田辺小竹さん「つながり」

 
田辺小竹さん作品


竹工芸作家の田辺小竹さんは、大阪堺市で明治から代々続く竹工芸作家のお家に生まれ育ち、2006年に田辺小竹を襲名されちょります。竹の業界では知らない人はいない、ご高名な竹芸士であり竹の明日を感じさせるような面白い取り組みを色々されよります。また、海外でも評価が高く、展開に力を入れられよってアメリカやヨーロッパ各国で個展など開かれよりますので、日本の竹を世界に向けて発信されるエバンジェリストでもあると思うちょります。自分などとはスケールも志も随分と違いますけんど、竹の道を繋ぎ続けてきた、ちょうど同じ四代目ながぜよ。


そもそも竹工芸は中国大陸で生まれ日本に渡って来ました。また、竹編みの文化も日本だけのものではなくて、熱帯系の竹を使うた細工や工芸は東南アジア等にも広くあって、たとえば、かって日本で多く使われちょった魚籠と全く同じような形、編み方のものが今も現地で使われちょったりして、鳥肌が立つほどビックリ仰天する事もあるがです。


けんど、そんな広い地域に渡って根付く竹文化ではあっても、竹編みの技が極められ、昇華され、芸術と呼ばれる高みにあるのは日本独特かも知れませんちや。美しい自然を愛でる感受性や、細やかな心配りや、おもてなし、日本は日本にしかない素晴らしい精神があり、恐らくそれが竹工芸の世界にも大きく深く影響しちゅう気がするがです。


田辺小竹さん作品


田辺小竹さんの作品を何度か拝見させて頂く機会がありますぞね。アート作品などは田舎者の自分には似合いませんけんど、実は小竹さんの作品に日本唯一の虎竹を使うていただく事もあり、竹達の晴れ姿をこの目でみたい一心で場違いと感じながらもお伺いさせていただきゆうがです。


今回、拝見させて頂いたのは銀閣寺で開催されたイベント会場やったぞね。いつも「つながり」をテーマに創作されゆうと話される作品は独特で、それぞれ観る方によって色々なイメージを沸き立たせてくれそうぜよ。黒竹の風合いが作品自体を引き締めてくれちゅうけんど、おっと、横から見たら黒竹の表皮を使わずに裏返して編まれちゅう所が何カ所があることに気づきますちや。これは、物事や人の内面の裏表を表現されちょって、表があって、裏がある、それが全て繋がっちゃあるという事、確か、田辺さんはそんな風に言われよりましたにゃあ。


竹細工は見た目より意外と軽い事が多いものながです。けんど、この作品は素材の黒竹をこじゃんと使われちょって「ズシリ」とくる重量感があったかです。けんど、田辺家の創業は明治22年と聞きますので、長い伝統と、これからの日本の竹工芸を牽引していくべき使命感の重さは、もしかしたら、とてもこんなものではないですろう。それは来年創業120年迎える竹虎も、まっこと同じ事ですぞね。


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