竹虎の竹

虎竹の里の日暮れ


何かあったら竹林にくる。思うたら二十歳前から、ここには来よった。誰に教えられたわけでも、言われたわけでもない。気がついたら、ここにおった。こんな田舎を軽蔑しちょった、大嫌いやったけんど、華やかな都会ばっかり見よったけんど、どういう訳やろうかにゃあ?最初から懐かしい気持ちがしよった。ずっと心が安らぐ思いがした。


この季節の谷間は日暮れが早いちや。カラスが飛んで行ったあの山の斜面にも、今まで陽射しがあったかと思いよったら、もう暗くなりゆう。


おっと、どうした事やろうか?突然、竹林が全員でしなりだしたがぜよ。ゴーーーーーーーーーーーと強い風が吹きだすがやきに、繁った竹葉が右へ左へ、ユラリ、ユラリ、その度、空が開けてほのかに明るくなる。


ああ、そうか...


そこに居るのは誰ぜよ?


弱い自分に、逃げたい自分にいつも力をくれるがは虎竹。教えてくれるのも、導いてくれるのも虎竹やきに。この竹の里では当たり前の虎模様の竹たちと、ただ、竹のように真っ直ぐに、曾じいさんが、祖父が、父ががあるいたこの道を、同じように歩いていける事に感謝。生かされちゅう事に心から感謝。まっこと自分のような男は、それだけながぞね。


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