もう20数年前の事やったと思いますけんど、アメリカから虎竹の里にやって来られたのが、ナンシー・ムーア・ベスさんやったがです。外国の方で竹に興味のある方は実は結構おって珍しくは無いがですが、竹の事に詳しいという事に、ちっくとビックリした事を覚えちょります。竹虎の工場や竹林、店舗などをご覧になられよりましたが、特にガスバーナーでの加工の工程にはまるで時間を忘れられたかのように、虎竹が炙られて矯め直していく職人の仕事ぶりを鋭い目つきで見学されよったがです。
あんまり長い事工場におられるので、その頃、竹の積み下ろしで忙しかった自分も不思議に思うて、慣れない英語で話しかけさせてもろうたぞね。ナンシーさんも、ごくごくわずかな日本語しか話せませんでしたけんど、お互いに竹の事を話しているせいか言葉は分からないものの、こちらの言いたい事も何となく通じて、まっこと(本当に)こじゃんと楽しかったがです。
ベスさんは後で聞いたら、アメリカで活躍されるご高名なクラフトマンで、竹編みの籠なども色々と創作されいうと言う事を知ったがです。日本では、どんどん竹細工が忘れられ、古くさいような感覚で見られゆうと感じよった頃なのでこれは面白いにゃあ、何か新しい事がありそうやと思うてニューヨークのベスさんを訪ねる事にしたがぜよ。
ベスさんの「bamboo in japan」のページをめくりながら、ベスさんの工房や、仲間の職人さん、デザイン学校、美術館など、お会いさせて頂いた方々や、感じた事を思い出しよります。ちょうど季節は今頃やった、アパートの前には広い公園があって木々が色づき一年で一番美しいエイ時やと言われよりました。久しぶりに本をめくると一つ一つの同じ写真に、前とは全く違うた色々な思いが湧き上がってくるがぞね。あの時に比べたら、ちっくとは竹の事が分かるようになっちゅう。そう言う事やったとしたら嬉しいにゃあ。
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