竹工芸家、田辺小竹さんと、漆工芸家、若宮隆志さんのコラボ展には、初めて拝見する竹と漆の世界が広がっちょりました。竹も漆も日本に昔からある素材ではあるものの、自分の想像を遙かに超えて今まで見た事のない斬新さと、新しさを感じるのは、二人の才能が真剣にぶつかり合うて生まれた作品達やきですろうか。
今回のコラボレーションのモチーフは世界的な美術コレクターとして、広く知られるプライス夫妻のコレクションの若沖(じゃくちゅう)やそうです。伊藤若沖というたら江戸時代の画家ですけんど、現代の自分から見ても、こじゃんと色彩感覚豊かな絵を描いちょりますちや。江戸時代、見られた人達は、どう感じたろうか?恐らく強烈な印象を残して、一回見たら忘れられなかったがではないろうか?圧倒的とも言えるような若沖の魅力。たぶん、名前は知らなくても、絵はどこかでご覧になられた方も多いかも知れませんぞね。
けんど、そんな絵が竹編みの上に漆を使うて描かれちょります。細い竹ヒゴが並んだ上に描かれた鷹、竹編みの上には虎や鶏。モチーフとなった若沖の絵が、まっこと生き生きとしてずっと眺めていたくなるような美しさやったがです。
特に竹編みで絵を描かれた田辺小竹さんの技法には魅入りましたぞね。「網代絵」と命名されちょりますが、まさにピッタリのお名前ではないですろうか。高級感のある渋いパンフレットを前もってお送りいただいてましたが、その中にも写真が掲載されていてずっと気になっちょったのです。飾り箱の上蓋に竹で描かれた虎の実物には、一目で圧倒されましたちや。熟練の技、発想、緻密な計算どれひとつ欠けても、このような作品が生まれることはないと思うがです。
飾り箱には蓋を開けてから「おおっ...!」と唸ってしまいそうな遊び心あふれる創りがあり、若沖ファンの方、竹の好きな方、漆の好きな方、それぞれが大満足できるような作品に仕上がっちゅうと感心しましたぞね。
そして、今回の作品展で嬉しかったのは、田辺小竹さんが、いつもお使いただく虎竹のモチーフがあったことです。その中でも虎竹の里を描いて頂いたものがありました。飾り箱を開けると、懐かしい虎竹の里の光景が広がり、その景色を背景にして虎竹が大きく一本描かれちゅうがです。綺麗に虎模様の入った竹には、引き込まれるような神々しさ覚えるような、ちっくと特別な美しさを感じたがです。いつもとは違う、竹と漆の世界を、こじゃんと体感させていただきました。
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