竹の鞘(さや)

竹鞘


使い込まれた刃物の柄は真っ黒になり、丸みを帯びた角の部分は渋い光沢のようなツヤがあるがです。短くなった刃も年期を感じさせますが。その刃を納める鞘も、どうやら、それ程新しいものではないようぞね。竹職人さんの使う道具はいつ拝見させてもろうても、身近な竹素材を上手く自分なりに活かしちょってこじゃんと魅力的ながですが、この白竹を使うた鞘もなかなか味があります。


竹細工に限ったことではないですが、職人の世界は元々は徒弟制度で親方がおって、そこに丁稚のような形で仕事を覚えるのが普通やったがです。だから古い竹職人の方の持つ道具は師匠から譲って頂いたと言う明治の頃のものがあったりしますが、腕の良い職人さんほど、そんな道具達をまるで我が子のように大切にしちょります。


道具を大事にして手入れして、更にその道具を工夫して更に使いやすくする事が、より美しい竹製品を、より早く作り上げる事になりますきに。道具を拝見させて頂いただけで職人さんの腕前が分かるのは、まっこと自然な事ながです。


虎竹、白竹など立てかけられた竹素材の足元には、細く割られた竹や竹の切れ端、竹屑があちらこちらに見えています。大さきも様々な竹ざるや、竹籠など竹製品に囲まれた工房では、シュッシュッ......シュッシュッ......。竹籖を取る音だけが聞こえてきよります。自分の出番はいつやろうか?じっと、ご主人さんに声をかけられるまで、竹鞘の刃物は、静かにじっと待ちゆうがです。


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