竹虎の初代である山岸宇三郎が竹材商として創業した当時、今から120年近い昔の事ですきに時代も全然違うと思いますが、ずっと現在まで続く屋号がすでにあったがです。けんど今の「竹虎」という屋号ではなく、実は、「竹亀」という屋号で営業しよりました。竹亀やった竹屋が、虎の模様が浮き上がる不思議な竹に惚れ込み、土佐の虎竹ばっかり扱う専門業者になりましたきに、全国的に「竹虎」の方が通りがよくなり、自然に竹虎という屋号になっちゅうがです。
だから、渡辺竹清先生の、この煤竹宝石箱を拝見した時には上蓋に鎮座した銀色の亀が、こじゃんと気に入って、こりゃあ、まっこと何か縁があるがに違いない、そう勝手に思いこんで、そのまま頂いてきたがです。
そもそも、宝石箱自体が上から見ると六角形で亀の形を意識した作品。深々とした上蓋は、中に収納される貴重な品々を大切に大切に包み込んでくれるような安心感があるがです。たまに、手にとり惚れ惚れと眺めてみます。何か奇をてらう訳でもなく、自然体で、そこにあるだけながですが、魅入らずにはいられないような静かな迫力があります。これが本物の力なのだと思います。
100年も時間を経た煤竹を使い、こんな美しい作品を生みだされる渡辺先生は、まっこと素晴らしいですが、こうやって、籠を何度も何度も見るうちに、飾りの亀のせいですろうか?ふと、会うた事のない初代を思う事があるがです。
幼い頃、虎竹の里の野山で、畦道で遊んでいる時に出会うた、地元のお年寄りの口からも聞くことのあった宇三郎曾じいさん。セピア色になった写真の前に行ったら、何かの拍子に亀が話しでもしてくれんろうか?