青竹の香り

青竹細工


竹虎の工場に始めて来られた方は、結構な確率で深呼吸されます。そして、こう言われるのです。


「これは、竹の香りですか?イイ香りですね~」


こんな言葉を聞くたびに嬉しくなりますけんど、ばっかりズラリと並べている工場で、油抜きの加工など始めたら糖質の多い竹から甘い甘い香りの油成分が吹き出して、工場に近づくなり子供の頃から慣れ親しんだ懐かしい香りがしてくるがです。この香りは竹特有の、こじゃんとエイ香りです。随分と前の事ですが、はじめて訪れた街中でこの竹の香りが漂って来た事があるがです。これには、ええ?どうして?とビックリしましたぞね。


「けんど、近くに竹屋さんがあるに違いない」


高い木塀に囲まれた街並でしたけんど、そう確信して、近くを歩き回った末に予想通りに竹屋さんを見つけた時には、まっこと(本当に)自分でも犬のような嗅覚やにゃあと感心しましたちや。さて、この竹工房では、そんな竹の香りとは又少し違う、清々しいスキッとした芳香が充満しちょりますぞね。それも、そのはずぜよ、青竹の表皮を薄く剥ぐ作業をされよったがです。


「磨き」と言うて竹表皮ほ薄く剥いで竹ヒゴを取り、竹編みをしていくがですが、虎竹を使う細工の次に好きな竹細工のひとつが磨きの細工ちや。使えば使うほどに色艶がよくなってきて、渋い色合いに変わってくる。成長する竹籠と言うてもエイがですぞね。青竹の若々しさを感じる、この工房から産み出された籠達もはじめの頃は、まだまだ青二才ぞね。十年、二十年という歳を重ねていって、使い手に愛着を持って重宝されるようになってきたら、ようやっと一人前の立派な竹細工になるのだと思うがです。


コメントする