竹花籠の花留め

竹花籠花留め


最近は華道を習われる方も少なくなったと言われよります。それは、少し寂しい事ではありますちや。何を隠そう自分もお花を習いよった時期があったがです。どうしてかと言うと、お店や催事等でデパートや展示会などに行った時には花籠に花を活けよりましたが、自己流でやっているうちに楽しゅうになって、もっと、もっと色々な技法を身に付けてみたいと思うたからながです。


花籠は花が入ってこそ初めてその魅力が引き立ちますろう。なので、花籠だけで一つの完成された作品のような扱いというのは個人的には、あんまり好きではないがです。活ける花により花籠は活かされ、また、花も花籠によって活かされると思うのです。


実は花展なども大好きで、時間を作って見にいく事があります。いつやったか京都で池坊の大迫力の花展を拝見しましたけんど、その規模の大きさ、その品の良さ、そしてヒシヒシと感じる伝統に圧倒されしばらく放心状態やったことを覚えちゅうがです。


一昔前やったら「花嫁修業」などと言う言葉もありましたけんど、今では死語になっちょりますろうか?花嫁修業が普通に言われよった時代には竹花籠も随分と作られよりました。朝早くから夜遅くまで職人さんフル稼働で作っても作っても足りないので、


「この花籠、誰か食べゆうのか?」


そんな事を言われた職人もいると笑い話があるほどぞね。竹花籠は当家には、今でも何個も何個もありますが、当時なら普通のご家庭でも、ひとつやふたつはあったと思うがです。そんな昔を懐かしく思うわけではないですけんど、竹の花籠などでなくても何かの空瓶でもエイきに、ほんの一輪の花がお部屋にあったらやっぱり生活にうるおいが出ますぞね。


竹職人さんが花入れ用に創作した面白い竹細工があるがです。花籠の中に水を入れる筒があり、これをオトシと呼びますが、太いオトシに花を投げ入れると自分の思うように花の形が決まらない事があります。けんど、オトシにこんな竹組を入れちょったら、茎の部分が固定されて、格好の整った花活けができそうながです。


もちろん、水に浸けて使用されますきに、機能的な事だけを言うのであれば金属製等でもっと耐久性が高かったり、汎用性も高く使い勝手のよい専用の花留めもありますけんど、竹職人さんならではの発想と手近な竹素材で作った一品。なかなかエイにゃあと思いよりますぞね。


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