそうちや。そんな今でも時々思い出すほどの手に残る心地良さ、まっこと、伝統の中で育まれた竹というのは素晴らしいぜよ。


矯め木


けんど、そんな竹細工に使いゆう矯め木も、元庄内藩主酒井家の御用屋敷にある致道博物館で拝見させて頂いちょりました。ガラスケースに綺麗に収められて鎮座してましたけんど、全く同じような矯め木は虎竹の里ではまだまだ現役の道具として毎日活躍しゆうがです。


これも又、ひとつの驚きというか自分がたまに感じる事ぞね。他の土地では資料として大切に保管されちょったり、手に触れることのできないモノされちゅう道具や竹製品を今でも仕事に使い、また作り出して全国の皆様にご紹介もさせてもらいゆう。改めて先人が築きあげてきた120年の歴史や、自分達が守っていかねばならない竹文化の事をこのような機会の都度しっかりと考えさせていただけるがです。


コメント(2)

碧水 返信

庄内竿で検索中にたどり着きました。
竹竿が好きで庄内竿をいたずらで作ったりしています。
一緒に竿を作っていた従兄が10月に亡くなってから作る意欲が無くなってしまいました。今年は一本も採ってません。
ですが、クラゲで有名になった加茂水族館の館長から名付けていただいた庄内の磯釣りの研究家として、庄内の磯釣りの研究は細々ながら現在も続けています。
タメギですが、元々弓師が竿を作った関係で関東のタメギと逆の穴を開けてます。
庄内竿を作って売っていた竿師が死んだり引退して現在は個人的な趣味で作っている竿師しかいなくなりました。でも江戸時代から皆売るための竿作りではなく自分で作っていたので元に戻ったと思えば良いのかも?
生活するための竿師の誕生は名人と云われた陶山運平~上林義勝~中村吉次等と他釣具屋に所属する竿師でした。
庄内竿の減少は、作れば売れた時代の釣り具屋、竿師の堕落とグラス繊維・カーボン繊維の釣竿の台頭が釣竿の衰退につながっています。

竹虎四代目 返信

碧水様

コメントありがとうございます!
庄内竿は武士の鍛錬として奨励されてきた歴史があると聞いちょります
今に残されている竿の素晴らしさを拝見させて頂くと
それだけに真剣に道を究められた方も多かった事だと感じました。

そんな庄内竿を作られゆうとは凄いです
モノ作りの世界では職人さんが減りつつありますが
是非これからも竿製作の灯を消すことなく続けていただきたいと願いよります。
ありがとうございます!

コメントする