虎竹名刺入れの革

名刺入れ木型


竹と革を合わせた商品がいくつかあって、その中のひとつに虎竹名刺入れがあるがです。もう何年も前になりますけんど、自分がアイデアを出して世に出た商品でもありますきに思い入れがありますぞね。


誰かに売りたいと思うて作ったものではなくて、自分が使いたいと思うたものですきに、上代の事や手間の事は全く考えずに製作しちょります。だから知らない方が見たら、ちっくとビックリするかも知れませんけんど、これも別に売れなかったら売れなかったで虎竹の事を知ってくれて好きになってくれた方に差し上げてもエイきにゃあ。まあ、それくらいの気持ちで作った名刺入れながです。


竹の事を気に入ってくれたお客様に「ただでもエイき、もって帰ってや!」そう言うて笑いよった父親を見て「あんなになったらイカン、ひとつも儲からんぜよ」ずっと、そう思うてきましたけんど、いつの間にか同じになっちゅうがぞね、まっこと不思議ちや。


名刺入れ革


広い一枚革を小さく切って使いますし、どこをどう使うていくのかは職人さん次第ぞね。だから、行かなくても大丈夫とは思いながらも、この名刺入れだけのために東京の革問屋さんに行って一枚、また一枚とめくりながら革を自分で選ぶがです。


竹屋さんが革屋に来て何をしよりますろうか?ちくと怪訝な顔もされましたけんど、どうしても使うほどに味わいが出る革で作りたくて、硬くて細かい細工には全く不向きと分かっちょりながら植物タンニンなめしで色合いも自分にグッとくる。そんな素材がないろうか?と思うて出かけていくがぜよ。


お陰様で少しづつでもご用命いただく事がありますきに、一応ロングセラーとして作り続ける事ができよります。まっこと全国の皆様には感謝の気持ちでいっぱいですけんど、こんな小さな名刺入れにも、いえいえ小さいからこそ、それぞれのパーツごとに木型があり縫製ひとつ取っても細やかな仕事に秘密が隠されちょります。


緑に囲まれた静かな工房で命を吹き込まれ、数え切れないくらいの新しい出会いに立ち会う彼ら。人の印象は最初が、こじゃんと大切で、その時の記憶はその後もずっとずっと続くと何かに書いちょりました。だとしたら、やっぱり名刺入れは大事なツール。好印象を持ってもろうて忘れられないようになる一助になったらエイぜよ。何と言うたち自分がいつも助けられよりますきに、日本唯一の虎竹には、そんな力があるように思うちゅうがです。


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