祖父の背中

宮崎珠太郎作


「おおっ!部屋の中に何かがそびえ立っちゅう...?」


あまりの存在感に目が釘付けになるがですが、一見、蟻塚?のようにも見える、そのモノに近づいてみると細かい竹編みが見えてきます。竹ヒゴをねじりながら編み込んでいるので、表面の独特の質感が全体の大きさやフォルムのとあいまって何とも斬新で一度見たら頭のどこかに残っている感じ。こじゃんと(とても)インパクトのある竹籠ながです。オトシが入っちょりますので花籠として作られたものですが、一体誰が編んだものやろうか?底をみたら「珠太郎」と銘が刻まれちゅうがです。


宮崎珠太郎作花かご


「珠太郎」と言えば、竹の世界では、あの宮崎珠太郎氏しかおりませんぞね。熊本県在住の竹作家の方ですが、文部科学大臣の表彰を受けるなど、知らない人はいないというようなご高名な竹作家のお一人で、お歳は80を越えらちゅうと思いますけんど、昨年日本クラフト展で優秀賞を受賞されたと聞いちょりますので、ずっと創作活動を現役で続けられるゆう素晴らしい竹芸家ながです。


これも祖父が全国の竹職人を訪ねて歩くうちに出会い、持ち帰ってきた作品のひとつですろう。とにかく竹一筋やった竹虎二代目義治は、暇があったら色々な所にでかけていって、その目で竹を見て、作り手を見て来た、そんな人やったがです。


実は、祖父が個人的に集めてきた竹工芸品の多くは自分が大学四回生の時の大火災でほとんどが焼失してしまいました。けんど、あの夜、難を逃れた一部の作品が今でも祖父の形見のように棚には陳列されちゅうがです。祖父が亡くなった時、香典がわりに自分の作品を携えられて来られた作家の方がおられました。竹のように生きて、竹のように逝った祖父。何ちゃあ関係ないぜよ。ワシはおじいちゃんのように成りたいがやきに。自分が追い求めゆうのは、二代目の背中だけやきに。


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