黒竹番傘

黒竹番傘


若い頃に母からのお下がりの和傘をずっと愛用しよりました。ボロボロになっても、どうしても格好が悪いとは思う事ができず、いやいや、むしろ渋いやろう?誰も差してないきに目立ってエイちや、と、ずっと使いよりましたが最後には穴がアチコチに開いて、傘の機能を果たせなくなって遂に使う事をやめましたぞね。


けんど、それでも捨てることができず、ずっと玄関脇に立てかけちょった覚えがあります。あの当時は本店にも洒落た和傘は何本か置いちょりましたので、綺麗な布袋に仕舞われた傘をたまに触る機会もありましたが、まっこと、ここ十数年、和傘とは縁遠くなってました。そんな折り、岐阜で和傘作りに取り組む方と知り合い、黒竹柄の番傘を試作して頂いたがです。


和傘の構造上、黒竹の表皮を一部削ってしまわねばならず、ちっくと残念ではありますけんど、持ち手が変わっただけでこじゃんと雰囲気があるがぞね。重たくて、かさばるし機能的な事を言うならば、洋傘や折りたたみ傘にはかないません。使うた後は陰干しするとか、使わない時にもたまには開いて風を通すとか、面倒な事もあるがですが、その手間そのものも実は楽しかったりするがです。


そう、今はないのかも知れませんけんど、度々故障する外国製の車を、こじゃんと可愛がる方がおられましたろう?大きさや金額は全然違いますがそれに似たようなものやろうか、出来上がった傘を差したり、しもうたり、又、出して差してみたり。まっこと、せわしい一日ぜよ。


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