この道数十年の竹炭職人でも土窯づくりの竹炭は自然相手の仕事。毎回、毎回試行錯誤が続くと言われよります。竹炭窯正面の焚き口に見える小さな小さな隙間の向こうには、炎が赤々と燃えよりますが、どうも温度が上がらない...。首をかしげて立ちすくむ竹炭職人。
あの小さな隙間におかれた薄い石板には、厚みや幅が数ミリ単位で違えたものが何枚か用意されちょります。微妙に違うサイズの石板に置き換えただけで、土窯の中の炎を自由にコントロールしゆうがぜよ。こりゃあ、まさに職人芸としか言いようがないがぞね。
けんど今回、どうもいつものように思い通りに焼けていないのは、窯の奥にある排煙口に続く穴の位置を5ミリ程度上げたせいやと話されよりました。たった5ミリで違うがか!?そんな微妙な神業みたいな仕事ぶりに驚くと同時に、竹炭に深い愛情をもち、誇りを胸に本当にちっくとの違いにこだわり、銀色に輝く最高級の竹炭を焼き上げるのには手間暇をまったく惜しんでない職人魂とでも言いますろうか、場合によっては一晩中つきっきりで見守りゆう大きな背中に改めて、こじゃんと感激してしまうがです。
ギッシリと割竹を窯立てして火入れしたのが朝。ところが、もう辺りが真っ暗になっているのにもかかわらず火がうまく回っちょりません...。排煙口の温度を何度も何度もチェックしながら記帳されよります。今までの燃焼時間、温度など細かい記録をずっと取りつづけゆう情熱には、まっこと頭がさがる思いながです。
排煙口の煙突をのぞきに窯の上にあがってみましたぞね。丸くなった煙突部分にもブロックが置かれ調整されよります。そして、中央には竹箸のような細く削られた竹が置かれちょります。ふと、横を見たら同じように煙に燻されて真っ黒になった竹ヒゴが数本。なんと、この細い竹ヒゴ一本で煙のでる量を調節し、ここでも窯の中の炎の具合を大きくしたり小さくしたりするそうぞね。
さっきの薄い石板と言い、この細い竹ヒゴと言い、ミリ単位の微調整で竹炭の出来映えが全く違うてくるがです。職人の長年の知恵と経験とで焼き上げられる最高級竹炭が普通の竹炭とは、ちっくと違うという事はこの窯と向き合う姿勢からだけでも十分お分かりいただけますろう。
コメントする