山ぶどうの持ち手

山ぶどうの持ち手


小さい頃には、おじいちゃん子やったがです。全国各地に出張する車の中で、おばあちゃんと遊び道路沿いの果物屋さんで買うた梨を剥いてもろうてお腹いっぱい食べた事を、まっこと昨日の事のように思いだしますちや。大きくなり、大学を卒業して竹屋の仕事を始めてからも忙しい母に変わり祖母に食事の面倒を見てもらう事が多かったぞね。なので、おばあちゃんの使いよった食器は今でも色々と大事にしよります。


もともと竹虎は大阪が創業の地で祖母は大阪の食堂の娘さんとして育ちました。母の作る田舎の料理はお袋の味で格別ですけんど、祖母は、それとは又違うた洒落ているワケでは無いですけんど、ひと手間かけたような、こじゃんと美味しいご飯を作ってくれるきに、食事の時間はいつも楽しみにしちょりましたぞね。自分が食べることが大好きながは、たぶんおばあちゃんの影響ですろう。


休日などに肉料理を盛り付けるのは、祖父や祖母と「テキ」を食べた懐かしいレトロなお皿。好物のおかずをいれる時に使う小鉢は、おばあちゃん得意のシシトウの甘辛煮を入れよった淡い空の色のような器。温かい思い出と共に二倍も三倍も美味しくなるがですけんど、そんな食器の中にひとつの茶瓶があるがです。


毎日、食卓の上にあって家族を見守ってくれちょった茶瓶。いつから使いゆうか分からない位前からあるものぜよ。けんど、茶瓶で一番傷みやすいのは、やっぱり持ち手。竹の籠バックなどと同じやにゃあ。籠バックの持ち手やったらすぐに直せますけんど、茶瓶はどうしようか...?まだまだ使いたいににゃあ...。そう思いよった矢先に、職人さんが山ぶどうのツルで同じように茶瓶の持ち手を直しちゅうのを発見ぜよ!


山ぶどうはご存じの方も多いかも知れませんけんど、使えば使うほどに色合いが深まり何とも言えないような渋みと光沢になってくる逸品素材。こりゃあ、へんしも(早く)直しとうせやと、お願いして、こしらえて(作って)もらったのが野趣あふれる感じのこの持ち手ぞね。


籐巻きが緩んでしもうて、恐る恐る使いよった時と違い、しっかりした持ち心地で安心して使えるぜよ。さすが職人の手というのは素晴らしいちや、まっことエイ仕事をしてくれちょります。持ち手の出来映え見て、おばあちゃんも喜びゆうがやないですろうか?


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