下駄好きの方のみならず夏の夕涼みの散歩には下駄が一番ですろう。ご存じのように下駄は台が硬く長距離を歩いたり、立ちっぱなしだったりしますと、こじゃんと足が疲れる事があります。履き慣れない方やったら鼻緒で足が痛くなったりもするがです。けんど、日頃履かない下駄だけに、下駄の鼻緒に足を入れてこそ味わえる時間もあるように思うちゅうがぜよ。
そうそう、下駄の素晴らしい所の一つとして、一つの下駄を家族全員で履く事ができる事がありますちや。足のサイズを、それくらい気にしなくても良いがです。現代みたいにモノのあふれる時代ではなかった頃には、下駄は家族で履き回ししたとも聞きます。つまり小さいお子様から大きなお父さんまで、靴のようにサイズをぴったり決めなくともお使いいただく事ができる便利な履き物ではあるがです。まあ、もちろん歩きやすさや格好はあるがですが...。
さて、虎竹を台に貼りつめた下駄は、もう何十年と愛用しよってから、何足履いたか分らないくいらですぞね。自分の場合はガニ股で歩き方が悪いのか、下駄がこじゃんと(とても)片ちびりして、左右入れ替わったら、とてもや無いですが歩きにくいくらいです。今日は、そんな古い竹下駄を奥の方から取り出してきて、最近の虎竹男下駄と見比べてみましたぞね。下駄の変遷と言うたら、ちっくと大袈裟かも知れませんけんど、両方の下駄を見比べたら微妙な違いがあるがです。よくよく見てみないと分かりませんが、実は、新しい下駄の虎竹の細工の方が細かくなっちょります。
虎竹を四角い形に切り取って下駄の台に貼り付けていますが、この四角の一つ一つのパーツが少しだけ小さくなって、以前の数より、より多くが使われちゅうがですちや。これは、どうしてかと言いますと近年の虎竹の里の山々の事情そのものながですぞね。竹は一年の中でも寒い時期にしか伐採しませんので、その年にあるだけの材料でしか製品は作ることができません。今年は、ちっくと大きな竹もありますけんど、ずっと毎年のように太い虎竹が少なくなっちょりましたので、直径の小さな虎竹しか使うてもらう事ができませんでした。
竹はご存じのように丸みがありますので、細い竹では下駄の台の平面に綺麗に竹を並べられるような平たいパーツを以前と同じ大きさでは作る事が難しくなったがです。そこで、細い竹なりにパーツも小さくして、より多くのパーツで虎竹下駄を製造するという作り手の工夫があるがぜよ。それぞれの良さがありますけんど、虎竹模様の自然な美しさは、細い竹ヒゴを編み込むよりも、こういう使い方が一番ぞね。夏の夕涼み、皆様もどうですろうか?