120年の節目

安和海岸の竹虎四代目


断崖の続く海岸線を伝うようにして、一人の男が小舟に揺られてやって来る。波の穏やかな、さざ波の打ち付けるその小さな浜辺に引き寄せられるように辿りつく。


ガツン、、、、、


ほどなく船底は浅瀬に乗り上げる。


波打ち際に降り立つ地下足袋姿の男。羽織ったハッピには鮮やかに染め抜かれちゅう「竹亀」の文字。ずっと丸い小石が敷き詰められたような浜ぜよ。歩くたびにザッザッ...と小気味のエイ音がする。松林のずっと向こうに高くそそり立つ焼坂に、鮮やかな鶯色の竹林が揺れて手招きしゆう。


「良く来たにゃあ」


どこからともなく声がする。


「何や、竹まで土佐弁かいな...」


ザッザッザッ...。頭に巻いた手ぬぐいを締め直し、真っ直ぐ竹の山に歩きだす。


「どうして、こんな田舎まで来たがぞね?」


足を止めることもなく、ちっくと笑みをこぼしながら一言つぶやくがぞね。


「ベッピンさん、あんたに会いたいさかい」


夢を抱き、覚悟をもって遙か遠く浪速の町からやって来た。見上げる谷間から風が吹くおろしてくる。竹虎初代、宇三郎がその時に感じた風。その風を今、自分が感じられるか、どうか?100年前の声を今、自分が聞けるか、どうか?


幼い頃から竹と遊んだ大好きな安和の海。たった一人でここに来る。自分に問う事はこれだけ。


竹虎は明日から創業120周年の節目を迎える。


伊達巻き用鬼すだれ

鬼すだれ


鬼寿とも言われる伊達巻き用鬼すだれは、お正月のお節料理に使うのに活躍する竹製品ぜよ。けんど、お節料理いうたら、そのひとつひとつに、験担ぎと言うか縁起の良い言われがあると聞いちょりますが伊達巻きには一体何かあるろうか?新春のスタートに、伊達正宗の派手やかさに、あやかっちゅうのか?などと何となく思いよりましたが、聞くと巻物なので勉学向上を願たものやそうながです。お節ひとつとっても知らない事があって、歴史のあるモノには先人の知恵が詰まって面白いものながです。


鬼寿、鬼すだれ、「鬼」の文字のつくものには美味しい大根おろしが出来る鬼おろしがあるがです。ギザギザになった部分が手に触れるだけで痛くなるほどの、鋭利な鬼のような歯を持っちょりますけんどこっちの鬼も負けちょりませんぜよ。


鬼おろしのシャープな歯とは又違うて、竹でも一番堅く丈夫な竹表皮部分を使うた肉厚の「鬼の歯」は、こじゃんとしっかりしちょります。伊達巻きなど作った事もないがですが、こんな竹の調理道具を手にしたら、ちっくと使うてみとうなってきますぞね。台所からは竹製のものがドンドンと無くなりましたけんど、こうやって数少ない昔ながらの道具があって使うて頂ける機会があることが、まっこと嬉しいがぜよ。


雑誌「とさぶんたん」に掲載いただきましたぜよ

雑誌「とさぶんたん」


土佐文旦(とさぶんたん)と聞いたらまず高知県を代表する果物が思い浮かびますけんど、今回の「とさぶんたん」は高知青年会議所さんが60周年の節目を記念して刊行した本の名前ながですぞね。


ぶんたん=文化を探求と言う事で、土佐の知らないモノを知らない仕事を、人を発見して紹介していくとコンセプトで作られた本やそうです。土佐の文化探求委員会なるグループが集まり、それぞれの取材をして本にしていったそうですけんど、高知で生まれ育ってこの歳になってからでも地元の事やのに知らない事があって驚く事も多いですきに。これは考えただけで楽しいにゃあ、ワクワクする仕事やったに違いないがぜよ。広い高知県をアチコチされて委員会の皆様は、ちっくと大変やったかも知れませんけんどその甲斐あって高知の文化、技、モノ、食、暮らし等、まっこと良く集めたにゃあと感心するような色々なジャンルを網羅しちゅう面白い一冊になっちゅうがです。


竹虎は「技」の中で紹介いただいちょります。日本唯一の虎竹の事は、もちろんですけんど、会社の歴史や、仕事の壁、自分の、いつも考えている事などいろいろと掲載いただいちゅうがです。一番言いたい事はやっぱり坂本龍馬さん言うた言葉。


「世に生を得るは事を為すにあり」


誰でも、この世に生まれた意味があると思います。その意味をずっと探しながら生きていくのかも知れませんが、そしたら竹はどうですろうか?この虎竹の里にしか成育しない竹は何故か不思議な虎模様が付くがです。この竹達も生まれてきたからには何かの役にたち、誰かに喜んでもらいたいと強く願うちょります。虎竹も生きる事に何かの意味があるとするならば、自分はそのために一生かけて全力で取り組みたいと堅く心に誓うちょります。


もう一頑張り、虎竹の里の運搬機

虎竹の里の竹運搬機


虎竹の里の山道に入っていくと道路脇に、他の所ではあまり見かけないであろう機械が置かれちょります。何度かご紹介させて頂いた事のある機械ですけんど、そもそもこんな山の中で何のための機械やろう?大自然の中に似つかわしくないモノですきに、初めての方などは、こじゃんと不思議に思われるかも知れませんちや。


そうそう、ミカン畑で見かける運搬用のモノレールなどは、ちっくと似た感覚ではないかと思うがです。えっ?運搬用のモノレールをご覧になられた事がないですろうか?そうですにゃあ、これも当たり前と思うちょりましたけんど、ご存じ無い方も多いかも知れませんぞね。虎竹の里は温暖な南向きの斜面が多いせいかミカン、文旦、ビワ等果物の栽培も昔から盛んやったがです。急斜面の果樹園は水はけが良くて美味しい果物ができるそうですがそれだけに作業は大変ながです。そこで収穫した果物を運び出すために、小型のモノレールが走っちゅうというワケながです。


小学校の頃果物畑に遊びに行って、果樹の間をクネクネ走るレールを見て理由が分からんかったですけんど、大人達が働く姿を見て、こりゃあなるほど。これは無くてはならないモノレールぜよ、と納得した事がありますぞね。ミカンや文旦などを黄色いプラスチックのケースに一杯入れると、なかなかの重量があって運ぶのには骨がおれますがモノレールやったら一度に何箱も楽々運べるがです。


虎竹も全く同じ事、急斜面の細い山道から運び出すのは、ちょっとやそっとの事ではないがぜよ。竹は果物のように同じ場所で収穫するという事ではなく、今年はあの竹林、今年は、この竹林と入る山がそれぞれ違いますきに、モノレールではなくキャタピラー付き。自由に動ける運搬用機械で竹を運び出してくるがです。虎竹の伐採は来年1月末まで続くがぜよ。竹の運搬用機械も、そろそろ疲れがたまっちゅうかも知れんけんど、一年分の竹材は、この時期にしか集める事はできません。あと少し、もう一頑張りやってもらわんとイカンがちや。


手作り虎竹タガのおひつ

虎竹タガおひつ


日本唯一の虎竹のタガをはめるおひつ作りも手作りですき、なかなか大変な所があるがです。木と竹は同じ自然素材と言うても随分と違いがありますきに、職人さんにお話しを伺うと意外に知らない事か多くて、まっこと時間を忘れて話し込んでしまいますぞね。


これからのモノ作りには工作機械を上手く使い、少しでも効率化していく事も求められちゅうと思います。けんど、昔から作られてきた伝統の技術には、やはり人の手仕事が出来映えを左右する部分が多くあるがぜよ。たとえば大量生産の工場では、おひつの内側を機械で削るのが普通ですが、ひとつ、ひとつ丁寧に仕上げていく職人さんのおひつはすべて手削りでカンナをかけて仕上げていくがです。


シャカシャカ......


シャカシャカ......


手早く動くカンナかけの仕事が終わって内側を手で触れてみたら、まっこと木の板を貼り合わせたばかりの時のと比べたら見た目では少しの違いしかないように思いよりましたが、圧倒的な手の感触の違いに、ちっくと驚きますぜよ。機械でこの工程を仕上げると綺麗なように見えちょっても、実は細かい木の繊維が粗く毛羽立つようになっちゅうそうです。その反面、カンナ掛けでの手削りは木の繊維をスッパリと切る感じ、こうすることにより水切れがよく乾きやすくなり使用しているうちに発生する黒ずみを抑えてくれるがです。


生活の中で使う道具たちは、職人の手で完成した時が終わりではなく、実はそこからがスタートながです。竹細工は丸い竹を切ったり、小割する程度の事は機械の力を借りる事もできますけんど、その後の細やかな工程は、ほとんどが職人の手に頼る事になります。長く使う間に、どうなるか?使いやすいか?愛着が湧くものか?手作りしたものならではの温もりや使い勝手の良さは、木であっても、竹であっても同じことながです。


一番の作務衣

作務衣,さむえ,SAMUE,竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI、TAKETORA)


作務衣は動きやすい上に汚れも気になりませんし、中に着る衣類を工夫したら一年通してずっと着られる、まっこと便利な衣装だと思うちょります。やっぱり昔からずっと継承されてきた事には、一朝一夕では分からないそれなりの理由というものがあるがぞね。


最初に作務衣を着たがは職人の先輩方が着こなしているのを拝見して、その色落ちや、形、生地の厚みの風合いなどが、こじゃんと格好エイと思うたきながです。そこで、まず最初は土佐紬という地元の生地で作務衣を作ってもらい、店の制服として使いよった時期があるがぞね。ところが、残念ながら長い伝統を持つ土佐紬の生産が後継者不足でしたか終わってしまう言う事で、その後の作務衣についてはあれこれ目についた数社のメーカーさんのモノを着よりました。


けんど、着こなしている内に生地であったり、細かい仕様が気になってくるものが多いがです。やはり自分達の場合にはたまの休日にリラックスする。室内着のような着方ではなく、仕事着として毎日着用するものですので中途半端な妥協はようせんなってきたがです。当時はインターネットなどありませんでしたので、職人仲間の方に聞いたり、本で探したりして更に色々な作務衣を試しているうちに、藍染めにこだわりがあり着心地もしっくりくる作務衣メーカーの笹倉玄照堂さんに出会うがです。


永六輔さんがイメージキャラクターをされていた会社様で、昔ながらの藍染めと言われるだけあってから生地の色落ち具合がなかなかエイ感じ。ちっくとジーパンの色落ちを楽しむような感覚で着られるので、このメーカーさんと出会うてから作務衣を着るのが更に楽しゅうになったようにも思いよります。冬用の特別厚手の生地のものを除いては、今では十数着ある作務衣のほとんどが笹倉玄照堂さんのものながです。いっつも自分が作務衣でいるせいですろうか?作務衣が欲しいと言われる方もおられますきに、背中の首に近いところに竹虎ロゴマークを刺繍していただき使い勝手がエイようにお尻にポケットを付けていただいたオリジナル作務衣を数年前よりお願いして作っていただきよります。


いやいや、けんど、繊維関係のメーカーさんの宿命やと思いますけんど、歳月と共に糸も変わるので生地が変わってきます。サイズや仕様も微妙に変更されちょります。もちろん、だんだん進化してきちょりますし、今の作務衣はそれはそれで素晴らしいものではありますぞね。けんど、ずっと昔に自分が一番好きやった、藍の色合いの濃い廃盤になってしもうちゅう作務衣がリバイバルで、又出来ないやろうかにゃあ。作務衣は長く愛用して色落ちを楽しめるものですきに、時々、そんな叶わぬ夢を思うてみたりするがぜよ。


竹虎テーマソング!唄のクリスマスプレゼント

竹虎の唄「まっすぐ」


「ここはナチュラルな自分になれる」


竹虎の工場でそう言われたのは高知のシンガーソングライター江口美香さん。そこで、先日のブログでもお話しさせていただきましたように、急遽竹虎の工場で竹に囲まれて社員の歌声を録音する事になったがです。年末近くなって色々と注文の商品もありますきに、工場の音のでる機械を止めるのは、ちっくと大変ではありましたけんど考えたら虎竹の唄ですきに沢山の虎竹に聞いてもらえる。ここほど歌うのにふさわしい場所もなかったがです。


さて、そんな録音が無事に終了して、江口さんの歌声は本格的なスタジオでレコーディングして頂いて、出来上がったDVDが本日なんとご本人が届けにきてくれる事になったがぜよ。先日の録音前に工場でソロの歌声をこじゃんと聴かせていただきましたけんど、社員の歌声が重なるとまた深みが出るというがですろうか?やはり日頃から虎竹の里で竹を見て、竹にふれ合いしている声やきに試し聴きさせて頂いたら、ちっくと感極まるような音になっちょりましたぞね。


いよいよ、そのDVDが竹虎の唄「まっすぐ」完成。今日お届けに来てもらえるち。おっと、ちょうどクリスマスイブやいか!?これは虎竹の里にとっての最高のクリスマスプレゼントになりますにゃあ。是非早いうちに皆様にもお聴きいただけるようにしたいがです。


高知ベンチャーサミット

高知ベンチャーサミット


高知ベンチャーサミット(Venture Summit)とは一体何ながやろうか?初めて電話で聞いた時には何やら意味が分かりかねちょりましたぞね。けんど、まあ学生さんが中心になって頑張りゆうみたやし、パネラーで登壇する建匠の西村龍雄さんや、株式会社グラディアの森本麻紀さんを存知上げちょりましたので何やら面白そうやにゃあと思うてお話を伺う事にしたがです。


いやいや、そしたら会社に来られた学生さん達の胸を張って話す態度や、イベントの内容がまっこと、しっかりしちょります。このまま社会人になって、どこかの営業に行ったらトップセールスマンになるがやないろうか!?そんな、しっかりしたトークに感服してしもうて、こりゃあ、こんな学生さんが集まるイベントやったら自分から参加したいにゃあ。そう思うて、二つ返事で快諾させて頂いたがぜよ。


尾崎高知県知事


後で届けていただいたパンフレットを拝見させて頂いたら、何と尾崎高知県知事まで来られる予定になっちょります。考えたら一昨年に自分達の勉強会の挨拶にお越し願うてからいっつも行き違いで会う機会もありませんでしたきに、こりゃあ楽しみやと思いよりましたが、お忙しい知事が良く来て頂けるようになりましたね?と訪ねると、


「兎に角、知事室へ押しかけて押しに押しました」


すごい...何と言う行動力ですろうか。まっこと自分の学生の頃が恥ずかしゅうなったがです。若い学生さんたちの熱意のせいですろう。そして、次の世代への期待を込められちょったがですろう。尾崎知事の挨拶も、こじゃんと熱のこもった素晴らしいものやったがです。


榊原健太郎さん


サムライインキュベートの榊原健太郎さんは、正直存知上げちょりませんでしたけんど自分の志で全国を回り起業家を応援されていう話しには心を打つものがあったがです。起業家を目指してプレゼンする学生さんへのコメントも、さすが長い間いろいろなビジネスの立ち上げに関わった方ならではの鋭く、的確なご意見がありましたぞね。まっこと自分の知らない事というのは面白いものですにゃあ。


竹虎四代目


今回、この高知ベンチャーサミットにパネラーとして参加させていただいて、若い学生さんたちを見る目が変わりましたぜよ。実は、高知の大学には何度か講演にお伺いさせていただいた事がありますけんど、今まで、こんな風に何かに真剣に取り組む学生さんたちを、まっこと知りませんでしたちや、会うた事がなかったがです。


実行委員長をされた森光さんは同じ須崎市出身ですし、また、まだ大学1回生という事もあり関心をもって拝見させてもらいよりましたが、他の学生さんたちも、一言で言うたら人間力言いますろうか。自分をしっかり持って、やりたい事が決まっちゅう。あるいは、人の役の立ち方を知りたいと思いゆう。凄いとしか言いようがなかったです、圧倒されましたぜよ。プレゼンの最後で司会者の学生さんから、


「飛び入りで何か発表されたい方はおられませんか?」


そんな問いかけに瞬時に真っ直ぐの手が何人もあがります。経営者の勉強会でも、何かありませんかと聞いても誰も他人事にように思うて動く事がない事もあるのに、ここに集まっちゅう学生さん達はどうですろろうか?自分が、このやる気を見習わせてもらいたいですちや。


最後の締めの挨拶で、飛び入りで登壇された学生さんに前に来てもらいましたぜよ。この方たちの数年後を思いながら、竹虎ももっと頑張らんとイカンと胸に誓うちょります。



新虎竹茶が出来ましたぞね。

虎竹茶


虎竹茶がようやっと出来上がってきましたぞね。実は夏前からずっと売り切れで沢山のお客様にお問い合わせも頂戴し、こじゃんとご迷惑をお掛けしちょりました。まっこと申し訳ございませんでした。


実は、竹の伐採は秋から翌年の1月いっぱい。一年の内でも今の期間にしか原材料の虎竹葉を確保する事ができませんので、自分達こそ早く飲みたいと思いよりましたがずっと製造する事ができずにジリジリしよったがです。ようやく待ちに待ちよった伐採シーズンが来て、職人はじめ女性スタッフも動員してもろうて皆で竹枝を集め、丁寧に竹葉を手摘みしていきます。竹葉は乾燥しやすいですきに摘み取った後は手早く管理するがです。


竹の小枝は逆ハの字型しちょりますので、こじゃんとかさばりますけんど、枝から竹葉だけを集めても結構かさばるものです。原材料を集めて、いつも山出しに使いよります2tトラックに積み込んだら一枚、一枚はあんなに小さな竹葉やのに何と荷台に満載となりましたちや。そして、そのまま製茶メーカーさんに持っていって製造してもろうたがです。


虎竹茶


今回の虎竹茶で一番こだわったのは味ですぜよ。日本唯一の虎竹の風味を全国の方に知ってもらいたいと思うて作った竹茶ですが、やはり美味しく飲んでいただく事が大きな課題やったがです。


そこで、試作段階では色々と考えた事があったがです。特に高知県特産のショウガは自分が冬場の風邪予防に長年使いゆう事もあり、何とか一緒にする事はできないろうか?そんな事も思いよりましたけんど、最後の最後に思うのはやはり、虎竹の里の竹でおもてなししてきた原点の事ちや。もともと虎竹の里の竹葉を煎じで遠くから来られた方にふるまう、その時のお茶は当然竹葉100%やったがやきに、結局あちこち迷いもありましたものの、虎竹茶だけにこだわり製造する事になったがぜよ。


虎竹茶


ただ、そしたら原料は同じでワンランク上の味を目指すやったら、何らかの製法の違いで味の良さを出したいにゃあ。そこで製茶メーカーの職人さんにも知恵を出してもろうて、取り入れたのが「蒸らし」加工ながです。蒸らしの工程を入れる事で今まで以上の香り、色、味を出すことが出来るのではないか?


理論より、まず試作して作ってみる事、動いてみる事ですきに早速試してみる事にしたがです。届いたサンプルをドキドキしながら封を開けてビックリ。とにかく香りがエイです。ぽかぽかとした天気の良い気持ちのよい一日。竹林にいってサラサラと音をたてる爽やかな風の中で深呼吸するような、まっこと虎竹の里におるかのような香りに確かな手応えを感じたがぜよ。また、色合いも前の虎竹茶と比べて若竹の葉のような美しい緑色をしちゃある。これは、こじゃんとエイお茶になったにゃあ。


繊細な竹炭窯

竹炭用の割竹


一昨日に気むずかしい竹炭窯のお話をさせてもらいましたけんど、実はそれだけでなくて繊細な神経を持っちゅうというお話をさせていただきたいと思うちゅうがです。いやいや自分も、まさかと思いよりましたちや。大きな図体をしちょりますので竹炭窯は。けんど、まっこと繊細な神経を持っちょります。ちょうど、身体だけは関取のように大きいのにノミの心臓で、ちっくとの事にも大騒ぎして驚く。漫画か何かに出てきそうな大男を思い出させるがですちや。


けんど、まさに、この大男、いやいや巨人と言うた方がエイですにゃあ。それだけ大きな大きな竹炭窯ながぜよ。その大きな窯の中にギッシリと割竹を飲み込んで、2週間という時間をかけて最高級の竹炭を焼き上げるがです。


繊細なというのは、本当に少しの気温の変化、湿度、あるいは竹材の乾燥具合などによって焼き上がりの竹炭が全然違うてくるから、ちっくと面倒ながぞね。少し前の事ですけんど、火入れしたばっかりのタイミングでなんと台風がやって来た事があるがです。雨はそれほどの違いにはならないそうですが、まず風が煙突からの煙をスムーズにいかさん、邪魔をする。そして台風接近で気圧が変化する、これが竹炭の焼きにこじゃんと影響すると言うがです。


気圧か...こりゃあデリケートやちや。初めて聞くとそんな風にも思いますけんどこれが意外に関係があるそうぞね。竹炭窯がこんなに神経質ですきに、職人もこじゃんと気づかいしよります。材料の竹は同じ長さに揃えて、同じ幅に割って窯の中に入れるがですが、同じように割った竹材でも竹の元の部分と中程と、ウラ(先端)部分では竹の厚みが違うので同じ時間乾燥させても乾燥具合に差ができてきますちや。そこで、窯の中でも場所により温度が違いますきに、それぞれの部材によって置き場所が決まっちょって焼き上がりが均等になるように工夫しゆうがぜよ。まっこと炭の歴史というのも、かなり古いですけんど、それだけに奥が深い、深い何ぼでも炭窯の奥から面白い話しが出てくるがです。


竹屋の冬痩せ

虎竹山出し


朝は息が白く見えるほど寒さが厳しくなりますけんど、虎竹の古里、焼坂の山道をトラックでゴトゴト上がっていって今日は虎竹の積み込みから仕事が始まりますぞね。道路脇には山の職人さんが竹を集める場所が何カ所も作られちょって、山のテッペンから竹を積み込みながら下っていくがぜよ。


それにしたち山の空気は、まっこと気持ちがエイ。明るい陽射しが差し込み、いつものように小鳥の遊ぶ声が聞こえるちや。2人一組になって竹を荷台に放り上げ、一人が荷台で綺麗に積み込む。たぶんトラックで竹を出すようになる前から、荷車に竹を積んで人力や馬で運びよった頃から何ちゃあ変わらない虎竹の里の、この季節の風景ですろう。


虎竹土場


山からトラックで運びだして来た竹は下ろされて、縛っちょった紐を解かれ広い土場に並べられるがです。どうして紐を解かれるかと言いますと一本、一本、それぞれの竹を見て、色づきはどうか?キズはないか?太さはどうか?細かく選別されていくがぜよ。


この選別作業も実は一回ではないがぞね。最初は山の職人さんが自分で選別するがです。それを今度は再度間違いないか確認しながら選り直していきます。そんな手間をかけて色づき、太さ別に選り分けした虎竹達を再度一束づつの束に縛っていくがぜよ。色づきのよい虎竹もあれば、そうでない竹もある。太いものも、細いものもある。まったく自然まかせ、山の恵みですきに。それぞれの竹をまとめて積み込んで一年通して使うて行きます。運んで来た竹を解いたり、選ったり、縛ったり、又積み込んだり。


竹屋は夏痩せはしませんぞね、「冬痩せする」昔からそう言われちゅうがです。けんど、あれやにゃあ...冬痩せする竹屋さんち今の日本にどれくらいありますろうか?気持ちのエイ青空の焼坂を眺めながら思うてみますぞね。


気むずかしい竹炭窯

竹炭窯焚き口


この道数十年の竹炭職人でも土窯づくりの竹炭は自然相手の仕事。毎回、毎回試行錯誤が続くと言われよります。竹炭窯正面の焚き口に見える小さな小さな隙間の向こうには、炎が赤々と燃えよりますが、どうも温度が上がらない...。首をかしげて立ちすくむ竹炭職人。


あの小さな隙間におかれた薄い石板には、厚みや幅が数ミリ単位で違えたものが何枚か用意されちょります。微妙に違うサイズの石板に置き換えただけで、土窯の中の炎を自由にコントロールしゆうがぜよ。こりゃあ、まさに職人芸としか言いようがないがぞね。


竹炭窯の石板


けんど今回、どうもいつものように思い通りに焼けていないのは、窯の奥にある排煙口に続く穴の位置を5ミリ程度上げたせいやと話されよりました。たった5ミリで違うがか!?そんな微妙な神業みたいな仕事ぶりに驚くと同時に、竹炭に深い愛情をもち、誇りを胸に本当にちっくとの違いにこだわり、銀色に輝く最高級の竹炭を焼き上げるのには手間暇をまったく惜しんでない職人魂とでも言いますろうか、場合によっては一晩中つきっきりで見守りゆう大きな背中に改めて、こじゃんと感激してしまうがです。


竹炭窯立て


ギッシリと割竹を窯立てして火入れしたのが朝。ところが、もう辺りが真っ暗になっているのにもかかわらず火がうまく回っちょりません...。排煙口の温度を何度も何度もチェックしながら記帳されよります。今までの燃焼時間、温度など細かい記録をずっと取りつづけゆう情熱には、まっこと頭がさがる思いながです。


竹炭窯排煙口


排煙口の煙突をのぞきに窯の上にあがってみましたぞね。丸くなった煙突部分にもブロックが置かれ調整されよります。そして、中央には竹箸のような細く削られた竹が置かれちょります。ふと、横を見たら同じように煙に燻されて真っ黒になった竹ヒゴが数本。なんと、この細い竹ヒゴ一本で煙のでる量を調節し、ここでも窯の中の炎の具合を大きくしたり小さくしたりするそうぞね。


竹炭窯の割竹


さっきの薄い石板と言い、この細い竹ヒゴと言い、ミリ単位の微調整で竹炭の出来映えが全く違うてくるがです。職人の長年の知恵と経験とで焼き上げられる最高級竹炭が普通の竹炭とは、ちっくと違うという事はこの窯と向き合う姿勢からだけでも十分お分かりいただけますろう。


新品の竹皮草履

竹皮草履


長く愛用した竹皮草履が履けなくなったがです。前ツボが外れただけやったら何とか修理もできますけんど、先端部分の編み込まれた竹皮まで少しほどけてきちょりました。それでも、毎日毎日、靴から履き替える度ずっと履き続けちょりましたが、ついに力尽きたがですろうバラバラ...と、細く短冊状になった竹皮がほどけてしもうたちや。


たまたま竹皮草履の男性用をあまり製造していなかった事もあって、ちっくと品薄でしたきに数日は普通のスリッパで過ごしよりました。けんど、やっぱりイカン。改めてしみじみと感じましたぜよ。竹皮草履の気持ちのエイ履き心地が染みついた足にはどうしても我慢できんがです。


「足が、もう限界にきちゅうきに...」


職人さんに男性用を急いで編むようにお願いしましたぞね。そして、昨日ようやく出来上がった草履を履けるいつもの平穏な毎日がやってきましたちや。大袈裟なようですけんど、ずっと愛用し続けゆう方やったらお分かりいただけますろう。


けんど、真新しい竹皮草履というがはエイにゃあ。足を入れた時に、ピシッとして前ツボのワラの高さがあったり、形が足に馴染んでなかったり、久しぶりの新品の草履の感触を楽しみましたぜよ。昨日の今日やけんど早から足に馴染み始めちゃある。もう明日には自分の右足、左足それぞれに寄り添うようにフィットするようになってくるがぞね。まっこと、竹皮草履の凄さに感服するがです。


足元キラリ、竹林の地下足袋

虎竹の里の朝


山の仕事は日の出と共に始まるがです。だから竹虎の朝も昔から、こじゃんと早いがぞね。朝6時に電話がかかってくる事も珍しゅうなかったちや。だから、子供の頃から朝は家族揃ってご飯を食べる事は少なかったがです。父親は、起きたらまず会社に行く。携帯電話も無い時代、山の職人さんと連絡とれるのは早朝の短い時間だけやったきですろう。


けんど、それにしたち幸せやにゃあ。うっすらとモヤがかかった木々の間から、神々しいような美しい朝日を眺める事ができる。谷間に流れる澄み切った水の音も耳に心地がエイ。毎日の事やきに、ついつい当然と思いがちになりますけんど、これは贅沢な事でもあり有り難い事でもあるがですろう。


地下足袋


竹を伐採できる時期が決まっちゅうきに、日曜日とか祝日とか人の決めた暦は関係ないがぜよ。そんな事より気になるのがは、大自然のご機嫌伺い。そうぜよ、やっぱり天気の事だけながぞね。雨が降ったら次の日でも足元が滑ってしまう急斜面続きの曲がりくねった細い山道やきに、キャタピラー付きの自慢の運搬機さえ登れなくなるがです。竹の切り方でも紹介しちょりますが、そんな足場の悪い竹林の仕事を支えるのはやっぱり昔ながらの地下足袋やきに。


おっと、今さっき日の光がスポットライトみたいに足元を照らしましたぜよ。足先のふんばりが、これやないとイカン言われます。先人が色々体験されて研ぎ澄まされてきた知恵は、まっこと凄いものがありますけんど、あまり目立つ事のない足元にもキラリと道具が光りゆうがです。


竹影絵の紫陽花

竹ざる


焼坂に登り無数に並ぶ竹林の間から朝日が差し込んできたり。ふと仰ぎ見る竹の葉から南国土佐特有の真っ青な空がのぞいたりしたらなんと綺麗ながやろうか...と何度見ても感激するがです。


竹に和紙を貼った照明は昔から多用されてきましたし、どうやら、竹と灯りというのは相性がこじゃんとエイようですちや。真っ直ぐな直線美としなやかな曲線美、この相反するような竹ならではの線が織りなす光と影。小さな花が集まって一つの丸い花となる紫陽花のようだ。ご覧になられたお客様がポツリと言われます。


ああ、まっことそんな見方もあるがやにゃあ。竹編みをした職人さんにそんな思いがあったかどうか、ちっくと分かりませんけんどこうした竹の市松模様のような角張った線も、それを取り巻く縁の優しく丸い形も、どっちも竹という事は間違いないがぜよ。


庭園の結界

銀閣寺の結界


前に銀閣寺の催しに参加させて頂いたお話をしましたけんど、美しい庭園のあちらこちらに見る事のできる竹のあしらいの一つに結界があるがです。結界とは、ここから先は立ち入りご遠慮くださいという境界線の目印みたいなものですぞね。お茶席などでも良く使われちょって、竹虎にも以前は亀甲竹や図面竹といった銘竹で作られた色々な結界が沢山あったことを思い出されるがです。


屋外でも同じような意味合いで使われる竹の造作物に出会う事があります。大きな日本庭園などではなくても、ちょっとしたお宅の玄関先にあったりして日本文化の素晴らしさはこんな何気ない所にも表れちゃあると感じます。鍵がかかっているワケでも、頑丈な柵でもないただ竹を一本通しただけでテリトリーを見事に線引きされちゅうがです。


前にたまたま訪れた鎌倉のお寺でも竹の結界を拝見した事があります。けんどここ銀閣寺では、同じ結界でも少しやり方が違うぜよ。竹の弾力を活かしUの字型に竹を曲げて竹を横から差し込めるようにしちょります。どちらが、どうと言う事ではありませんがそれぞれの違いがあって面白いにゃあと思うがです。


小倉城庭園の結界


小倉城には「迎え虎」と「送り虎」という有名な絵が飾られちょります。虎と聞きますと、ちっくと気になって足が向いた事がありますが、このお城のすぐ近くに小倉城庭園というお殿様の別邸を復元したというお庭があるがです。懸造り(かけづくり)と言われる木造建築が目を引く池の縁を歩くと、銀閣寺で見た同じ竹のしつらえがされちょりました。庭師さんの伝統の技を感じたりしてあいにくの雨模様でしたけんど心は晴々して歩けるがです。


竹虎の唄「まっすぐ」

江口美香さん


まっこと、ひょんなキッカケからやったがです。高知で活躍されちょりますシンガーソングライター江口美香さんが、日本唯一虎竹の唄を作って頂ける事になったがぞね。竹虎の会社にお越しいただき虎竹を見てもろうてから、自分の事や虎斑竹(とらふだけ)の事をお話させていただいたら歌詞はすぐに出来たとのご連絡を頂戴しちょりましたが、


「竹虎はロック...!」


やと言われよりましたので、一体どんな唄になっちゅうろうか?演歌の間違いやないろうか?と思いよったがちや。


竹虎本社工場


そこで、唄のお披露目をしていただける言う事になりましたけんど、せっかくやきに竹虎の本社で演奏いただきたいと思うたがぜよ。職人や社員の皆に聴いてもらいたいのは当然やけんど自分達も初めて聴くのだったら、虎斑竹の唄です、虎竹達とも一緒に聴きたいと思うたがぞね。


竹虎の唄録音


無理なお願いを快くお引き受けいただいて、ギターだけかと思うたらマイクやらスピーカーやら音響の機材まで揃えてお越しいただいて、こじゃんと感激しましたが初めて拝聴した虎竹の唄には更に感激ぜよ。


こりゃあ、聴くだけじゃあイカン!イカン!自分らあも、この唄に参加したいと思いたってお願いしたら、ちょうどサビの部分で歌える箇所があるとの事!ラッキーじゃあ!早速部署ごとに四人づつに分かれて録音して頂く事にしたがぜよ。


工場での竹虎の唄録音


まず最初に、やっぱり社長が率先してやらんとイカンですろう。プロの方も使いゆうと言うヘッドホンを付けたら、こじゃんと音がエイですぞね。すっかりその気になって気持ちよく歌わせていただきましたちや。出だしの掛け声も入れたぜよ~。


竹虎の歌


社員には今日は江口さんの歌を聴くという事は話しちょりましたけんど、自分達自身が歌うことは全く予定にありませんでした。なんせ急な事です、ちっくと心配しよりましたが、さすが竹虎の社員は違うにゃあ。それぞれ皆、数回の練習だけでキッチリOKが出るがです。最後の職人のグループも思うたよりチームワークがよく、声も出てまっこと安心しましたちや。やっぱり、いっつも連携して仕事をしゆうきやにゃあ。まあ、無事録音も終了したがぞね。


竹虎職人コーラス


あまり大きな音のでる作業は控えちょりましたが、仕事をしながらの録音でしたきに所々に竹の音が入っちゅうかも知れませんけんど歌手の江口さんは、それもエイと言われよりました。そうやにゃあ、自分たちも歌うたけんど、竹の声も入った方が虎竹の唄らしいですろう。


竹虎テーマソング「まっすぐ」は来年の早い時期に、皆様にもお聴きいただけるようにしたいと考えちょります。実は竹虎は来年創業120周年になるがです。今回の唄は創業記念というワケではないがですが是非お楽しみにしちょっとうせよ(^^)


わらび細工の籠

シダ編み籠


竹虎にご来店頂いちょりましたお客様が、


「これは沖縄のワラビ籠ではないですか?」


と訪ねられるので、もしかしてと思うて詳しく聞いてみたがです。そしたら、やっぱりシダ編み籠の事やったですぞね。実は前にも同じような事がありましたきに、わらび細工の籠も写真では拝見したことがありますけんどワラビというのはシダ植物の一種と言うだけあって、もしかしたら呼び名が違うだけでほとんど同じ種類ではないか?そう思うくらい高知で作られてきたシダ編み籠とまっこと良く似ちゅうがですぞね。


シダの特徴は何と言うても水に強く耐久性がある事。素材自体でも目に見えて古くなったり経年劣化が少ないきに、編み込む職人さんにとっても材料確保しやすく、どちらかと言うたら作りやすい籠でもあるがぜよ。ワラビ細工も同じような素材というだけあり耐水性があり、何十年も使える強度のある籠やそうですちや。


更に編み方まで同じやったりしますので、普通の方がご覧になられたら間違うのも無理もないですちや。けんど、もともとこのような形の籠は食器籠として、脱衣籠、衣装籠等としても全国各地で編まれよりました。もちろん、シダだけではなくて竹や籐の籠でも見る事ができる定番の形でもあって、各地方に行って目にする機会がありますけんど、古い籠を見たら全く同じやったりするがです。


ワラビ細工も竹細工と同じで職人さんが高齢化して少なくなってから、近年は少なくなっちゅうというように聞いちょります。良質のシダの産地でもあり、かっては沢山の方が収穫のために山に入った、そんな歴史のある虎竹の里には今でもシダは沢山生えちょります。向こうの方まで、ずっと青々と茂るシダを見ながら手仕事の世界の厳しい現状を思うたりもするがです。


ドアの向こうは一面の黒竹

黒竹


こりゃあ、まっこと意表を突かれた格好になったぞね。エレベーターのドアが開いたら正面の壁が一面黒竹になっちょりました。日頃、竹を沢山見ている自分でも思わず足を止めてしまう程の迫力。あまり広くもないエレベータホールですけんど、何ともシックで落ち着いた雰囲気が漂ようてまるで黒竹の竹林に彷徨いゆうような気持ちにさえなってくるがです。


エレベーターのドアが静かに閉まりますと、まっこと更にちょっとした異空間におるような感覚、圧倒的な竹の存在感に、せっかくの古都での時間を和のテイストでもてなしたいという気持ちの表れちゅうようで何となく嬉しゅうになってくるがです。


ズラリと太さを揃えた黒竹が整然と並ぶその前の竹籠に、ちょこっと活けた花と緑が映えちゅうが違う。これが竹の持つ力ながやにゃあ...。色々な年代の方が、それぞれの見方をされるかと想像しますけんど、海外から来られたお客様には、こじゃんと評判がエイがではないろうか?もし、この竹をそれほど気にとめず行き来される方がいたとしても「何となく心地の良い場所だなあ」そんな風に、きっとこのしっとりとしたような空気感は伝わっちゅうはずぜよ。


やっぱり竹はエイにゃあ...。改めて、つくづくその魅力と素晴らしさを感じるがですが。親元を離れた子供が、両親や古里のありがたさに初めて気づくように、虎竹の里から遠く離れた土地でこそ竹の持つ美しさや可能性に気づかせていただくのです。


虎竹の里の荒海

虎竹花籠


竹虎のお店には日常使いする竹細工や竹製品の他に、高名な竹工芸作家の方が創作された作品から今となっては一体誰が作ったのか分からんなったような竹編み籠まで、実に様々な竹製品たちがあるがです。今まで、このような作品は実店舗にお越しいただかないとご覧いただけませんでしたけんど、竹の逸品として一部ではありますがご紹介させてもろうちょります。


この日本唯一の虎竹で編まれた豪快な花籠もそんな作品の一つながです。まっこと、この籠を見よりましたら高知の海を思いだしますぞね。大きなうねりが磯の岩に当たって砕け散る。荒波が渦巻く太平洋を竹で表したら、こうなるがではないですろうか?


虎竹花籠


緻密な編み込みの花籠には繊細な花が似合うかも知れませんが、こんなザックリと編み込まれた花籠にもこんな雰囲気だからこそしっくりくる花材があるはずぜよ。竹虎の工場の目の前には黒潮ながれる海が広がり、ちょうど本社前から枝分かれして入る旧道を少し行けば磯釣り客の方が来られるようなポイントもあるがです。この花籠を編まれた職人さんがこの地にやって来られて、ここにしか成育しない虎竹で、虎竹の里の海を編み込んだがやろうか?籠を眺めながら、そんな想像をしてみるがです。


物知りな竹角籠

母の竹籠


使い込まれた竹製品というのは、まっことエイもんぞね。竹籠自体が物申すでは無いですけんど、しゃべり出しても不思議ではないような風合いになってくる。いえいえ、少なくともどんな風に生まれ育ち今になっちゅうのか籠自体が雄弁に物語る事はあるがぜよ。こんな普通の角籠は、小さい頃の飯台にありましたにゃあ。果物置いたり、お菓子のせたり、時には天ぷらを天こ盛りしちょった。トレー替わりにも使うたりして母が大事に数十年愛用してきたものながです。家族や来客の方たちの思い出が編み目に染みこんじゃあせんろうか?


「ねえ、あの時はどうやったがで?」


もしかしたら自分より、竹虎の事を知る物知りの竹籠かも知れんちや。おっと、そう言うて周りを見渡したら、ゾロゾロ、ゾロゾロ...物知りの籠たちのオンパレードぜよ。泣いて、笑うて、ケンカして、そりゃあ、そうですろう。昔話に話しが咲きよりますぞね。


力竹


ひっくり返して見てみるがぜよ。底には幅の広い力竹が三本も通って補強されちょります。長く使う間には、この力竹たちにも、こじゃんとお世話になったろう。こうやって並んだ力竹三兄弟にもお礼を言いとうなってきますちや。


日本の台所はいつからキッチンになり、こんな竹達が姿を消したがやろうか?何十年も後になってから、その人を偲ぶような、その家庭を物語れるような竹細工があったらエイににゃあ。竹の山では閑をもてあましちゃある事も多いけんど、考えたら竹が出来ることは、まだまだ一杯あるはずぜよ。


虎竹の里生放送

虎竹伐採


昨日は午後6時からのテレビ番組で、竹虎本社を生中継していただいちょりました。竹は身近にありながら意外とご存知ない方が多いがですが、一年の中でも伐採する時期が決まっちょって日本唯一の虎竹も晩秋から1月いっぱいがシーズンながです。早いもので今年も師走となって、そろそろ何となく気忙しい季節となってきますが、虎竹の里の山々は今が一番にぎやかな時。細い山道を登って行ったら、小鳥のさえずる谷を挟んだ遠く向こうの山からも竹を伐り出す音が聞こえて来たりするがぞね。


今回の取材では、日頃あまりご覧いただく事のない山の職人さんの仕事ぶりも撮していただき自分もこじゃんと嬉しかったがです。けんど、やっぱり誰よりも嬉しいがはご家族の皆様やったかも知れんちや。電話で話たら、声の弾みがいつもと全然違うがぜよ。自分はテレビ言うたら昔らかニュースやちドラマやち民放は観んがですけんど、職人さんのご自宅にフラリと訪ねて行ってもだいたい付けちゅうテレビは自分と同じですきに、馴染みのあるテレビのしかも夕方の番組言うたら思わず笑顔になっちょります。


虎竹の里NHK取材


竹虎の工場ではガスバーナーでの油抜きの加工を、竹達が、ちっくと恥ずかしい言うばあ、じっくりと撮影してもろうたがです。山から伐り出した竹は色づきもハッキリしちょりませんが、熱を加えて油分が吹き出してくると不思議な虎模様が鮮やかに浮き上るぜよ。


外から入ってくる冷たい風に、炎で熱せられた虎竹の湯気が煙になって立ち上がります。ウエスで手際よく油分を拭き取ったら矯めの工程が待ちゆうがです。竹が熱を持っちゅう間に曲がりを矯正する作業も、簡単に見えても、熟達するにはなかなか時間がかかる竹の技のひとつぞね。最後の30秒なってから自分の方にマイクが来ましたちや。こりゃあ時間が足りるがやろうかと思うて、ドキドキしながら虎竹のお話をさせていただきます。


虎竹は正式には虎斑竹(とらふだけ)と言うがですが、なんと土佐藩の山内家への年貢の代わりに献上されよったという、そんな歴史と由緒のある竹やったがぜよ。竹虎は来年一つの節目である創業120周年となります。


竹は節があるきに強くしなやかで、どんな強風や重たい雪にも折れることなく耐えられるがです。節目を大事にしながら、これからの100年にむけて、竹のようにしっかりと根をはり手と手をとりあって、これまた竹のように、真っ直ぐに行く...。そんな話しをしようも思いよったけんど、さすが生放送、緊張して全く話すことはできんかったがぜよ。


世界遺産に繁る竹

世界遺産に繁る竹


小雨の降る日曜日の事やったがです。その静かな竹林に足を踏み入れたら神々しささえ感じましたぞね。竹林といえば虎竹の林ばっかりの自分からしたら、しっとり濡れて更に青さを増した真竹の林は、まっこと別世界ぜよ。この銀閣寺に生まれ育った覇気そのままに、凛として真っ直ぐ天を目指し、美しく伸びた竹たち。言葉を失うてしまう、まっこと、さすが世界遺産に繁る竹やちや。


建仁寺垣


銀閣寺の庭園には周りを囲むように建仁寺垣が作られちょりました。山肌の地形にあわせて丁寧に作り込まれた姿は、まるで万里の長城さえ思わせるようながです。真竹の林と言い、竹垣や他の竹のあしらいと言い、もちろん竹だけではないがですが、この歴史を守り続ける多くの方の心を感じますちや。先人や自然への感謝の念を感じますちや。


竹工芸作家の田辺小竹さんのご厚意のお陰で、普通なら立ち入ることのできない時間を過ごさせて頂いて、さらに竹への尊敬の念が深くなったがぜよ。そして、自分の足元にある何ちゃあない今も実は与えられた、かけがえのない貴重な時と気づかせてくれちょります。


竹炭スティック

竹炭スティック


竹炭と言うても実は焼き方や窯などによって、その性質は全く違うてくるがですが、土窯にこだわり1000度近い高温で焼き上げる竹炭を竹虎では最高級竹炭と呼んで他の炭とは区別しちゅうがです。


まだ年末という気分では全くないがですが、今年も気がついたら師走になっちょります。お正月飾りというほどでもありませんけんど、竹炭を使うた物を、ちくと作ってみたいにゃあと思い、あれこれ考えて素材として一番エイと選んだのが竹炭ペットボトル用ぜよ。


さすが高温で焼き上げた竹炭やちや。10本ほどビニール袋に入れて持ち歩こうとしたら、カラカラッ......カラカラッ......と擦れ合う乾いた音は金属か上質なガラス製品か、まっこと音を聞くだけで心地よくなってきそうやちや。ペットボトルの口に入れられるように、長さは15センチ、幅は1~1.5センチとスリムな形にしちゅう。言うなれば竹炭スティックやにゃあ。節の付いたものが見た目にも面白そうやきに、何本か選んで2014年を迎える竹炭飾りを作ってみたいと思うがです。


土佐和紙の文化

一閑張り買い物かご


一閑張り買い物かごを実際に提げてみると、多くの方が感じるのは意外なほどの軽さではないですろうか?買い物かごの(大)のサイズならそこそこの大きさがあって、日常のお買い物やったら十二分に対応できるがですが、手にしたら、スッと持てる軽さ。まっこと、女性の方には持ちやすく嬉しい籠やと思うがです。


まあ、それもそのはずで一閑張りは竹編みの下地に和紙を貼り付け、柿渋を塗り耐久性を高める技法ぞね。使い勝手のよい強さを確保しながらも軽量な素材でといのうは、試行錯誤されてきた多くの先人の知恵ですろう。昔から日本の家は木と紙で出来ちゅうと言われますけんど、一閑張りは竹と紙で出来ちゃある。まあ、似たようなものかも知れませんちや。


土佐和紙


仕上げの一閑張りをする職人さんの仕事場には、大きさも様々、色とりどりの和紙がいっぱいながです。この買い物かごでも本体の和紙の色と口部分の色、四隅の底部分の色、それぞれ違う色合いの和紙を用意されちょります。高知県には、まだまだ土佐和紙を漉く職人さんもおられます。そのお陰で豊富な種類の和紙があり、こうして一つの籠ができあがる事を思うたら、まっこと感謝せんといかんぜよ。


土佐和紙の歴史は1000年も続くそうですけんど、伝統文化の深さを感じさせるのは和紙職人さんだけではないがです。材料の楮(こうぞ)に、こだわって広い畑まで作られたりしている。地元和紙会社のトップの方がおられたり、世界一薄い和紙と言われる土佐典具帖紙を漉く人間国宝がおられたり、そう言えば工業用の紙で世界的なシェアを持たれちゅう会社もありますぞね。


和紙漉きが盛んで、こうやって今まで続けてこられたのは、雨の多い高知で仁淀川という美しく水量のある川があった事が大きいようです。子供の頃、この豊かな川の近くに来るたびに、満々と水をたたえた用水路のゆったりした流れで、野菜を洗う、子供達が遊ぶ、そんな光景をいつも見よりました。虎竹にしろ、和紙にしろ、南国土佐の自然からの贈りものやと言う事を今さらながらですけんど、つくづく考えさせられますちや。


竹虎の竹

虎竹の里の日暮れ


何かあったら竹林にくる。思うたら二十歳前から、ここには来よった。誰に教えられたわけでも、言われたわけでもない。気がついたら、ここにおった。こんな田舎を軽蔑しちょった、大嫌いやったけんど、華やかな都会ばっかり見よったけんど、どういう訳やろうかにゃあ?最初から懐かしい気持ちがしよった。ずっと心が安らぐ思いがした。


この季節の谷間は日暮れが早いちや。カラスが飛んで行ったあの山の斜面にも、今まで陽射しがあったかと思いよったら、もう暗くなりゆう。


おっと、どうした事やろうか?突然、竹林が全員でしなりだしたがぜよ。ゴーーーーーーーーーーーと強い風が吹きだすがやきに、繁った竹葉が右へ左へ、ユラリ、ユラリ、その度、空が開けてほのかに明るくなる。


ああ、そうか...


そこに居るのは誰ぜよ?


弱い自分に、逃げたい自分にいつも力をくれるがは虎竹。教えてくれるのも、導いてくれるのも虎竹やきに。この竹の里では当たり前の虎模様の竹たちと、ただ、竹のように真っ直ぐに、曾じいさんが、祖父が、父ががあるいたこの道を、同じように歩いていける事に感謝。生かされちゅう事に心から感謝。まっこと自分のような男は、それだけながぞね。