樽香酒

虎竹タガのワインクーラー


樽香(たるこう)と聞くとワインの事を思われる方が多いかも知れません。自分はあまりお酒の世界に詳しくないがですが、ワインを木製の樽で熟成させる際にその木の香りが移るそうながです。


けんど、今回のお酒はワインではなくて日本酒ぞね。日本酒はもともと樽で作られたり、運ばれたりしてきたものですし、樽の木の香りが付くのはごく自然な事のように思いますけんど、この樽香酒が最近こじゃんと人気になっちゃあると聞きましたぜよ。そこで何と日本酒の大手メーカーさんに中には樽作りの職人さんを何人か養成もされている、そんな嬉しい動きもあるようながです。樽には竹のタガが必要ですけんど、このタガ作りの伝統や技術もこうやって残っていくがやったら大歓迎やと思うちゅうがぞね。


アイスペールとしても


前に拝見したある飲食店さんでは、木製の桶に入れられた日本酒をグラスに注いで樽香酒を楽しまれるゆうお客様がおられました。好みはそれぞれやと思いますけんど、あの何とも心の落ち着くような木の香りの清酒やったら食事もさぞ美味しくなるがではないですろうか。


虎竹タガのワインクーラーはアイスペール等としても使えますけんど、山の多い四国ならではの山の幸を活用しちょります。四国の杉、高知の竹、そして昔ながらの米糊を使うたこだわりの製法ぜよ。大人数の宴席などで、こうやって木の香の日本酒を楽しむがにはちょうどではないかと思うちゅうがです。


庄内竿

庄内竿


庄内地方は何処にあるかは分かりますろうか?自分は高知県に住みよりますので実は遠い東北の地理には疎くて、山形県にある事は知っているものの実際どこの辺りかは恥ずかしいですけんど、ずっと長い間知らずにおったがぞね。


けんど実は先日、庄内の「みんなで集えば文殊の知恵」という勉強会に呼んでいただく機会があり、生まれて初めて庄内平野に降り立ち、雪に覆われているもののその雄大な平地美しい山並みに目を奪われたがです。以前、全国で活躍されよります有名なシェフ奥田政行さんのお話で、日本で野菜の美味しい土地が3箇所ある「それは、庄内、高知、熊本だ」そんな風に聞かせて頂いちょりましたので、以来ずっと長い間、庄内という名前が気になっちょったがぜよ。


お伺いさせて頂いて食べ物で一番気になったのが「孟宗汁」と呼ばれる筍料理ながですちや。庄内には湯田川という歴史のある素晴らしい温泉街があるがですけんど、この辺りは孟宗竹の北限という事で竹林が多く、多いだけではなくて竹を愛して活用する文化が根付いちょりました。けんど「孟宗」と言うたら食べ物の事を言うというのに驚きましたぞね。


自分達からしたら孟宗竹と言えば例えば竹ワインクーラーなど竹細工の素材、あるいは最近なら竹炭の原材料だったりしますけんど、孟宗を食べるとは言わんぞね、食べる事を言う場合には筍と言いますちや。「今日の孟宗どうだった?」筍掘りのシーズンにはこんな挨拶をされるという庄内、まっこと所変われば面白いものながです。


庄内竿を振る


竹は元々が南方系の植物ですので、実は寒い地方ではあまり大きな竹は少なくなります。こちら庄内では細い竹を使うた庄内竿という、それは素晴らしい竹竿を拝見させて頂く事ができたがです。


時代はさかのぼって庄内藩の当時より、磯釣りを武士のたしなみとして「釣道」とよび、釣れたか?釣れないか?現代のレジャーとしての釣りとは一線を画して「勝負」と言いよったそうですちや。そう言うたら自分の中学高校を過ごした明徳義塾でも、野球は「野球道」、テニスは「テニス道」と呼んでグランドやコートをそれぞれ野球道場、テニス道場と言いよりましたきに、もしかしたら、それに近い感覚やったのかも知れんと想像するがです。


けんど、素晴らしい竹竿と聞いて一度持ってみたくなり聞いてみましたら、運良く近くの釣り道具屋さんで庄内竿を販売されゆう所があって、少し持たせていただく幸運に恵まれたがです。持って驚きましたぜよ。その竿の手にしっくり馴染む感触と、振った時の先端の繊細なしなり、これが短い竿なら座敷で振って楽しむとも聞く庄内竿の凄さですろうか。時間が経つと、ちっくと手放したくなくなるような...イカンイカン、これ以上持っていたら持ち帰りたくなりそうちや。そんな今でも時々思い出すほどの手に残る心地良さ、まっこと、伝統の中で育まれた竹というのは素晴らしいぜよ。


矯め木


けんど、そんな竹細工に使いゆう矯め木も、元庄内藩主酒井家の御用屋敷にある致道博物館で拝見させて頂いちょりました。ガラスケースに綺麗に収められて鎮座してましたけんど、全く同じような矯め木は虎竹の里ではまだまだ現役の道具として毎日活躍しゆうがです。


これも又、ひとつの驚きというか自分がたまに感じる事ぞね。他の土地では資料として大切に保管されちょったり、手に触れることのできないモノされちゅう道具や竹製品を今でも仕事に使い、また作り出して全国の皆様にご紹介もさせてもらいゆう。改めて先人が築きあげてきた120年の歴史や、自分達が守っていかねばならない竹文化の事をこのような機会の都度しっかりと考えさせていただけるがです。


雪の竹

竹虎四代目


いつも見ている日本唯一虎竹の里の竹林は明るい陽射しが差し込み、小鳥が遊ぶ清々しい風の吹く最高の場所ぜよ。けんど、こんな雪景色の竹林も又エイもんやにゃあと思うたがです。


南国育ちの自分たちからしたら写真で見る事くらいしかない雪の竹。もともと竹も温かいところで育つ植物ではありますけんど、白い世界に青々とした鮮やかな色合いを放つ竹は美しいちや。昔の人々は、この色を見て竹の神秘的な生命力を崇め、色々な神事に使うようなったがではないろうか。思うたら極寒の中、葉も落とさずそのままに立つ竹は、まっこと不思議な植物ながぞね。


雪の竹林


雪の重みに頭をたれる竹に出会いましたちや。自分が竹の姿に学ぶ、竹の素晴らしい所がいくつかあるがです。一つは、節を持ち礼節を知りながら真っ直ぐ天を目指す姿。もう一つは、竹林全体に地下茎を張り巡らせて仲間同士が手と手を握り合うかのように助け合う姿。そして、最後が強い風にも、今日のような重たい雪にも負けないしなやかで決して折れる事のない粘り強い忍耐の姿。


とは本当に素晴らしいぜよ。美しい四季のある日本の竹は世界一と思うちょります。日本人の文化や思想にも竹はその影響を与え続けてきましたけんど、この先もずっと清々しい竹林がそのままにあるように、ずっと後世の人達が今自分が感じている竹がありますように、祈るような気持ちで自分達に出来る事、自分達にしか出来ない事、こんな使命がある事に、こじゃんと喜びを感じちゅうがです。


竹のアクセント

虎竹テッシュケース


物語に起承転結があるように、ありとあらゆる事には「強弱」があり、リズムがあり、その変化が新しいものを創りだしていきますろう。竹細工にしてみたら、この竹ヒゴの幅の違いがアクセントとなって、竹編み自体に深みと面白みを醸しだしちょりますぞね。新しくご紹介しちゅう虎竹ティッシュケースどこか目を引かれるにゃあ...魅了される所があるにゃあ...。もし、そう感じられる方がおられるがやったら竹職人の思惑がバッチリぜよ、職人の勝ちですろうか。


竹ヒゴの幅の違いと、竹表皮部分と竹の身の部分を丁寧に二枚に裂く事により、一枚の竹ヒゴでの造作とは味の違う表情を出しちょります。ちょっとだけ高級感を感じるとか、気にかかるインテリアの一部になっちゃあるとか、存在感の違いになるのは、まっこと細やかな所かも知れませんぞね。


何ちゃあないような、別にそれほど変わる事のないような差が実は大きな大きな違いであって、なかなか簡単には飛び超える事ができなかったりするがです。竹と日本人の付き合いは長いだけあって、突き詰めてお話しすればするだけ奥が深いもの。自分も、まだまだその入り口に一歩足を踏み入れた所ながぜよ。


安和小の虎竹矯め直し研修

竹虎工場見学


竹虎に年に何回かお越しいただきゆう小さな見学者の皆様がおられます。それが地元安和小学校の生徒さんたちぜよ。何を隠そう自分も安和小の卒業生やきに、まあ言うなれば全員が自分の後輩と言うことですにゃあ。


軍手


自分達の暮らす、この虎竹の里でしか成育していない不思議な虎模様の竹だと説明をさせてもろうても、小さい頃から普通に目にしてきた竹やきに、もしかしたら当たり前すぎてピンと来ていないそんな生徒さんもおられるかも知れませんちや。実際、地元の若い方に話しを聞いても、竹には全部このような虎模様が入っているものだとずっと思いよったと話をしてくれますぞね。


虎模様が浮き上がるガスバーナーの工程を熱心に見てもろうた後、軍手を配らせてもろうて矯め直しの体験をしてもらうがです。最近ではご年配の方でも竹林に入った事のない方や、竹製品になる前の丸竹を実際に触った事の無い方さえおられます。そんな中で、こうやって竹に親しむ機会のある安和小学の生徒さんたちは、幸せな事だと思いますし、今日の日の事は忘れられない貴重な思い出になると信じちゅうがです。


虎竹矯め直し


小さな皆さんに自分の技を教える職人は楽しそうですぞね。大学生のインターンシップの受け入れを始めた時にも思うたがですが、自分達だけで工場におったら分からない事も、外からやって来たまったく竹の事を知らない若い皆様が竹の仕事とは何か?自分達が繋いでいく伝統がどれだけ大事な事か?教えているつもりが、実は教えてくれゆうがぜよ。今回の生徒さんは小学生のチビッ子達ではありますが、また何か必ず竹虎の工場に残していってくれるものがあるはずと、ちっくとワクワクしよったがです。


秋月、廣久葛本舗さんの葛

十代目高木久助さん


福岡の秋月という所をご存じですろうか?かってここには秋月城というお城があって、今でも城下町の風情を残した、こじゃんと雰囲気のある町ですぞね、ここに九州産の葛にこだわり江戸時代から作り続けゆう老舗の廣久葛本舗さんがあるがです。


ユニークな武将姿で出迎えて頂く十代目高木久助さんとは話しが合いそうやと思いよりましたが、やっぱり合いましたぜよ。そして、色々と店舗や工場等ご案内いただきましたけんど、そもそも葛という食べ物自体、数えるくらいしか食した事がありません。原材料も見のは初めてですし作り方のこだわりなど聞くと知らない事ばっかり。まっこと驚くやら、勉強になるやらながぞね。


竹


昔ながらの製法をずっと守り続けられよります歴史ある工場です。きっと拝見させていただきゆう内に何処かに竹が使われちゅうのでは?そんな風に思うて期待しよりましたぞね。今のようにプラスチックや便利な素材が普及するまでは竹ほど身近で使い勝手のよい素材はなかったがです。だから、きっと...と思いよったら案の定、こんな所にありましたちや。


けんど、こじゃんと真っ黒になっちゅうがぜよ。今はオフの時間みたいですけんど、毎日しっかり働きゆうがやにゃあ。美味しい葛を作りゆう自信のようなものを感じるがです。まっこと逞しい現場の顔をしちょります。


葛きり


さて、秋月の商家は、まるで旅館さんか何かのような造り、昔から葛だけでなく和紙や染め物も盛んと言うだけあって綺麗な水が豊富にある土地柄なので、川の流れを中庭には引き込んで大きな池にしちょります。防火用水にもなる先人の知恵と聞きましたちや。まあそれにしても風流ながです。


そんな中で、とびきり美味しい葛きりと葛餅をご馳走になりましたぞね。手間のかかりゆう本物の仕事場を見せてもろうて、こうやって、その場で味わえることの幸せに感謝ながです。


くず餅


人生で確か3度目の葛きりやったですけんど、噛んだ時の粘りも、スルッと入る喉ごしの滑らかさも今まで食べた事のある葛とは全然違うちゃあるがぜよ。呼び名は同じ食べ物でも、こんなに違いがあるがやにゃあ。本物を知る事がなかったら、今まで食べた事のある物が自分の知る葛そのものやった。よく思うたら同じ事が他にもあるがではないろうか?そうぜよ、竹虎が120年やってきたでも同じ事ですろう。


山の竹炭窯

竹炭窯


竹炭が人気になった理由として、電子顕微鏡で見ないと分からないような小さな孔が木炭の数倍と言う事で、その効果が高かった事。そして、竹は植林などしなくとも、また肥料や人手をかけなくとも毎年どんどん生えてくる成長力から継続利用できる資源だと言う事。主な原料となっちょります孟宗竹は近年伐られる事もなくなり、材料として身近に沢山あった事などが主にあげられるがです。


十数年前までは木炭専門でされていた地元の窯でも、材料の豊富にある孟宗竹を使うて消臭用などの竹炭を焼いて頂きよります。小規模な炭窯で焼き上げる竹炭は比較的に低温ではありますものの、アンモニア臭などの消臭効果や調湿効果に優れた竹炭で、部屋に置く、置き炭として皆様にご紹介させていただきゆうがです。


炭窯と一言で言うてもその焼き方やノウハウは実に様々で、職人さんによりそれぞれ色々な方法があって、見学させていただくのは、まっこと(本当に)面白いものながです。竹は中が空洞になっちょりますので、そのまま窯入れするのではなく、縦に割ってこじめてから窯立て(窯入れ)していきますが、この竹割の方法一つ取っても大掛かりに機械で割る窯元もあれば、機械割の原理をそのまま手動にして2人がかりで手割りされる所もあります。


今回お邪魔しちょった窯では電動鋸で切り割りしよりました。太い孟宗竹を鋸に当てると大きな音をたてて切りくずが舞いますぞね。焼き上がった竹炭だけを見よりましたら、こうやって丸い竹を割って均等な幅にしてから焼き上げている事ももしかしたら分かりづらい事かも知れませんけんど、窯に入れる前にも職人さんの、こんな大変な仕事があって、綺麗な竹炭になっちゅうと言う事も皆様に知っていただけたらと思うがです。


スーパーリアル!虎竹カマキリ

虎竹カマキリ


もし黙っちょったならば本物のカマキリと思うて、そのまま見過ごされる方もおられるかも知れませんぞね。それくらい、まっことリアルに出来ちゅう日本唯一の虎竹で作ってもろうたカマキリです。


まず皆様が思い浮かべる色合いが緑色のものではありますが、そうぜよ、ちっくと思い出してもらいたいがぜよ。確かに、ちょうどこんな茶色い色合いのカマキリもおりますろう?だから一応、これが竹細工ですとお教えさせてもらいゆうがです。「ああ、カマキリね...だから」と、竹製の虫だと気づかない方もおられると思うがです。


けんど、それにしても、本体の大きさから、頭、カマ、首、触覚、胴体、足まで、今にも動きだしそうなイキイキとした姿ぜよ。竹は加工もしやすく素材は全国各地にあるがです。そして、手作りの好きな方も実は結構多くいらっしゃって、その中には竹の虫を創作されゆう職人さんもおられますぞね。だから、竹の虫は色々と拝見させていただく事も多いがでずが、この職人さんは、ちっくと特別やちや。本当に竹細工が好きで、そして製作される虫たちをも愛されちゅうがやにゃあと感じますぞね。


カマキリ


前に土用干しに使うエビラ籠を出してきたら、あまりの編み込みの良さに誘われたがやろうか?どこからともなく現れた本物のカマキリが一匹おりました。こうやって見比べても、あらら、、、どっちがどっちやろうか。遜色ないくらいの虎竹カマキリやちや。


細かい所はもちろん素晴らしく作り込まれて凄いですが、全体の雰囲気というか空気感というか竹細工と言う形に、命を吹き込まれちゅうのが、ちっくと他にはなかなか真似のできないこの職人さんならではの腕ではないですろうか。


カマキリ梱包


そして、ちっくと難儀なのがこの持ち運びやにゃあ。細やかなガラス細工のように繊細な作りですきに大変ぞね。けんど、さすがと思うのはその運搬の方法ちや。発砲スチロールの台に極細針金で固定して持ち運びされゆうがです。作る時にも細心の注意で製作されゆうですけんど、完成した後にもさらに心配りされちゅう事にも感じ入るがです。


雨後の虎竹

虎竹


「雨後の筍」と言う言葉があるのをご存じですろうか?シーズンになって雨が降るとそれに応えるかのように筍をドンドン生えてくるがです。逞しい生命力を誇る竹を象徴しているかのような言葉でもありますぞね。


けんど、今回は筍ではなくて虎竹。「雨後の虎竹」とでも言うたらエイろうか?虎竹は淡竹(はちく)の仲間ですので竹表皮に粉をふいたように白っぽくなるのが特徴ながです。山に生えちゅう時には真竹のように青々としておらず、また、一見すると虎の模様も隠れて分かりづらいがです。ところが雨が降り表皮が水分で濡れちょったら、薄く白っぽく見えていた表皮が綺麗に油抜きされたようになって下に隠れていた虎模様もクッキリと表れてくるがです。


雨後の虎竹


虎竹の伐採はもう終わっちゅうがですが、まだまだ竹林に続く細い小道からは竹が運びだされてきよります。桧の林の中にある、この竹の積み込み場所は日陰になっていて、伐り出された竹に直射日光もあたらず絶好の場所ぞね。これから少しづつ、この急な坂道から竹が出されてきて小山のように虎竹の束が積み上げられたらトラックでまとめて積み込みにくるがです。雨降りになので竹が、まっこと良く見えますけんど、土場に運んで一本づつ選別していったらこれが、なかなか一級品で通る虎竹はそう多くはいながぜよ。


おひつの虎竹タガ

虎竹タガおひつ


炊きたてのご飯を更に美味しく頂ける木製おひつは、知る人ぞ知る人気の商品の一つでもあるがです。竹細工だけでなく、こういう木工の技術も機械化が進み、残念ながら昔ながらの職人技というものが失われつつあるがですが、ほんの、ちっくとながら手作りの良さを伝えていきたい。そんな思いの作り手もおられるがです。


おひつに使うタガに日本唯一の虎竹を使うていただきました。木の板を張り付ける工程にも接着剤を使わず米糊を使い、機械で削る仕上げ加工を手削りにこだわり、師匠から受け継いだモノ作りの心を頑なに守られよりますので、虎竹のタガが、こじゃんと似合うおひつやと思うたがです。


新しく出来上がってきた、おひつを拝見させてもらいました。美しい出来映えに大満足で思わず笑みがこぼれますぞね。けんど、さらに手直しをお願いさせていただきました。皆様にご覧いただけるように仕上がった時には、もっともっと素晴らしいおひつになっちゅう事やと思うがです。楽しみにしちょってもらいたいがぜよ。


朱色の間仕切り竹簾

間仕切り簾


お座敷を二つに別ける間仕切りなどにも竹簾は使われますぞね。日本の暮らしの良いところの一つは風通しやと思います。たとえば庭にしつらえる垣根にしても、他者を拒むような高く堅牢な塀ではなくてお互いが確認できるような格子の竹垣や生け垣が多くあります。また、庭と住宅との中間のような存在の縁側。そして、室内に入れば簾(すだれ)。境界線をしっかり示しながらも向こうの様子を伺うことのできるファジーさが日本文化の良いところであるように思うがです。


けんど、たかが簾一枚と思いますが、薄い簾を隔てた、すぐお隣は目で見る事もできるし、当然、話し声なども聞こえてくるものの、飲食店などで横のテーブルと簾で仕切っていただくと、心理的な距離と言うのは実際の距離とは比べられないくらい遠く感じる気がするがです。朱色に染められたモダンな竹簾は、かなり大きなお部屋の間仕切りにも使えるサイズ。ポイントとなっちゅうのは横一文字に入った色違いの部分ぜよ。けんど、ただ色合いが違うというだけでは無くて、妙に目を引く編み込みやにゃあと思いよりましたら、何と、普通なら1本つづの竹ヒゴを紐で縛るところを3本の竹ヒゴを捻って、まとめて紐で縛るという技を使うちょります。


よくよく見せて頂かないと分からないような、簾職人さんこだわりの編み込みぞね。「あっ何かエイ感じ、今まで見た事のない新しさやにゃあ」ご覧になられる方に、そう感じていただけたら大成功ですろう。実は、このような隠れた技術は竹細工に限らず、色々な手作りにありますろう。そして、それぞれ、ひとつひとつに作り手の強い想いが込められちゅうと思うがです。


テレビ東京さんの取材2日間

竹編みテレビ取材


東京のテレビ局さんが取材にお越しになられちょりました。前日の下見からずっとお付き合いさせていただきましたけんど、今回色々なシーンでその都度感じたことは「細部に魂が宿る」という言葉ぞね。実は、自分たちの竹の仕事にも全て言える事ながですが、人が気づかないような細かい部分こそ大切にする職人の籠はやはり美しいし、丈夫やし、一見どうでも良いような小さな事をしっかり守る人はやはり頼りがいがあるがです。


自分はあまりテレビを見る方ではないですが、誰でも知っていると言う有名なテレビ番組やきですろうか?さすがに細かいところへの目配りというのは一流ですぞね。インターネットの情報発信を始めるようになってから、素人なりにデジタルカメラやビデオを使いますので何となく共通点があるように思いましたけんど、テレビカメラに映る絵の細かい部分をこじゃんと気にされよります。こんなに長時間の撮影は久しぶりでしたけんど、自分達の虎竹がどんな風に映し出されちゅうのか来月3月の放送予定との事ですが、まっこと今から楽しみでおれんがぞね。


竹虎テレビ取材


早朝は暗いうちから竹林に行き、工場に帰ってきて職人を撮ったり竹製品を撮ったり色々して頂ましたけんど、今度の取材では父親が珍しく登場する事となりましたぜよ。しかしまあ、こうやって父親と隣同士なって座る事もあまり無い事やし、横にすわって同じ画面に映ることは思い起こしてもこの十数年、いや二十数年、なかった事。いやいや、もしかしたら初めてのツーショットかも知れませんちや。


何をやっても中途半端で、周りの皆に馬鹿にされ続けてきた子供。挙げ句の果てにはインターネットなどと言うワケの分からないモノを会社に持ち込んで来る、そんなボンボン育ちのダメな長男を一番心配して、人知れず苦労をしていたのは、間違いなくこの父親ですろう。考えたら、こんな撮影でもないと一生こういうチャンスはないがやき。今度の取材が、放映されないかったとしてもまったく誰に見て頂く事がなかったとしても、有り難いこの場面をいただいた事に心から感謝するがです。


竹炭窯テレビ取材


それと、もう一つ、今回のテレビで嬉しかった事は竹炭窯ぜよ。いろいろ時間的な制約も都合もあり、もちろん十分とは思うちょりませんがそれでも今まであまり取り上げていただける事のなかった竹炭窯で頑張ってくれゆう、真っ黒になった炭職人のおんちゃんが、ちっくとでも表に出ていただける事に喜んじゅうがです。


どんな放映になるは自分たちでは知るよしもないですけんど、お孫さんも見られるような番組やきに、そこで、おじいちゃんが登場されるような事があったらさぞテレビのあるお茶の間が賑やかになるろうにゃあ。息子さん夫婦も一緒に見ていたりせんかにゃあ。ああ、そんな事にならんろうかにゃあ。まっこと、今から祈るような思いながぜよ。


竹簾のブックカバー

竹簾ブックカバー


竹簾と言うと、細く取った竹ヒゴを何本も何本も並べて紐で縛り、一枚の板状にしちょいてから日除けに使うもの。大方の方がまずそうやって思い浮かべる事やと思うがです。実際、竹と日本人とは古い付き合いではありますが、は日除けという一番の目的でずっと使われてきちょります。


それが近年の住宅事情の変化で日除けには簾に替わり、機能的なカーテンなども登場して簾の出番はすっかり少なくなったがです。そこで、日除け以外の用途として考えられたのが、ランチョンマットやコースターなどという敷物類が多かったように思います。染竹に虎竹を組み合わせた虎竹ランチョンマットは、今でもボツボツご用命をいただく竹製品ながです。


細い竹ヒゴで板状の形にしていくのが簾の特性がありますきに、これを何とか活用した新しいモノが作れないか?そうやって、あれこれ簾メーカーの方が知恵を絞ったひとつに、竹簾のブックカバーもあるがですちや。話しで聞いただけでは、あまりピンと来ることはありませんけんど、こうやって実物を拝見させていただいたら竹ヒゴの色合いに変化を付けられちょって面白いし両端の布の細工も上等に仕上げられちゅうがです。


そして大切な手触りですが、これが竹簾ならではのサラリ感があって思うよりずっと使い勝手も良さそうながぞね。これは、好きな本を持って外に出るのも楽しみになりそうですちや。あのブックカバーは、一体何やろうか?と注目浴びそうですぞね。


ヘワと呼ばれる鍋敷き

鍋敷き


こりゃあ青々とした綺麗な座布団やにゃあ。中心に穴もあいて、こじゃんと座り心地もよさそうぜよ。と、そんな風に思われる方が多いかと思うがです。けんど、これは座布団ではありませんぞね。実は自分も座布団か何かと、ずっと思いよったがです。藁でしっかりと作られちゅうしこんな大きなサイズですきに、ちっくと想像もしにくかったがです。けんど、実はこれは「ヘワ」と呼ばれる蒸し器の下で使う敷物ぜよ。


蒸籠(セイロ)で作る蒸し料理が一般ご家庭でも人気になっちょります。まず初めての方でも簡単にできる手軽さ、油を使わず蒸すだけなのでヘルシーと言うこと、そして、何と言うたち美味しい事ですうろか。野菜など素材の持つ旨みを一番味わえるような気がするがです。自分の小さい頃の事を思い起こしたら、そんな家庭用の蒸篭の何倍も大きな木製の蒸し器を、大きな大きな鍋にのせて餅米を蒸したり何だりしよりました。鍋が熱くなりますきに蒸し器との間にはこのような鍋敷きが必要ながです。最近の鍋敷きと言うたらせいぜい家庭用のお鍋やヤカンを載せる程度。だから、こんな大きな鍋敷きは正直ピンと来ないかも知れませんちや。


今年に入ってからでも、昔から作り続けられてきた大好きな竹細工や竹製品が段々と出来なくなってきたり、出来る数が少なくなってきたりしちょります。まっこと、自分達の手作りの世界では皆様が想像される何倍もの早さで高齢化が進みゆうがです。日本のモノ作りの空洞化などと言う事が新聞等で取り上げられる場合、竹業界の事などは人数も少なく影響力もありませんきに、あまり考えられてもないかと思うがですが「空洞化」と言う言葉を聞く度に、その重みを痛感しよります。


そんな中にあって、こんな藁の香りがしてくるような鍋敷きが今年も作られ、そして購入されゆう方もおられる光景を見ていると少しはホッと心が温かくなる気持ちながです。


根曲竹の冬

根曲竹


雪にすっぽり埋もれてちゅうのは根曲竹ぞね。竹と名前が付いちょますがチシマザサとも呼ばれる笹の仲間に属した背丈も2~3メートルくらいの小さな竹ながです。葉っぱまで雪が積もって重たいがですろう、頭を垂れてじっと我慢強く辛抱しているように見えますぜよ。根曲竹の名前の由来は、こうやって雪が降り積もり長い冬の間ずっと雪の重みで竹の根元部分が曲がり続け、とうとう曲がったままになってしまう事からこう呼ばれちょります。こじゃんと苦労人の竹と言うてもエイかも知れませんちや。


けんど、一面雪に覆われた白い世界にあってこの根曲竹の青々とした竹葉の色艶の美しい事には感動しますにゃあ。昔の人々が竹の生命力を敬い色々な祭事に竹を使うて来たのには、こんな竹の力強い姿があったきやと思います。ちなみに竹の祭事は各地に何と28祭事もあり、神事に使うちゅう地域は全国で869箇所にも及ぶそうですぞね。日本人と竹との深い繋がりをこんな所でも感じますちや。


さて、こうやって雪の重さに冬の寒さに鍛えられ根曲竹は強靱な身体になっていくがです。温暖な地方の竹は成長も早く、大きくもなりますが粘りや強さでは根曲竹には到底かないません。長年使うてもビクともしない根曲竹買い物籠の堅牢さは、こんな雪国の厳しい自然の風土の中で育まれたものながです。


虎竹馬蹄ペン立て

虎竹馬蹄ペン立て


そのまま置いておくと何に使うのか分からないような竹細工ぞね。「ペン立てながです。」と言うてもまだ半信半疑ちや。どこにペンを立てるがやろうか?たぶん、この竹の編み目の中やろうけんど...そうやって使う事を戸惑ってしまうくらい今までになかったかなり斬新な形ではないかと思うがです。


このユニークな形は馬蹄の形で、こじゃんと縁起がエイがです。Uの字に曲がっちゅう所に幸せが満たされると言われてアクセサリーを初め、インテリアなど身の回りの様々な生活用品にもモチーフとして使われる事の多いラッキーアイテムの形とされちょります。まっこと、自分にも何かエイ事で満杯にしてもらいたいもんですちや。


まあ、それはさておいちょきまして、この虎竹ペン立て、実は出来上がったペン立てが他のものにも活用できないかと色々と試してみましたぞね。スマホ立てや、小物置き、ペーパーウェイトなどなど...けんど、他の用途がしっくりこなくてやっぱりペン立てとして使うのが一番のようながぜよ。


実は随分前から同じ形のペン立てを使いよります。けんど、それは虎竹ではなくて赤染めされた真竹で編まれたもの。だから余計にそうかも知れませんれんど、デスク回りでの独特の虎模様の存在感は抜群ながです。こんな自然素材の小物がひとつあったなら仕事の時間もちっくと気分が変わってきますちや。豊かな心持ちになってくるがちや。


虎竹のミカドアゲハ

虎竹帝揚羽


ミカドアゲハ(帝揚羽)はアゲハチョウの仲間だそうながですが、実は高知県に生息する特別天然記念物に指定されちゅう貴重な蝶で、なんでも日本で唯一の蝶とし特別指定をしてもろうちゅうそうぞね。日本唯一言うたら何か縁があるような気がしちょったがですが、今回、虎竹の里の竹で同じ高知県に生きる蝶を作ってもろうたがぜよ。


出来上がった蝶を見たら感動するにゃあと思いよりましたが、まっこと想像通りに驚きましたちや。前に真竹で作られた蝶を拝見した事がありますが、虎竹を使うた蝶は真竹のものとは又全く違うちや。羽を大事にもって、横から、上から、下から、前も後も色々と拝見させていただき、ため息ひとつ。


虎竹の羽


けんど、まっこと手業とは凄いぞね。こんなに繊細な、まるで生きちゅうような出来映えに感心します。虎竹で作っていただいちょりますので、蝶の見せ場と言うたら何と言うても羽の部分やと思いますが、真竹と違うて横や後ろから見た時に虎模様の表皮部分が薄くのぞいて何ともいえない微妙な色具合になっちゅうがです。竹昆虫作りをされる方は何人かおられて、それぞれの方がご自分の納得される形を追求しながら工夫をされゆうがですが、これだけ精巧でリアルな竹の虫は沢山の作品を拝見してきたつもりですけんど他にはなかなか無いがです。まっこと時間を忘れてしまいますぞね。


最後の竹布五本指ソックス

竹皮草履と竹布五本指ソックス


今年もとりたてて寒波が来たと言うような事もなく、少しづつではありますけんど温かい日が増えてきた虎竹の里ながです。寒くないのは有り難い事ではりありますけんど、実は日本唯一の虎竹の色づきと気温との関係が言われていて、霜がおりるくらいの冷えがないと虎模様の色づきが良くないとも言われてちゅうがです。


だから温かいのは嬉しい事ではありますが、虎竹にとってはもしかしたら有り難い事ではなくという、ちっくと複雑な気持ちながです。まあ、ハッキリした原因は大学の博士の方々でも意見が色々。自然の不思議なので今日はこれくらいにしちょきますぞね。


さて、この冬も五本指ソックスで、やっぱり竹皮草履やったがです。ソックスだけでフローリングや絨毯を歩くのと竹皮草履を履いてのソレでは足に感じる寒さが全く違うぜよ。夏に涼しい竹皮草履なので冬に履くなど、とんでもない...そんな風に思われちゅう方がもしおられたらその考えを180度変えてもらいたいがぞね。自然の力というのは素晴らしいがやきに、夏はサラサラ涼しく快適に感じる竹皮草履が、寒い季節になったらほのかに優しい温もりを感じますちや。


そろそろ竹布五本指ソックス等と合わせて履く竹皮草履の季節は終わりですけんど、素足で楽しめるようになったらそれこそ本領発揮の時ですぞね。竹皮の足裏への最高の感触を楽しめるようになりますきに、まっこと、こうやって話しよったら更に待ち遠しい気持ちになってくるがです。


籐という素材

籐花籠


古い花籠がひとつあるがです。人工的に加工したとう事ではなく経年変化ならではの風格。よくよく見たらヒゴが折れて一編み無くなっちゅう部分もあったりする。けんど、そんな事は全く関係がないような丸みを帯びた曲線美のやさしい雰囲気ながら、年期の入り具合は時間職人が色づけした独特の凄みぜよ。竹のようでもありますが実は籐で編まれた花かご。底部分のあしらいなど細かい部分までも手を抜かず、まっこと感心するほど根気よくキッチリと巻き上げられちゅう。


籐は日本にはなくて、その全てを輸入に頼っちょります。自然素材ですので籐と一言にお話しましてもピンからキリまで色々な品質のものがあるのですが、近年だんだんと、この籐の入手が難しくなってきちゅうのです。皆様のお手元にお届けしゆう様々な竹細工、竹製品に使われていて籐がなくなったら作る事のできない商品までありますので、まっこと大変な事ながぞね。代替品として安っぽい人工的な素材がありますが。せっかく熟練の職人たちが作り上げる品物には使えないがぜよ。


この籐の花籠は形自体も美しいですが、籠に使われちゅう籐素材も綺麗です。綺麗な素材を一体どうやっちゅうがやろうか?と言うような技を駆使して編まれています。弘法筆を選ばずですけんど、よい筆やったら更に素晴らしい書になるろう。竹職人さんが困らないくらいには籐素材が入り続けることを願うちゅうがです。


竹と和紙と灯りと

竹照明


日本の家は木と紙で出来ちゅうと言われます。最近ではもしかしたら障子の無い住宅というのもあるかも知れんにゃあ。けんど、自分の小さい頃にはどこの家にも障子は普通にあって、新しく建つ家にもアルミサッシの窓の内側にはやっぱり障子やった。いつの間にか障子はカーテンなどに変わってしもうちょりますが、長い日本人と木と紙の関係は人のどこかに染みついちゅうものですろう。こんな竹灯りを見かけると誰でも懐かしさや、どこかホッと心が安らぐ気持ち良さを感じるがではないろうか?


竹灯り


竹が、こじゃんと素晴らしい素材やといつもお話させて頂くのは、真っ直ぐに伸びる直線美としなる柔軟性の曲線美を両方持っていて、人の身近にあり、軽く、加工しやすいもっと言うたら伐っても伐っても毎年どんどん生えて、たったの3ヶ月で親竹と同じ大きさになると言う神秘的とも言える成長力です。だから、作り手の技量や感性によって実に様々な形の編み方や竹灯りの形などもあるがぜよ。けんど、それがどんな形であったにせよ初めて目にするモダンさを超えて、古里に帰ってきたような安堵感を誰もが持つのかも知れませんぞね。


それにしても、この大都会のビルの中に突然現れたような竹の館。壁面や仕切り等いたる所に竹編みが使われちょって、食事の前にこれほど楽しませていただけるお店はそうそうないがです。砂漠を行く旅人がオアイスを求めるように、田舎者の自分は人混みに疲れたら、又ここに足が向きそうやにゃあ。


渡辺竹清先生の笑顔

渡辺竹清先生


渡辺竹清先生の工房には近くを通りかかる度にいつもお邪魔せさていただきよりますぞね。まっこと急にお伺いする事も多々あって、ご高名な竹芸家の大先生やにもしかしたら、こじゃんと迷惑をかけちゅうかも知れません。


けんど、ここの工房に来たら、たとえ先生が仕事はされていなくとも凛とした空気感があるきに、どうしても引き寄せられてしまうがぞね。竹と真っ直ぐに向き会うちゅう人だけが放つものがあって、自分が引き寄せられるのと同じように竹を志す人が自然と集うてくる幸せな場所やと感じちょります。そして、かっては祖父がやってきて、同じように座る、同じように話す、同じように作品を手にした。一緒に工房に来させて頂いた事は一度しかないけんど、そんな残り香のような面影を感じる事のできる大好きな空間ながです。


さて、今日は時間があまりないですきにご挨拶だけで早々に引き上げさせて頂こうかと思いよったら「ああ、これ持って帰り...」持たせてくれたのは虎竹の立派な網代花籠ながぜよ。「おじいちゃんが持ってきてくれた虎竹で編んだものだから」まっこと、こんな高価なものを自分のような者に感極まって言葉にならんがぜよ。


けんど今まで何度こんな事があったろうか?先生は自分がお伺いするたびに昔を懐かしみ祖父を思うてくれて、自分にこうやって作品を渡してくれるがです。そして、その都度考えるのは祖父の大きさ。「竹に、しっかり取り組んでいるな...」渡辺先生は、そうやって優しく声をかけてくれますけんど、先生や祖父、そして父の足元には、全然及ばんがです。ただ、竹の先人の皆様がやられて来た竹の道を歩ませてもらうだけ。


この花籠は、虎竹を見事な網代編みに仕上げちゅう逸品ですが、中のオトシを拝見させて頂いて又ビックリ。こりゃあ凄いがぜよ!なんと塩月寿籃さんの手がけた漆塗り。竹虎にも祖父にも縁の深いお二人ぜよ。両方を手にしたら胸が熱くなって込み上げてくる。ずっと我慢しちょって一人になって思いっきり声をあげて泣いたら、また、走りだすがぜよ。


竹虎前掛けについて

竹虎前掛け


いやいや、まっこと驚く事がありましたぜよ。先月は立て続けに3件も竹虎前掛けのお問い合わせを頂戴したがです。「是非販売をして頂きたい」と言うような内容ながですが、ただ単にお問い合わせを頂くだけやったら別段大騒ぎする事でもないかも知れませんちや。けんど、それぞれの方が自分が前掛けをして歩きゆうのをご覧なられて、「あれっ!?」と思われたのか、どうなのか分かりませけんどとにかく、そうやって前掛けのお問い合わせをされちゅうがです。


お一人の方などは東京で見かけられたと言いますきに、こりゃあ、まっことビックリしたがぜよ。まあ確かに最近は、会社にいる時だけではなくて県外に行く時にも付けちゅう事が多いがです。実は前掛けは結構保温性がありますきに、冬場は寒がりの自分には格好もエイし、温かいし一石二鳥ながちや。


ちょうど先週の事ですけんど前掛けを製作していただきゆうメーカーの方が、わざわざ遠くから会社見学にお越しになられちょりましたが、竹虎の前掛けは実際に竹工場で使う事を考えちょりますので生地も厚く、染めもしっかりしたものをご提案いただいちゅうがです。ちっくとお値段も張りますので次々と作っていただくワケにはいきません。けんど、最近は前掛けを使うたショルダーバックや、リュックサックも布鞄職人さんにお願いして作ってもらいゆうがです。これが竹虎のロゴマークも入っちょりますし丈夫な生地やし、手前味噌で申し訳ないがですが、なかなかの出来映えぜよ。


けんど最初は、そもそも前掛けのバック等は全く作るつもりなどなかったがです。布鞄職人さんのおばあさんと話しをしているうちに、「ああ、竹の熟練職人さんと同じ事を言われゆうにゃあ」「若さとは年齢の事やないにゃあ、ハートの熱さの事ぜよ」と嬉しくなってきて、ついつい作る事になったがです。そして、出来上がったリュックで1泊旅行にでかけてみたら、これが、こじゃんとノウがエイ(使い勝手が良い)。それから、こじゃんと愛用しよります。


実はフェィスブックのグループ「日本唯一虎竹部」の部員の皆様には少し前から限定でお分けさせてもらいよりますが、いつか竹虎のショルダーバックやリュックなど提げられた方とどこかで偶然でもお会いできたら嬉しいろうにゃあ、そんな事を想像して楽しみにちゅうがです。


虎竹葉のお茶

虎竹茶


実は高知はお茶処とご存じでしたろうか?海のイメージのある高知県ですけんど、実は84%が森林という日本一の森林の多い県でもあって山の産物も豊富な土地柄ながです。お米などでも温暖の差が激しい場所の方が美味しいものですが、お茶も標高が高く気温の差がある傾斜地が良いうよです。傾斜地と言うのは水掃けがよいので果樹園としても適地と聞きます。水分が少ない土壌で果実が実りますので、その分糖度が上がるようながです。そう言うたら武市さんの無農薬文旦も下から登っていくのにこじゃんと大変なくらいの急斜面にありますちや。


農作物でも、そして人でもあまり恵まれすぎた環境よりも少しくらい大変な事があったほうがよりよく育つという事ですうろか?そう考えたら自分の中学から高校時代の6年間、明徳義塾での親元を離れての全寮制の生活は今にしたら、まっこと、かけがえのない時間やったと思うがです。


さて、仁淀川という美しい川が高知には流れちょります。大阪の淀川に似てるから「似淀川」が「仁淀川」になったと言われますが、この川の上流の山肌には川の流れに負けないくらいの美しい茶畑を見ることができるがです。寒暖の差にくわえて川からの朝霧なども味の良さの秘密。今までは地元で生産されゆう事も知られず県外産のお茶として流通していたそうですので、地元の美味しいお茶としてもっともっと知って頂きたいと思うがです。


日本唯一の虎竹で作りました虎竹茶も同じぞね。そもそも虎模様の竹の事すら藩政の時代から厳しく管理され、近代になってもほとんど知られずきた竹ですので、その竹葉のお茶など誰も知るよしがなかったかも知れません。けんど竹ならではの優しい甘さ、ほっとするような雰囲気に包まれる香り、自分が幼い頃から慣れ親しんだ竹屋を感じる味わいぜよ。寒い季節にこそ、アツアツのお茶にいれて是非一人でも多くの方に楽しんで頂きたいと思うちゅうがです。


竹葉の道

虎竹葉の道


天気が良かったら太陽の日差しが明るくて、冬の寒さも心地よく感じられる山道を登っていくがです。いつも車で行く事が多いですけんど、たまに時間に余裕があれば車から下りて自分の足で歩くようにしちょります。最近つくづく思うがですが都会の方と比べて田舎の自分は、ついつい車ばかり使うて歩く機会がこじゃんと少ないがです。県外に行くと移動は全て徒歩や電車の事が多いので、階段もあれば混雑で立ったままという事もあり、一日おったら足が棒のようになる事さえありますぞね。


歩くという事を、ちっくと見直して足を使うてみろうかにゃあ。そう思うたら、やっぱり足が向くのは虎竹の古里、焼坂の山。未舗装の道がずっと山頂の峠を越えて隣町まで続く道。けんど、舗装の道路と違うて足への負担が少ないせいですろうか?土の道というのは、たまに歩いてみたら歩きすやく、まっこと、こんなに結構気持ちのエイものやと思うがです。


竹林を脇に見ながら続く大きな山道から、竹の中に入っていく小さな山道に入っていったらおっと凄いぞね竹葉が一面小道に敷き詰められちょって、少しクッション性があってらか更に楽に感じられるがですちや。こんな優しい道やったら膝の悪い方などにもオススメできそうです。


ちっくと疲れて真上を見上げたら、真っ青な空に緑色の竹の葉が美しく映えちゃある。その竹葉の切れ間を一羽のメジロが渡っていくがぜよ。あれは、お父さんメジロやろうか?後を追いかけるように次から次へと飛んでいくメジロの群れ。竹林の葉音は人をリラックスさせる効果があると言われよりますが、音や見た目はもちろんやけんど、空気も美味い、香りもエイ。そして心地よいだけでなく、足にも優しいがやきに。いやいや、山道を歩くやったら竹林に限るがではないろうか。