真っ暗い、どこまでも暗い。ここは一体どころやろうか?自分は誰で、どこへ行くがやろうか?道はまっすぐのびちゅうだけ。立ち止まりながら、迷いながら、どうしようも無くなって、ここまで来たがです。
声がする「竹虎は、あの日ぜんぶ無くたやろ?」
自分が大学四年の夏、竹虎は大火災で本社も店舗も全焼したがです。あの時、不思議な声に導かれるようにして火事の発見者になり、駆けつけて、あまりの炎の大きさに狼狽する社員を集め、腰をぬかしてしゃがみ込む職人の前に立ち、ワケも分からないままやったけんど燃えさかる竹虎を背にて道を継ぐ決心をしたがぜよ。
「火事の最中、オヤジや祖父は、どうする言うた?」電気も止まった部屋に胡座をくみ相談しよった。窓ガラスが赤い火に照らされちょった。工場も店も燃えて何もなくなったけんど、数日後にはトラックに満載された商品を借り受けて祖父は遠く催事に売り出しに出かけて行った。
虎竹の里の皆様方、社員総出での後片付けの毎日。焼け野原になって何のかも無くなった竹虎の工場の向こうには、いつもと変わらん綺麗な青空が広がっちょった。あきらめるのは自分がすること。立ちすくす祖父の隣で竹の血がたぎるのを感じた時を思いだしたぜよ。ここで生を受け、ここに生きる事を誇りに思うたぜよ。
竹虎四代目が誕生した空を焦がす真っ赤な炎の夜。何を守るのか?何に自分の人生を使うのか?火事の炎も大きかったけんど、心の炎と、どっちが大きいがぜよ?「もともと、裸やったろう?」まっこと、何ちゃあない。父も祖父も、いやいや曾爺さんじゃあち。負けんかったきに今があるがやろう。
虎竹との出会い、戦争、本拠地移転など、何度も裸一貫から再出発した会社であり、そして、マイナスからのインターネットの取り組みやった。竹虎も今日から仕事始め、ゼロからのスタートぞね。2014年は激動の始まりの年、イバラの道元年と言うてもエイ。けんど、夜明け前が一番暗い。あの日と同じぜよ。ほら見てみいや、もう明るくなってきた。陽は又、必ず昇ると信じちょります。
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