日本のモノ作りを物語るモノ

竹皮草履の三つ叉


竹皮草履は一足一足手編みで作っていくがです。昔は自分の足の指にワラ縄を引っかけて編むのが普通やってようです。今でも、極まれにではありますけんど、そんな風にして草履を編まれるお年寄りの方に出会う事があるがぞね。職人さんの身体と、編み上げる草履の一体感が見事で、なるほど!こんな風にされるのかと感心して見入ってしまうがです。つくづく日本のモノ作りの伝統というのは凄いと感じるがぜよ。


けんど、竹皮草履の職人さん達が使うのは、自分の足の指ではなくて「三つ叉」と呼ばれる木製の道具ぞね。立ち上がった先端部分が三つに分かれちょって、それぞれにワラ縄をかけて使うがです。足を伸ばして座る必要もなく、胡座を組んでも正座しても、それぞれ自由な格好で出来ますきに仕事の効率はずっとエイ。また、楽にもできるので編みあがる草履の出来映えも数段上がるように思うちょります。


竹皮ぞうり


竹皮草履は細く短冊状に裂いた竹皮を、藁縄に上下、上下と交互に通して編んでゆくがです。一本の竹皮を使い切ったら今度は反対方向から編みはじめる、そして、上下、上下...熟練の職人さんの手元を見よったらリズミカルという表現がちっくと(少し)ゆったり聞こえるほど素早い動きですぞね。少し編んだらギュッ!ギュッ!また少し編んだらギュッ!ギュッ!手前に力を入れて強く引っ張り竹皮を引き締めます。この引き締め具合が大切で、編み上がって乾燥させた後の履き心地が変わってくるがぜよ。


日本のモノ作りを物語るモノ


三つ叉は硬い事で知られる樫の木で作られちょります。この職人さんは竹皮草履を編み出して30数年。仕事をはじめる時に木工所の知り合いのオンチャンに、こしらえてもろうて(作ってもろうた)ずっと愛用しよります。


石の上にも三年とか、継続は力なりとか言われますけんど、まっこと、その通りやと思うがぜよ。硬い樫の木の三つ叉にワラで編んだ紐を引っかけて、毎日、毎日、竹皮草履と向き合いゆう内に、なんと、なんと、ワラ縄の当たる部分がこんなに深い溝になっちゃある。


竹皮草履をご愛用いただく皆様も多いですろう。寒い季節やち、五本指ソックスで使われる方も最近はこじゃんと増えてきたように思いますが、そんな皆様の足元にお役に立ちたい竹皮草履の心地エイ履き心地は、こんな年期の入った三つ叉で編み上げる熟練職人さんの伝統の技の賜でもあるがです。自分の話や説明なども何ちゃあ必要ないですろう。この樫の木の三つ叉が、ずっと続いてきた職人さんの毎日を日本のモノ作りを雄弁に物語ってくれちょりますぜよ。


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