カラン、コロンと乾いた音をさせて竹皮男下駄の夏がやってきますぞね。久しぶりに足を入れると、ああ、これこれ。この足裏への心地良さやきに。思うたら、この竹皮下駄の製造にも色々ありましたちや。一時期、歯下駄を頻繁に履く時期があって一足履きつぶしてしもうたがです。自分はガニ股らしく、後ろの歯が極端に斜めにちびてしまいます。新しい下駄を、あれこれ探してみましたが、ついに自分が履きたい下駄が見つからず、それやったらちっくと作ってみようと考えたのが始まりやったです。初めての一足仕上がった時には、まっこと感激やったぜよ。あれから何年ですうろか?
昨年の夏の終わりに履きはじめたばっかりの下駄。秋以降は履く機会もありませんでしたので、鼻緒がギュッと足を少しきつめに締め付けるのも何か初々しい感じで嬉しいがです。高さ6センチ、何と言うことのない高さのようで、実は履いたら景色が違いますぜよ。いつもとは違う風景が広がっちゅうような気がして、別段用事もないけんどカラン、コロンと近くを散歩してみます。
まっこと、不思議ぜよ。履き物が違うだけやのに歩く速度が違う。日頃、あまり感じたことのない風が田植えを終えた向こうから吹きゆう。いつもは見過ごしよった古い木の電柱に足が止まる。あぜ道の脇の小川の音が聞こえてくる。なんか贅沢な、ゆったりした気分で歩かせてもらえて豊かな気持ちになってきましたきに、だんだんと沈みかけた夕日もまた、こじゃんと綺麗に見えてくるがぞね。
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